「……よし。夢じゃないね」
「いつもより早起きで良いけど、私以外にやったら殺されるわよ」
目を覚ますなり、エウリュアレの髪を手ぐしで梳かすオオガミに、呆れたような顔をするエウリュアレ。
そして、オオガミの手を払い除けて背を向けたエウリュアレは、そのままオオガミにすり寄り、腕のなかにすっぽりと収まる。
「これで夢だとかは言わないでしょ。まだ日の昇り始めだし、起きる気になれないからこのままいなさい」
「……まぁ、エウリュアレがそう言うなら……」
当然のように寝直すエウリュアレに苦笑しながら、オオガミも二度寝をしようと目を閉じる。
* * *
「いやぁ、あそこから寝れるわけないよね」
「なんだか辛そうね。エウリュアレに何かされたのかしら」
「何かされたというか、むしろ何もされなかったというか」
そう言いながら、寝ているエウリュアレを背負ってリビングに降りるオオガミと、呆れたような顔をするラムダ。
既に朝食は出ており、イリヤ達が元気に食べていた。
そして、降りてきたオオガミに気付いたエミヤは、
「おはようマスター。今日は遅い起床だな」
「おはようエミヤさん。エウリュアレが起きてくれないし、腕を掴んで離してくれなくて」
「どうやら、今も離してくれないようだがな」
「まぁ、今日は甘えてくる日ってことで。激レアなのでもう少しこのままで良いかな」
そう言うオオガミに、エミヤは少し考えるような素振りをして、
「ふむ……なら、軽くつまめるものが良いか。サンドイッチで良いかな?」
「ありがとう、それでお願いするよ」
「私の分もお願いするわ」
「三人分だな。どうせなら外で食べるのも良いと思うが、どうする?」
エミヤの提案に、オオガミは少し考え、
「そうだね。湖でも見ながら食べようかな」
「承知した。では出来次第届けよう」
「何から何までありがとう」
「なに、休めるときには休むべきだ。幸い、まだのんびりしていられるからな」
そう言って、キッチンに向かうエミヤ。
オオガミはそれを見送ると、コテージを出て湖に向かって歩きだす。
「あの弓兵も暇ね。霊衣が変わったら人も変わったというか」
「元からあんな感じだった気もするけどね。守護者的なのもあって、少し固かったのかもだけど」
「落差がスゴいわ。同じ人物とは思えないくらいに」
「それで言うならメルトだって、本来の時と水着の時で違うでしょ。いや、そんな変わらない?」
「変わるわよ。神性のバランスもガッツリ変わってるわよ。なに? サラスヴァティもリヴァイアサンも変わらないと言いたいのかしら。お腹に膝がお好きなのかしら」
頬を膨らませつつ言うラムダに、オオガミは頬を引きつらせながら、
「お腹に膝は二日くらい青あざになるのでおやめください」
「分かれば良いの。でも、私とアイツは同じようなものじゃないわよ。決して違うわ」
「でもまぁ、人格の根幹は変わってないから、エミヤさんも似たようなものだと思うんだけど」
「……もう何を言っても平行線な気がしてきたわ」
「まぁ、どっちも夏の魔物の産物だからね」
「もうそれで良いわ……」
そう言ってため息を吐いたラムダは、ふとオオガミに背負われているエウリュアレを見ると、
「……これ、本当に寝てるのかしら」
「答えは定かじゃないけど、とりあえず首を絞める力は強くなったよ」
「ほぼ答えじゃない……まぁ、自分で歩くつもりはなさそうだし、そのままで問題ないわね」
「エミヤにも言った通り、今日は甘えてくる激レアな日なので」
「はいはいそうね。週一以上のペースである激レアな日ね」
そう言って、ラムダはオオガミの肩に軽く頭突きをするのだった。
いいなぁ……楽しそうだなぁ……とか、書きながら思ってしまう。コロナ許せないわ……