「このうっとおしい呪いもなんですけど、それ以上にこの分断が許せないんですけど。バラキーはちゃんと三食食べてるんですよね」
「はいはい。あなたの過保護は分かったから落ち着いて作ってちょうだい。こっちも困ってるんだから」
そう言いながら、マシュと一緒に料理を乗せる皿を用意しているエウリュアレ。
既に何度か夜を越え、慣れてきてはいるが、だんだんとカーマが不機嫌になっていっていた。
「全く……私に薪を割らせるなんて良いご身分ね」
「それくらいしか出来ないんだからおとなしくしていてください」
「噛み付かないの。争ったら負けるんだから」
「負けませんけど! 私だってちゃんと強いんですからね!?」
そう言って怒るカーマを見て、エウリュアレは心底悪い笑みを浮かべつつ、
「じゃあ、負けたらどうするの?」
「仕方ないのでご飯を豪勢にしちゃいます。具体的に言うと一品増やしますよ」
「決まり。任せなさいエウリュアレ。今夜の食事はいつもより豪華よ」
「メルトが負けたら一つだけお願いを聞いてあげても良いわ」
エウリュアレの言葉に、カーマは一瞬目を丸くし、すぐにニヤリと笑うと、
「……本当ですね?」
「えぇ。誓っても良いわよ?」
「なるほど。それじゃあ軽く捻ってあげますよ!」
「ふふっ、薪割りとは比べ物にならないくらいのストレス解消になりそうね……!」
そう言って、湖の方へと行ってしまう二人。
カーマがちゃんと火の始末をしていったことを確認したエウリュアレは、マシュのところへ向かい、
「ごめんなさいねマシュ。今日のご飯は少し遅れそうだわ」
「そんな気はしていたので大丈夫です。楽しそうに焚き付けていたじゃないですか」
「ふふっ、だってしょうがないじゃない。バラキーに会えなくてあんなに不機嫌そうにしてるのよ? そこをいじらないなんて出来ないわ」
「エウリュアレさんらしいです」
そう言って、苦笑するマシュ。すると、
「マシュ~、お腹空いた~」
「あぁ、先輩。申し訳ないのですが、昼食にはもう少し時間がかかりそうです」
「えぇ~……あぁ、もしかして湖の方で争ってたのってそれ?」
「そうよ。だからおとなしく待っていなさい」
「は~い」
そう言って、自分の席に座るマスター。
エウリュアレはそれを見てため息を吐きながらその場を離れ、
「アナも連れてくるべきだったかしら。でも分断されてるなら意味ないものね……」
どうしたものかしら。と呟きながら、カーマとメルトの戦いの様子を見に行くのだった。
バラキーに会えないと目に見えて機嫌が悪くなるカーマ。もはや過保護とは別の何かのような気も……