「マスターおかえりなさい! お使いちゃんとしてきたわ!」
「うぉ、ビックリした……お疲れ様アビー。ただいま」
正面から飛び付いてきたアビゲイルを抱き留めて、勢いを殺すためにその場でくるくると何度か回るオオガミ。
そして、ゆっくりアビゲイルを降ろすと、
「あれ、アビー、ちょっと軽くなった?」
「えぇ、向こうで私のたこせんサンドが大好評だったわ!」
「あぁ、それで……触手、減ってない?」
「再生はしてるけど、強度は足りてないわ。まだ魔力が足りてないの」
「そっか~……あぁ、だから昨日はアビーじゃなくてBBの触手だったのか」
「? どうかしたのかしら?」
「いや、なんでもないよ。それより、今日はどうしたの?」
昨日の出来事を振り払いつつ、アビゲイルに聞くオオガミ。
聞かれたアビゲイルは、首をかしげながら、
「ん~……特に何かある、というわけではなかったのだけど……あ、そうだ! マスター。私、お祭りの時にお店を出したいのだけど!」
「え、出店を……?」
「えぇ! あっちの私にお料理を教えてるときに色々とやってみたくなってしまって! 良いかしら!」
「いいけど……触手が入っていない料理も作ってよ?」
「えぇ、えぇ! もちろんだわ! 初見殺しも楽しいけれど、油断させてからの一撃も楽しいものね!」
「絶対なにかを間違えてるよね……!」
とは言いつつも、今度はどんな劇物料理を作るのか、わりと楽しみにしているオオガミ。
そこでふと思い出したことを聞く。
「そう言えば、たこせんサンドを食べても平気なサーヴァントが何人かいたよね」
「えぇ。同じフォーリナーの方々や、ジークさん、怖い方のジル・ド・レェさんたちには効かなかったわ」
「待って。美味しそうに食べてたとかではなく、効かなかったっていう感想はどうなの?」
「だって平気かどうかを聞かれたんですもの。でも、美味しそうに食べてるかどうかで言えば、皆さん最初は美味しそうにしているのよ? 触手を食べた途端倒れてしまうだけで」
「どうしてそこで触手を入れてしまうのか」
「だって大好評の部分ですもの。除くわけにはいかないわ」
そう言って、誇らしげに胸を張るアビゲイル。
オオガミは何がそこまで彼女を駆り立てるのかと首をかしげるも、通常のタコやイカとは違う旨味成分でもあるのだろうと、思考放棄した。
「まぁ、それはそれとして、出店を開くならエミヤに申請を出さないとだ。別に必須ってわけじゃないけど、調理器具とかの貸し出しをして貰えるからね。設備も用意してくれるから使わない手はないよ」
「今まではなかったと思うのだけど?」
「今回から新しくそういうのも作ろうかって話になってね。エルキドゥに走り回って貰うのも申し訳ないし」
「そう……じゃあ、私もしっかり書くわね! でもマスター。わからないところもあるかもしれないから、一緒に来てくれないかしら」
「まぁ、それくらいなら。じゃあ行こうか」
そう言って、二人はエミヤを探しに行くのだった。
アビーのお使いについてはそのうち。でも今年の夏イベは9月なんだよなぁ……どうしようかなぁ……