「……ずいぶんなご身分ね。マスター?」
「不本意だし助けて欲しいのだけど」
そういうオオガミは、右腕をモルガンに、左腕をメリュジーヌに拘束され、背後からバーゲストに捕らえられていた。
エウリュアレは呆れた顔で、
「あなたがいない間、三人とも、毎度時間差で部屋を襲撃してきて大変だったのだけど」
「えっ、なにそれ」
「人聞きの悪い言い方はやめてください。私は夫と私の部屋を奪還しようとしていただけです」
「私は別に、襲撃をしようとしたわけではなく、どんな部屋なのかを見に行っただけで……」
「僕も部屋を見に行っていただけで、襲撃なんてしてないよ。最も、彼女には敵対行動に見えてしまったみたいだけど」
「三人とも私を見るなり攻撃してきたのだけど。映像も残っているから見る?」
「いや、それはいいよ。というか、部屋は大丈夫? 無事?」
話を聞いている限り悲惨な状況ではないのかと不安そうなオオガミに、エウリュアレは目を逸らしながら、
「荒れる度にBBとノッブが修復してたわよ……」
「何か仕込まれてるってことじゃないかなそれは……」
「知らないわよそれは。流石にそこまで気に出来るほど余裕はなかったわ。不審者を追い返すのに精一杯だったもの」
そう言うと、エウリュアレは不審者三人に目を向ける。
その視線を受けた三人は、オオガミの後ろに隠れるように動く。最も、バーゲストが大きすぎて弾かれるので、素振りだけだったが。
「私、この女だけは好きになれそうにありません」
「そう? なんだかんだ仲良くなれそうだけど」
「我が夫よ。どこをどう見たらそのような結論になるのですか」
「いや、何となく思っただけなんだけど……仲良くしたくはないんですか?」
「……夫が、仲良くしろと言うのなら……善処します」
「じゃあお願いします」
「っ……わ、かりました」
苦虫を噛み潰したような顔で答えるモルガン。
エウリュアレはそれを見て一瞬嫌そうな顔をするも、
「別に、もうモルガンは良いわよ。ここにいる限り、そんな脅威じゃないもの。問題はそっち! どうしてまたランサーを増やしてるのかしら!」
「正直ランサーは僕以外要らないんじゃないかな! 大丈夫! 僕一人で全員倒せるよ!」
「……どうしてランサーはこんなにも多いんだろうね?」
妙に片寄ってるよね。と心底不思議そうに言うオオガミ。
エウリュアレは呆れたような顔をすると、
「で、その物騒なのはなんなのよ……」
「あぁ、そう言えば、ちゃんと名乗ってなかったね」
メリュジーヌはそう言うと、オオガミから少し離れ、
「僕は妖精騎士ランスロット。真名はメリュジーヌ。よろしくね、カミサマ?」
「挨拶ありがとう。私はエウリュアレ。無力、非力、愛玩の女神だから、精いっぱい守ってちょうだいね? 最強の騎士様?」
「マスターどうしよう。彼女、虚言癖があるみたいだ。無力で非力な愛玩の女神を名乗っているよ?」
「まぁ、男性の思い描く偶像ではあるから間違ってはないかもしれない。ただまぁ、玩具はこっちになって、ここの彼女は無力で非力どころかむちゃくちゃに強いけど」
「あら、玩具希望かしら? 良いわよ叶えても」
「遠慮しときます。というか、両腕が痛いくらいに殺気立たれてるので止めていただけないでしょうか」
「ふふっ、ガウェインのあなたはなにもしないのね」
「わ、私はその……あまり積極的になりすぎないようにしているといいますか……色々堪えているのです。ですので、獣性を抑えるためにも、これからもガウェインと呼んでいただければ……」
「そう……まぁ、うちにはあの太陽の騎士はいないから、混ざることはないわね。それじゃあ、モルガンとメリュジーヌ? いい加減私のオオガミから離れて貰おうかしら」
「拒否します」
「断るよ」
「う~ん腕が引きちぎられそう……!」
笑顔のままどんどん顔が青くなっていくオオガミを見て、エウリュアレは仕方なさそうに、
「じゃあ、シミュレーションルームに案内するわね」
そう言って、パンパン、と手を二度叩く。
直後現れた、アビーの触手とはまた違う赤と黒の触手が、モルガンとメリュジーヌを捕らえ、オオガミから引き剥がしてどこかへ連れ去る。
「それじゃあオオガミ。行ってくるわね」
「行ってらっしゃい。無茶しすぎないでね」
そう言って、シミュレーションルームに向かうエウリュアレ。
残されたオオガミとバーゲストは、
「食堂で待ってようか」
「いいですね。ここの食事は見たこと無いものも多く、私も色々と学べているので助かります」
「いつか厨房に立ってそうだね?」
そんなこと話ながら、食堂に向かうのだった。
エウリュアレは本来戦えないほど弱いサーヴァントなんだよ……本来は……まぁ、我が家クオリティが本来の枠に収まるわけ無いんだけどね!
メリュジーヌだけ、本気でどうして恋人扱いしてくるのかわからん……記憶改竄されるし……謎しかないんですけど……