「そろそろ厳しいかもしれない」
「頑張ってお兄さん!」
「そんな軟弱で良いのか? 呆れられても知らぬぞ」
「頑張れ~。リリィも応援してますよ~」
「ぬぐぅぅ……!」
イリヤ、バラキー、殺生院リリィの三人からの声援を受けつつ、彼女たちの乗っている荷車を引くオオガミ。
その荷車には山菜だけでなく、解体されたワイバーンや魔猪などの肉も乗っており、あからさまに一人で引くような荷物の量ではなかった。
「くっ……全然、進まない……!」
「このままだと日が暮れるなぁ……」
「や、やっぱり私たちも手伝った方がいいんじゃ……」
「確かに手伝った方が早いかもですけど、言うほど進んでない訳じゃないですし、このままでも良い気がしますよ?」
「でも……やっぱり大変そうだし……」
「そんなもの、泣きついてきてから考えれば良いのだ。それに、この程度なら運べるほどに鍛えていたと思うが」
「なんだかんだコテージは見えてますからねぇ。あともう少しですよ~」
心配するイリヤと、対して興味がなさそうなバラキーとリリィ。
そんな話を聞きながらも、重い足取りでコテージに進んでいくオオガミ。
すると、コテージの方から虞美人がやってきて、
「ちょっと後輩。さっさと運びなさいよ。さっきから視界の端にいられて邪魔なんだけど」
「せ、先輩、わりと無茶苦茶言いますよね……」
「うるっさいわねぇ……いいから早く運びなさい。それとも手伝わなきゃいけないわけ?」
「先輩にそんなことさせられるわけ無いので頑張らせていただきます!」
「そ。じゃ、終わるまで見てるから」
「えっ」
そう言ってコテージに帰っていく虞美人に、頬を引きつらせるオオガミ。
それを見ていたイリヤ達は、
「どうしてお兄さんは手伝って貰わなかったんだろう……?」
「色々あるんですよきっと。プライドとか、そう言う感じのが」
「いや、吾はわかる。今のマスターの気持ちはあれだ。吾がカーマになにか手伝うことはないかを聞いたときと同じだ。手伝われるとちょっと迷惑とか、そう言う類いのやつ」
「ねぇいったい何をしたの? 何をしたらそう思われちゃうの……!?」
いったいバラキーが何をしたのか。その答えがイリヤの記憶の片隅からこちらを覗いているような気がするが、嘘であってほしいと思いながら聞く。
だがバラキーは顔を逸らしたまま頑なに答えようとしないので、イリヤの顔も青くなっていく。
そこにリリィが、
「まぁまぁ。良いじゃないですか、何があったとしても。彼女は害を加えようとしたのではないのです。ですから、気にしないことも大切ですよ?」
「スッゴい気になるけどね……」
「わざとではないのだ……わざとでは……」
いったい何があったのか。その真相を荷車の上で探っている間にも、オオガミは亀のような速度でコテージに向かって進むのだった。
ぐっちゃん先輩は秒で飽きて雑に運びそうだよね。という偏見。
ちなみにオオガミくんが一人で頑張ってるのは意地です。なんとなくかっこいいところを見せようとして引くに引けなくなったゆえの意地です。しかもバラキーがいるのでなおさら引けないため必死です。