今回はこちらが先なのであとがきにリンクを張りたいと思います!
コラボが苦手な方は読み飛ばしてください! 全然大丈夫という方はこのままどうぞ!
「それで、何の用?」
BBに呼び出され、いつもの工房に入るオオガミ。
今日はメルトが不在で、エウリュアレだけが一緒にいた。
BBはそんな二人を見ると、
「よく来てくれました。実はですね? この前センパイが行ったって言うカルデアから持ち帰った、『何処でもレイシフト君』なんですけど、ようやく中身が分かったので報告をと思いまして」
「……今?」
「えぇ。ちょうどいいタイミングなので」
そう言って、半年ほど前に、並行世界のカルデアからもらってきた『何処でもレイシフト君』を卓上に置くBB。
オオガミは不思議そうな顔で、
「今、大晦日越えて一月一日なわけですけども」
「はい! だって今から寝るところでしょう? じゃあ工房で過ごしても問題ないじゃないですか!」
「え、なに、初夢なの? 初夢を並行世界のカルデアにしろってことなの?」
「えぇ! 実質連続年越しですよセンパイ!」
「どこにもワクワクしないけどなぁ! 一年で一回の年越しを連続なんてどうかと思うなぁ!!」
「まぁまぁ。大丈夫、全部夢ですから。一度あったでしょう? 虚数の夢。あれみたいなものですって」
「正夢になるやつじゃん……!」
「そんなところです。あ、もちろんエウリュアレさんもセットでいいですよ! 旅は道連れ! 一緒の夢を見てより親密になろうってことで!」
そう言うBBに、黙って聞いていたエウリュアレが、
「最初から連れていかせるつもりだったじゃない……そもそも、今メルトがいないのはあなたが原因でしょ。大方、リップに何かを吹き込んで拘束させているのでしょうけど。分かるわよ。だって、向こうにもメルトがいるもの。あまり会わせたくないんでしょ?」
「正解ですエウリュアレさん。だってほら、自分と同じ存在がいるなんてそんなドッペルゲンガー現象、わりと耐えられるものでもないですし。まぁ、月の天才AIであるBBちゃんには関係のない話ですけどね!」
「でしょうね。それで? なんで今なのよ」
「それはもちろん、これが2020年の12月31日の10時にレイシフトする仕組みだからですね。別に未来へのレイシフトでもよかったんですけど、どうせなら初夢にしてやれと思いまして」
そう悪びれるでもなく、むしろ誇らしげに言うBBに、オオガミは、
「ふぅん……それで、仕組みを知ったのはいつの事?」
「これを貰った当日ですね」
「つまりここまで温めていたと」
「そういうことです」
「当初言ってた改良は?」
「センパイのレムレムレイシフトを応用した、何時でもレイシフト君に改良したところですね! 指定した人物も巻き込めますよ!」
「最低最悪のトラップじゃん」
「まぁ、欠点はセンパイがいないと発動しないことくらいですかね?」
「なるほど逃げられないわけね」
「いいじゃない、いつものことでしょ。それが意図的に起こるだけの事よ」
「心構えは出来るからってことか……まぁ、エウリュアレがいるなら大丈夫でしょ」
「楽観的ね……別にいいけど。二人旅も悪くないわ」
「スゴい好意的に見たね」
「だって危険なところじゃないって言うのは確定しているでしょ?」
「……まぁ、エウリュアレがいればなんとかなる範囲ではある、かな?」
「でしょ。だからほら、さっさと寝なさい。夢を見るのは早い方がいいわ。だってその方が起きた後の楽しみも多くなるもの」
「なるほどね。じゃ、BB。こっちの準備はいいけど、そっちの準備は大丈夫?」
そう聞くオオガミに、BBは少し考え、
「あぁ、そうですそうです。一応これを首から下げておいてください」
「……銀の鍵?」
オオガミは呟き、手渡されたものを見る。
それは銀の鍵をつけたネックレスで、アクセサリーとして普通に売っていそうなものだった。
「これをつけておくだけでいいの?」
「はい。簡単に言えば、それが基準点になりますからね。アンカーというか、ビーコンというか。ともかく、それがあれば帰還は楽になりますので。失くさないようにしてくださいよ?」
「……ちなみに、失くすと?」
「帰還できない、という訳じゃないんですけど、ちょっと時間がかかりますね。回収に派遣する人がセンパイを見つけるのに時間がかかるので」
「よかった。帰れないとかじゃないのね」
「はい。ですから、最初から楽になるって言ってるじゃないですか」
「なるほどね……あ、ついでに聞いておきたいんだけど、追加召喚って出来るの?」
オオガミの質問に、BBは不思議そうに首をかしげながら、
「追加召喚ですか……まぁ出来ないこともないですけど、その場合はその鍵を経由してですね。それでも、エウリュアレさんを除いて2騎までです」
「意外と召喚できるね?」
「まぁ、向こうもカルデアですからね。基本的に制限はないと思うんですが、予防策みたいなものです。大人数を召喚して酷いことになったら目も当てられないので」
「なるほど……困ったらメルトとカーマを呼ぶかな」
「メルトですか?」
「うん。だってほら、同一存在を見たときには相手が霞に見えるらしいし。それに、前回連れていってたしね」
「まぁ、大丈夫ならいいんですけど……メルトはあくまでも緊急ですからね」
「わかったよ。じゃあ、これで聞くことは聞いたかな」
そう言うと、オオガミはその場で横になり、
