「ふふふ……あっちもこっちもクリスマス。でもサンタはイイコにしか来ないので、当然私には来ませんとも。ちゃんとヴリトラにも助力しましたからね」
「……吾、カーマのそのよく分からぬ意地の張り方はどうかと思う」
「うるさいですねこれでも食べててください!」
そう言って、マカロンをバラキーの口に叩き込むカーマ。
バラキーはそれをもさもさと食べつつ、なにか仕出かそうとしているカーマを観察する。
「良いですかバラキー。この世にはイイコ用のサンタとは別に、悪い子用のサンタもいるんです」
「ん。それは聞いたことがある。でも吾一回も会ったこと無いが」
「当然です。今までいませんでしたからね。そう、つまり今年から私がなれば良いんですよ!」
「……ブラックサンタカーマか。ふむ、楽しそうだな?」
「そうでしょうそうでしょう! ふっふっふ……今日のために要らない塵や石、魔獣の内臓とかを用意したんですからね! カルデア悪い子集団に目にものを見せてくれますよ!」
「吾わかった。これ悪行のつもりで善行してしまうやつだな。うむ。面白そうだしついていくとするか」
いつの間にか黒いサンタ服を着て大きな白い袋を持ったカーマが走っていくのを、バラキーは楽しそうな笑みを浮かべながら追いかけるのだった。
* * *
「で、今年は?」
「BBとノッブに仕事を奪われたので。今年はおとなしく寝てろってさ」
寝る支度を済ませ、ベッドに入りつつ、先に入っていたエウリュアレの質問に答える。
すると、エウリュアレは目を細めて、
「ふぅん……クリスマスに、寝てろって?」
「そういうこと。といっても、いつも通りじゃない?」
「……そうとは限らないと思うけど」
エウリュアレはそう言うと、オオガミの首に両手を回し、引き寄せる。
寝る前ということもあり、温かな間接照明の淡いオレンジ色の光に照らされたエウリュアレは、いつもの何倍もの妖艶さを放っており、オオガミは特に抵抗もせずにエウリュアレの行為をそのまま受け入れ――――
「ちょぉぉっと待ったぁ!!」
大きな声とともに開かれる扉。
反射的にオオガミが振り向くよりも早く、そして速く投てきされた枕元の目覚まし時計が
「え、ちょ、エウリュアレ!?」
「なによ。せっかく作った雰囲気を台無しにされたこっちの気持ちにもなってほしいのだけど」
「その気持ちはわかるけども。それで、今のは声からしてカーマ?」
そう言ってオオガミが振り向くと、目覚まし時計の衝撃から目覚めたカーマが起き上がる瞬間だった。
「いったたた……なんなんですかエウリュアレさんのその投てき。反射で投げたにしては殺意高くありません?」
「出てくるのが悪いのよ。それで、何の用かしら」
そう言って、普段の何倍もの殺意のこもった視線を向けられるカーマ。
だが、カーマは飄々とした態度で、
「もちろん嫌がらせです。メルトさんを送りつけるのも考えましたが、普通に一緒に混ざりそうなのでこっちにしました。メリーバッドクリスマス!」
そう言って黒いプレゼントボックスを投げ付けるカーマ。
オオガミがそれを受け取ったのを確認すると、
「今回のイベントとは無関係ですので! それでは!」
それだけ言うと、カーマはその場を立ち去り、扉も閉まる。
残された二人はというと、
「……興が削がれちゃったわ。もう寝ましょう」
「そうだね。それじゃあおやすみ」
不機嫌になってしまったエウリュアレの頭を撫でつつ、オオガミは寝るのだった。
* * *
「ふ、ふふふ。まぁざっとこんなものですよ」
「最初からクライマックスというヤツだったな。最初以上の見せ場など作れそうにないが」
「痛いところを突きますね……まぁ、あのタイミングしかあの部屋は突撃できなかったので。それじゃ、次もいきますよ~!」
そう言って、カーマは突き進むのだった。
メルトは同じ部屋で寝たり寝なかったりします。えぇ、はい。エウリュアレは常に同じ部屋の同じベッドです。
個人的にはカーマが楽しそうで何よりなイベントでしたね。またイタズラを考えていてほしい……