「……おかしいわね。さくっと修復して帰ってくると思ったんだけど」
「モルガンも、なんだか静かになってるものね」
食堂でソフトクッキーを食べながら、不機嫌そうに話すエウリュアレとラムダ。
最近は新たに召喚されたサーヴァント達の襲撃がめっきり無くなり、エウリュアレは暇をもてあましていた。
「はぁ……向こうで何かあったのかしら」
「これだけ長期間いないのは珍しいもの。何かあったに違いない……のだけど、ついていってる訳ではないから待つ以外無いのも問題ね」
「全くよ。モルガンもだけど、他にも厄介なのが来てたし……一度部屋を空けて出ていったら三人が争ってて部屋が炎上してたのは、もう笑うしかなかったわ……」
「もしかしなくてもオオガミの部屋が一番危険地帯じゃないかしら。本人不在なのに」
「むしろ本人不在だから、よ。いるならそれなりに平和になるんだもの。さっさと帰ってこないかしら」
「ふぅん……ちゃんと歯止めにはなってるのね。そういうの、あなたがしてると思ってた」
「私はなんにもしてないわ。オオガミが頑張ってる後ろでベッドに寝転がってるだけよ」
「ある意味牽制してるわね……」
誰がいようと同じことをしているのが想像できたラムダは、その妄想を払いつつ、
「そういえば、アビーがどこかに行ってるって聞いたけど」
「本当よ。だから私がここにいるんじゃない」
「あぁ、そうだったのね。てっきり部屋を守るためとか、そういうのを想像してたわ」
「ん~……まぁ、それもあるけど、計画が一番の理由かしらね」
「計画?」
不思議そうに首をかしげるラムダに、エウリュアレは紅茶を飲みつつ、
「そ、計画。と言っても、そんな大層なものでもないわ。夏祭りがしたいって言い出しただけ。今年の夏はちょっと豪華に行こうってね」
「ふぅん……夏祭りね……」
「えぇ。クレーンは大喜びで浴衣を作り始めたわ。まぁ、霊衣ではないから、無茶なことをすれば破けるらしいけど」
「普通の素材で作ってるのね。どこにそんな素材があったのかしら」
「いつもの技術部が動いてるもの。大抵のものはあるし、無いなら無いで採ってくるわよ。そういうところだもの。あそこは」
「……私、あまりあそこに近付きたくないからどうなってるのかさっぱりなのよね」
「あまり知らない方がいいこともあるわ。大抵ろくでもないものを作ってるところだもの。でも、あなたの場合はBBがいるからなんでしょうけど」
「いえ、普通に足の踏み場もないから近付きたくないだけよ?」
「……片付けた端から汚れていくものね、あそこ」
エウリュアレはそう言って納得し、空になったソフトクッキーの皿を持って、おかわりを要求しに行くのだった。
戴冠式は明日……はたして私は生き残れるのか……無事に帰ってきてくれ~……!