「ってことで、お祭りよ」
いつものように食堂で、いつものメンバーを集めたエウリュアレはそう言う。
それを聞いたラムダは少し不機嫌そうに、
「祭り……祭りねぇ……あの暴君の名前を使っているのだからどうせろくでもないものでしょう?」
「さぁ? でも祭りですし、バラキーが好きそうなものですが……」
「吾……参加したくないなぁ……」
「開催が決まってからこんな調子です」
いつもとはまるで違うバラキーの反応に、カーマは肩をすくめる。
「それで、結局どういう祭りなんですか?」
「超高難易度付きのボックスイベントよ。周回組が瀕死になるやつ」
「あぁ、そういう……」
カーマは頷くと、視線をラムダに向け、
「これそっち向きの案件じゃないですか?」
「えぇ。なんだったらバラキーは戦わないわね」
「じゃあなんで嫌がってるんですか……」
「今年は綱がいる……うっかり鉢合わせでもしようものなら困るからな……前は頼光にやられた……」
「あぁ、そういう……でもまぁ、私もいますし、大丈夫ですよ。出店を見て回るのも楽しそうです」
「まぁ、一人より二人の方が先に見つけやすくもなる……か。うむ。ならば吾も行く。出店は気になっていたからな」
そう言って、嬉しそうな雰囲気を出すバラキーに、カーマは微笑み、エウリュアレに視線を向けると、
「で、妖精郷に行った人は?」
「帰ってくるわよ。だから今、アビーに迎えに行って貰ってるの」
「あぁ、それでいなかったんですね。てっきり反抗期なのかと思ってました」
「本人が聞いたら噛み付いてくるわよ」
「手足を火で防御してれば噛み付かれないでしょう?」
「お腹に噛み付かれるわよ」
「……なんだか見てきたような顔をしますね……」
「まぁ、オオガミは噛まれてたから。最近構って貰えないからそうしてるんじゃないかって思うんだけど」
「実はマスターさん、めちゃくちゃ頑丈ですよね」
「頑丈というより、受けるのがうまいというか、ダメなのはしっかりかわしているというか。まぁ、構ってほしいだけだから強く噛んでないもの。歯形もそんな残ってないし」
「あ、残ってはいるんですね」
「もちろん。アビーが楽しそうだったから医務室に行かせなかったわ」
「悪い子を助長させる悪い女神ですね……」
「人類悪な女神に言われるなんて光栄ね。特殊編成の周回メンバーに選出されるように頼んであげるわね」
「実質最高権力者に脅されてるんですけど……!」
嘆くように言うカーマ。
だが、周りからの視線は、分かっていたことだろう? と言いたげなものだった。
そして、エウリュアレは立ち上がると、
「それじゃ行きましょ。今回は特に周回がメインだし、メルトは逃げられなさそうね」
「えぇ。高難易度も連れていかれるだろうし、気楽に行くわ」
そう言って、エウリュアレたちは、既にオオガミがいるであろう特異点に向かうのだった。
突然始まったネロ祭。神がかったボックスの中身にマスター達は震え上がり、すぐさま闘争心を燃やす。地獄の釜は開かれ、花びら最高率を任されたサーヴァントは泣くであろう……
ネロ祭、100箱走れれば良いなぁ……!!