「それじゃ、レムレムレイシフトよろしく~」
「はいは~い! エウリュアレさんも一緒にいてくださいね~」
「えぇ。任せたわよ」
そう言って二人は目を閉じ、BBは何処でもレイシフト君を起動させるのだった。
* * *
「……あぁ、自室じゃないね」
目を覚ますと、見覚えのあるマイルームで、しかし雰囲気や置いてあるものが違っていた。
同じように隣で目を覚ましたエウリュアレは、
「うまく出来てたみたいね。ネックレスは大丈夫?」
「大丈夫。周りに誰かいるかな」
「まぁ、制作者本人はいるんじゃないかしら」
壁の一点を一瞬睨んだエウリュアレを見て、オオガミは納得すると、
「それじゃ、下手に動かない方が良さそうだね」
「でもここのマスターって女性よね。男性がいたら殺されるんじゃない?」
「なるほど正論。これは死んだかもしれないね」
「大丈夫です! そう簡単に殺させたりはさせませんので!」
そう言って、どこからともなく現れるBB。
だが、いつもとは雰囲気が違うので、こちら側のBBではないのだろうと予想できた。
「おやおや、警戒されてるみたいですけど、そんな必要ないですよ。むしろよく来てくださいました!」
「まぁ、こっちのBBから、この時間に呼ばれたって言うのを聞いたからね。面白そうだから行くしかないでしょ」
「危険なことに首を突っ込みたい性分だもの。だから来たのだけど」
「なるほどなるほど。実に愚かで勇気があっていいですね! でも普通に考えて貰い物を素直に受け取るのはどうかと思いますよ」
「それはそっちのマスターにも言えることじゃないのかしら」
「ごもっともです。っと、世間話をしてる場合ではないですね。今回呼んだのにはちゃんと理由があってですね?」
「大晦日だもんね。そりゃなにか企画があるよね」
「はい。今年で三回目になるイベントですね」
BBはそこで言葉を区切り、どこからともなくタブレットを取り出すと、
「大晦日の紅白歌合戦! ということで、こちらが準備中の会場ですね。機材の最終チェックをしてるところです」
「なるほど……それを見せるために呼んだって、訳じゃなさそうだね」
「えぇもちろん。参加して貰おうと思いまして。練習スペースも設けさせていただきましたよ」
「う~ん、至れり尽くせり。どうするエウリュアレ」
「演奏しないわよ」
「エウリュアレはボーカルでしょ」
「えぇ。演奏は任せたわ」
「まぁ、そうなるよね。とりあえず、その練習スペースって言うのを見たいな」
「はい。それでは二名様ご案内です!」
そう言って、マイルームから二人を連れ出し、外側から赤いリボンのついた長い鍵を鍵穴に差し込みひねると、
「ここが練習スペースですね」
「え、今マイルームだったような……」
BBの言葉に首をかしげるが、開かれた扉の先を見て言葉を失う。
そこには様々な楽器が置かれている広いスペースで、確かに練習するには最適の場所だった。
導かれるように一歩二歩と部屋に入った二人は、
「なるほどこれはロマン溢れる入り方だ……」
「これはこっちでも作って貰うしかないわね。あぁでも、アビーがいるから要らないって言うことなのかしら……」
「部屋よりも入り方の方が褒められてるの、複雑ですね……」
「しょうがないよ。心に響くものだったんだから」
「中の物よりも魅力的だったんだもの」
ハッキリと言われ、若干悲しそうにするBB。
そんな彼女を置いてオオガミは楽器を見つつ、
「でもまぁ、演奏できるのもそんな無いしねぇ……カルデアに来てから楽器に触れる機会も何度かあったし教わりもしたけど、それでも素人よりはまぁ出来るって程度らしいし。あんまり期待しないでよ?」
「そうねぇ……とは言っても、二人じゃ味気無いもの。カーマを呼ぶとかどうかしら」
「あ~、カーマかぁ。増えて貰って演奏して貰うとか?」
「一人でオーケストラ出来そうだもの。良い案じゃない?」
「全人類対応型の愛だし、音楽に精通してる可能性もあるからね。いけるねこれは」
そんな事を話すオオガミ達。
すると、BBが、
「練習するのは良いですけど、時間はそんなにありませんからね?」
「任せて。どうにか間に合わせるから」
「一応カーマが来なかったとき用のも用意しておきましょう」
「それ召喚できないやつじゃん……!」
「BBの予想なんて信用も信頼もしてるわけ無いでしょ」
「さらっととんでもないことを言いますね……」
「自分のやった所業をかえりみてから言ってほしい言葉よね」
「そっちの私は一体何をしたんですか……」
BBはそう言うと、ため息を吐く。
そして、改めて顔を上げると、
「とにかく、時間になったら呼びに来ますので!」
「はいは~い。そっちも頑張ってね~」
「あなたのマスターに負けないくらいの歌を用意して上げるわ。魅惑の美声がただのスキルじゃないことを証明してあげる」
「それは楽しみですね……それではまた後で!」
そう言って部屋を出るBB。
すると、
「あ、BB」
「あ、センパイ。どうかしました?」
BBに聞き返され、困ったような顔をしながら、オレンジ色の髪をした少女――――アオイは言う。
「えっと、ダ・ヴィンチちゃんが、前みたいに一瞬だけバイタルが二倍になったって言ってて。なにか知ってる?」
「あ~、それはですね、後のお楽しみと言うことで! 今年のステージも楽しみにしてますよ!」
BBはそう言うと、アオイを押しながらどこかへ立ち去るのだった。