「うあ~……なんかすごい夢を見てた気がする」
「私も見た気がするわ。とても楽しかったような気がするのだけど」
寝ぼけたまま食堂に入るオオガミと、なにかを思い出せそうで思い出せないエウリュアレ。
しかし、二人は目の前に並ぶ料理に、一気に意識が覚醒する。
「おせちだやったー! 年に一回くらいしか食べる機会はないからね。昨日張り切って作ったし、楽しみだね」
「もう食べて良いのかしら。でも人がいないのよね」
「もしかして正月特異点……? おせちが閉塞空間に閉じ込められて触れられないとか?」
「そんなことしたら犯人を針山にするわ」
「キレッキレだね。流石に冗談だよ」
そんなことを話していると、後ろから、
「おや、もう起きてきたのか。夜遅くまで遊んでいたからてっきり昼頃に起きてくると踏んでいたのだが……」
「エミヤさん。このおせちはまだ食べない方がいい感じ?」
「いや、食べていい。もとより、起きた者から順に食べていいつもりで置いてある。元々この大人数だ。この程度で足りるとは思っていないが、食材はある。追加で作るのも問題はないからな。ただ、栗きんとんだけは異常にストックされている。カーマがせっせと作っていたからなのだろうが、あれを全て茨木童子が食えるとも思わん。出来れば処理をして欲しいところだな」
「う、うん……まぁ、甘いのは小さい子達が食べるだろうし、余ったら貰おうかな。というかカーマ、年越した後に厨房で何をしてたのかと思えば、ずっと栗きんとん作ってたのか」
「なんだかんだカーマってバラキーのことを溺愛してるわよね」
「本人は否定するんだけどね。それじゃあ、食べてるよ。ありがとうね。エミヤさん」
そう言って、二人は隣り合って席に座り、おせちを食べ始める。
すると、二人を皮切りに集まり始めるサーヴァント達。
「あら、もう起きてきてたのね」
「一番乗りじゃなかった……頑張って早起きしたんだけどなぁ」
「別にいいじゃない、二番でも。どうせオオガミがいないと食べられないんだし」
「それはメルトの話でしょ! 私は食べられるもん!」
「おぅおぅ入り口でたむろせずに進め。儂らが通れんわ」
「茶々のおせちの邪魔をするなら森くんに薙ぎ払って貰っちゃうよ!」
「お、良いのか?」
「いや退くわよ。私たちだって食べたいもの」
そう言いながら入ってくるメルトとリップに、ノッブ達。
それに続くように入ってきたカーマとバラキーは、
「ってことがありまして、予定よりちょっと少なくなっちゃいました」
「むむむ……それは許せぬ……吾の栗きんとんを減らすための計略か? しかしそれならば吾はカーマの栗きんとんを食い尽くさねばならんな!」
「えぇ。しっかりと取り置きしてますよ」
「うむう……む? いやこれはおかしくないか。重箱一杯とかを想像していたが、どう見ても入って泳げるレベルではないか?」
「そんなにないですって。冷蔵庫は埋まりましたけど」
「……食いきれるか……?」
カーマの用意したという栗きんとんに、いつになく真剣な顔になるバラキー。
だんだんと騒がしくなる食堂に、エウリュアレは微笑みながら、
「ほら、メルトが子犬のように待ってるわよ」
「待ってないわよ。あれから成長したんだもの」
「あら、期待しないで見ていようかしらね」
「ふふん。見て驚かないでよ」
そう言って、メルトはエミヤから受け取った雑煮の餅を箸で持ち上げようとし――――べちゃりと音を立てて跳ねる汁。
直撃したメルトは死んだ魚のような目で箸を置き、
「まぁ、スタァが誰かに食べさせて貰うのは何の問題もない行為よね。オオガミ。食べさせなさい」
「いやどう考えても不自然――――あっ、痛っ、ごめっ、分かったから!」
「分かればいいの。ほら、食べさせなさいな」
そう言って、自分の失敗を見なかったことにしたメルトと、苦笑いしながら食べさせるオオガミを見て、エウリュアレは一人動けなくなるほど笑っているのだった。
今年の目標は書くことを辞めない。ですね。永遠オオガミ組とカーマバラキーを書いていたい……そんな気持ちでございます。他のキャラもレギュラー化したいけどね!