「ふむ。ここがマスターの寝所ですか……悪くはありません」
「……また厄介なのを召喚したのね」
部屋に入ってきたモルガンを見て、嫌そうな顔をするエウリュアレ。
そして二人の目が合うと、モルガンは心底不思議そうな顔で、
「なぜ私以外の者が夫の部屋に?」
「こちらからすればあなたの方が異分子なのだけど」
隠しきれないほどの怒りのオーラを放ちながら微笑むエウリュアレ。
だが、変わらず首をかしげるモルガンを見て、エウリュアレはため息を吐くと、
「あいにく、ここはマスターの部屋で、私の部屋なの。別に清姫のように自分が妻だと名乗るのは止めるつもりはないけどここは譲らないわよ?」
「あなたが譲ろうと譲らなかろうとマスターは私のモノ。それは覆らない事実ですので」
「……話は平行線みたいね」
「そのようです」
その言葉を聞いて、エウリュアレは立ち上がり、
「サーヴァントらしく意地を張るしかないわね」
「あまり部屋を汚したくはないですが」
そう言って、二人は激突した。
* * *
「なぁカーマ。なにやらマスターの部屋の方から嫌な予感がするのだが」
「あの部屋からここまでかなりあるはずですし、ここまで被害が及ぶとは到底思わないんですが」
「それはそうなのだが……どうも胸騒ぎがしてな……」
「心配しすぎですよ全く……」
そう言って、カーマお手製のカップケーキを食べるバラキー。
美味しそうに食べるバラキーの顔を見ていたカーマは、ふと思い出したように、
「そう言えば、さっきマスターは私の夫だとかなんとか言ってたサーヴァントがいましたね。なにやらマスターの部屋を探してたみたいなので教えましたけど……」
「……マスターは帰ってないし、今はあの部屋にエウリュアレ一人だった気がするのだが……」
「そう言えば最近独占欲強めですよねあの人」
「吾、嫌な予感がするのだが」
「まぁ相手はバーサーカーですしアビーさんを呼んで戦ってるんじゃないですか?」
「巻き込まれたくはないなぁ……」
そう言って、いつもより気持ち早めにカップケーキを食べるバラキー。
カーマはそれを見て苦笑しつつ、
「まぁ、エウリュアレさんが負けてるの、見たこと無いですけどね」
「マスター関連だと妙に強いからな……吾も何回かやられたし、心配はしてないが……」
「終わってみたらマスターの部屋がぐっちゃぐちゃになってたりしそうですよね」
「それの片付けをさせられるところまで想像できるのが嫌なところなのだが……」
そう言っていると、食堂の扉が開き、ボロボロになったエウリュアレが入ってくる。
「カーマ、バラキー。メドゥーサを見なかったかしら」
「あ、本当にやりあったんですね」
「パールヴァティーのところに何人か行っていたぞ」
「ありがと。それとカーマ。私にもそのカップケーキを取っておいてくれると嬉しいわ」
「はいはい。新しく作っておきますよ」
そう言って去っていくエウリュアレ。
そして食堂の扉が閉まると、
「エウリュアレさんって守られる女神じゃなかったんですかね」
「範囲攻撃の余波でああなっただけだと吾思うけどなぁ」
「基本はアビーさんが戦ってって感じですか」
なるほど。と呟きながら、カーマはカップケーキを作るため、仕方なさそうに立ち上がるのだった。
モルガンさんのTwitterでの噂を聞いて欲しくなりその結果がこれです。モルガンヤバいよ……心揺れ動くよ……(なお不動の女神