「やぁカーマ」
「うげっ、マスターさん……なに企んでるんですか……」
「信頼してくれてるみたいで何よりだよ?」
露骨に嫌そうな顔をするカーマに、苦笑いで返すオオガミ。
だが、カーマはため息を吐くと、
「まぁなんとなくわかりますよ。夏祭りの話でしょう? 私にも出店をしろって言うんでしょう?」
「いや、カーマはなにも言わなくても参加してくれると思ってるけど」
「どういう意味ですかそれ!」
頬を膨らませ、抗議するカーマ。
オオガミは不思議そうに首をかしげつつ、
「だって、バラキーが祭りに来るのに、カーマが出店を出さないなんて事無いでしょ?」
「……まぁ、否定はしませんが」
「うん。だから最初から申請してる」
「本人に何の連絡も来てないんですが? まったく……私がやらないって言ったらどうするつもりだったんですか」
そう言って、心底呆れた顔で問うカーマに、オオガミは、
「そりゃもちろん、バラキーを盾にしてでもやらせるつもりだったけど」
「人の心を妖精国に置いてきたんですか……?」
予想よりも遥かに凶悪な案が出てきて、困惑するカーマ。
だが、オオガミはにっこりと笑みを浮かべると、
「冗談だよ。だってほら、する前にこっちがやられるし」
「……そういうことにしておきましょうか。それで? 夏祭りに参加するように説得に来たんじゃないのなら、何か用事があったんじゃないんですか。名前を呼びながら挨拶をするときは基本そうですし」
「え、そんな癖あったんだ……自覚全然無いんだけど」
「いいですよ知らなくて。そもそも、エウリュアレさんに言われただけですし。あの方、本当にマスターさんの事に関して以上に詳しいですね」
「それだけ長い付き合いだってことだけど、それは喜んで良いのか……?」
「これは別に弱点ってわけじゃないですし問題ないと思うんですが」
カーマに言われ、それもそうか。と納得するオオガミ。
そして、彼は綺麗な包装紙に包まれた菓子折りを取り出すと、
「これを届けてほしいんだけど」
「……自分で行けば良いんじゃないですか?」
「気軽に行ける場所でもないからね……でもまぁ、カーマなら単独顕現でどうにかなるんじゃないかなって」
「あ~……そういうことですか。まぁ、縁はありますし、行けなくはないですけど……それを持っていけば良いんですか?」
「うん。本当はアビーに頼もうかと思ったんだけど、エウリュアレが離さないから。代わりに行って貰えないかな?」
「……お祭りで出す料理の試作を手伝ってくださいね」
「その程度ならいくらでも。こっちにとっても得しかないからね」
オオガミが言うと、カーマはため息を吐き、
「じゃ、行ってきますね」
「行ってらっしゃい」
そう言って、オオガミはカーマが去っていくのを見送るのだった。
夏イベは9月になってしまったのなんでなの……なんでなの……