「ふむふむ。アイドルですか。なるほど。アイドル……良いですね」
「……まさか、汝もステージに立つと……?」
悪い顔で笑っているカーマを見て、不安そうな顔をするバラキー。
だが、カーマは自信に満ちた表情で、
「安心してくださいバラキー。何と言っても私は休業中とはいえ愛の神ですから、人を愛すことには長けてるんです。歌って踊るくらいわけないですよ」
「えぇ~……吾絶対泣いて帰ってくると思うのだが……」
「むっ、わかりました。じゃあ私が泣いて帰ってくるようなことがあれば、一週間はバラキーの好きなお菓子を作ってあげますよ。まぁ、もちろん? 泣いて帰ってくるなんて無いんですけど。ちゃんと成功したらバラキーにも歌って踊ってもらいますから」
「構わぬが……しかし、まずは何からするつもりだ?」
「……ノープランでした」
どうしましょうか……と考えるカーマと、どこか遠い目をするバラキー。
「……とりあえず、路上ライブとか、してみたらいいと吾は思うが」
「ぐぬぬ……私のこの溢れんばかりのアイドルパワーを使えばライブハウスでも一網打尽ですよ。余裕です余裕」
「やめた方がいいと思うが……まぁ、吾は見守る」
「えぇ、そうしてください。それじゃあマスターに会場を押さえてもらいましょう!」
その自信はどこから来るのかと思いつつ、好きにさせようと、諦めの気持ちで見守るバラキー。
そしてカーマは、意気揚々とオオガミのところに向かうのだった。
* * *
「まだアイドルのハードルは高かったみたいです」
「うん。まぁ吾知ってた」
半泣きで帰って来たカーマを見て、うんうんと頷くバラキー。
その反応にカーマは不服そうに、
「おかしいじゃないですか。エウリュアレさんと私の対応がまるで違うんですけど。私前座ですか。そうですか。わかりました、わかりましたよ。私はおうちでゆっくりお菓子作っているので終わったら呼んでください」
「うむ……吾としては嬉しいが、なんだか複雑だな……ちなみに吾この後出演予定があるのだが、見ていくか?」
「なんで私よりバラキーの方が順応してるんですか!!」
「酒呑がいるのに吾がいないわけが無いであろう? 酒呑が楽しんでいるのだ。吾もやらねばなるまい」
「くっ、さすがにそこに対抗はできませんね……」
そう言って唸っていたカーマだが、諦めたように脱力すると、
「まぁ、帰るのはバラキーのを見てからでも遅くないですね。それに時代的にはほぼ現代。ちょっとスイーツ巡りをしても許されるはずですし、観光しますか」
「む。それは吾も行く。置いていくなよ?」
「はいはい。それじゃあ今のうちに行くところでも決めておきますか」
そう言って切り替えたカーマは、ノリノリで店を探すのだった。
カーマは絶対ポンコツ晒してくれると思うんだ……あと、酒呑いるからバラキーもいるよねそりゃあね。さすがだなバラキー。