「今年の夏は離ればなれにならないことを祈っていきたいとおもいます」
「うわっ、想像していた以上に酷い状況なのだけど」
二度と離さないと言いたげな顔で、エウリュアレを人形のように抱いているオオガミを見て、思わず声が出てしまうラムダ。
その隣で同じようにカーマにバラキーが捕まっているのを見て、更に顔を引きつらせる。
「意外と落ち着くわねこれ」
「吾は足が着かぬから気持ち悪いのだが……」
「もう少しこのままいさせてくれれば何か作ります」
「……仕方ないな。吾は気にせんぞ」
「すごい手のひら返し。こっちは何か無いのかしら」
足をパタパタと揺らしながら聞くエウリュアレに、オオガミはエウリュアレの髪に顔を埋めつつ、
「考え中。思い付いたらで良いですかね」
「別に、まだ二週間あるのだし、それまでに思い付いてくれれば良いわ」
「正直、思い付く全てが平常運転と変わらないから特別感無いんだよね……」
「特別感に関しては既にここまで弱ってるあなたってだけで十分なくらいなのだけど?」
「おや。エウリュアレに対しては弱ってることがプラスに働くみたいなんだけど」
不思議だね? と言いながらも離すつもりが一切無いオオガミ。
本当に弱っているのか怪しいところではあるが、エウリュアレが言っているのでそうなのだろうと納得したラムダは、
「で、私の席はどこかしら」
「えっ」
「あら、私は仲間はずれかしら。酷いわね」
「いや、そう言うつもりはないけど……」
何が起こったのかを聞きたそうな視線を送ってくるオオガミに、エウリュアレは首を横に振って答える。
それを見て、どうしたものかと考えたオオガミは、ベンチに座り、右膝の上にエウリュアレを乗せると、
「ど、どうぞお座りください」
「なんでちょっと怯え気味なのよ」
不満そうなラムダ。だが、それだけ言うと素直にオオガミの左側に座り、寄りかかる。
「まぁ、及第点にしてあげましょう。次はもっと怯えないで話しなさい」
「うん……次からはもっと素直に甘えてくれると嬉しいけどね」
「……突くわよ」
「まだ死ぬような痛みは早いと思うんだ」
「じゃあ余計なことは言わないことね。つい意地悪をしたくなっちゃうじゃない」
「どう思いますか解説のエウリュアレさん」
「そうね。実況のオオガミがバカなことを言わなければ健康に帰れたかもしれないわね」
「ちょっと待って死ぬの?」
不穏な空気を漂わせてくるエウリュアレに、頬を引きつらせるオオガミ。左を見れば、それはそれは嗜虐的な笑みを浮かべるラムダがいた。
そんな三人から離れたところから、バラキーを抱いたままのカーマが、
「それじゃあ先にコテージに入ってますからね~」
「この状況で放置ですか! あっ、ちょ、や、やめぇ~!」
オオガミの悲鳴を聞き流しながら、カーマはコテージに入っていくのだった。