「汝ぇぇ!! 綱の気配がするぞ!! 召喚したなぁぁぁ!?」
そう言って飛びかかってくるバラキーを、オオガミは正面から受け止めると、
「確かに召喚したけども。でもバラキーの腕は斬らせないよ」
「そういうことではないわ! ヤツがいて、吾がいる。それはつまり、殺し合うしかないと言うことだ! それで、ヤツはどこだ!? 今ならば種火も再臨もしておらぬだろう!?」
「いや、確かにそうだけども。倒すチャンスではあるけど、倒させはしないよ?」
「ぐぬぬ……汝は一度言うと中々曲げぬからな……仕方ない。諦めるとしよう。だがとにかく一度は会う。会って吾の方が先輩なのだから言うことを聞けと言う。くくく……召喚が遅かったことを恨むのだな綱ぁ!」
そう言って笑うバラキー。
だが、オオガミは少し考えると、
「向こうは会うつもりは無さそうだったけど」
「知るか! 吾が会うと言っているのだ。ヤツの意思は関係ない。汝だって月に一度キアラの元に行っているではないか!」
「まぁ、あの人はセラピーの腕だけは確かだしね。性格には難があるけど、性根は子供だから」
「今さらっとスゴいことを言ってないか? 吾たまに汝が怖いのだが」
「鬼が怖がるものじゃないでしょ」
「その肝の座り方がわりと尋常じゃないのだが……汝、本当にただのマスターか……?」
「一度人理救ってるけどね。ただのマスターかどうかについては議論の余地があるかもしれない」
「難しいのだな。マスターというのも」
バラキーはそう言って頷くと、ハッと我に返った顔になり、
「それで、綱はどこだ?」
「う~ん、逃げ切れないかぁ」
そう言って、ため息を吐くオオガミ。
そして、覚悟を決めた目をすると、
「よし。じゃあ一緒に行こうか」
「うむ。それでよい。では行こ、おぉ?」
意気揚々と進もうとするバラキーの手を握るオオガミ。
それに驚いたバラキーは、一歩、二歩と後退し、
「ど、どうした汝……いきなりは驚くが……」
「いや、バラキーが綱さんを見つけても飛び掛からないようにね」
「せんわ! 吾そこまで短気ではないぞ!?」
「バラキーは頭領だしね。流石って感じ」
「……バカにしておるな?」
「してないしてない。バラキーはすごいなぁって思ってるだけ」
「……褒められるのは悪くない……悪くないが、やはりバカにしているだろう」
「してないってば……って、あれ?」
何やら話し声が聞こえ、首をかしげるオオガミ。
バラキーもそれに気づいたようで、聞き耳を立てると、
「……これ、カーマと綱ではないか?」
「ふむ。予想はバラキーと一致……さてさて実際は……」
そう言って覗き込むと、そこには予想通りカーマと渡辺綱がいた。
とは言っても、仲良く世間話をしていると言うわけではなく、カーマが綱に文句を言っているように見えた。
だがしかし、それを見たバラキーは、オオガミの手を引っ張りつつ、
「綱! ここで会ったが最後! 死ぬがよい!」
「え、ちょ、バラキー!?」
「だから襲撃させないってば」
綱に飛び掛かろうとしたバラキーの手を引き、すかさずガンドを叩きつけてスタンさせるオオガミ。
飛び上がった直後に引っ張られたのもあり、オオガミの方へ落ちていき、受け止められる。
「ふぅ。これで一安心かな。それで、二人は何をしてるの?」
「なんですかその決断力。ガンドを撃つまでの動作に一切のためらいがなかったんですけど」
「日々劇薬と一緒にいるのは伊達じゃないんだよ。ためらってたら食べられるからね。全方位の意味で」
「どうりで難攻不落な訳です……いえ、まぁ、エウリュアレさんとメルトさんには落とされてますけど」
「何を言ってるんですか。今も昔も、不味いなってくらいに落とされたのはエウリュアレだけだよ」
「ストレートに惚気ないでください。というか、それメルトさんに殺されません?」
「メルトはこっちが最初から落ちてたのでノーカウント」
「なるほど順序の問題ですか……というか、エウリュアレさんへの入れ込みは後天的なものだったんですね」
「まぁね。っと、綱さんをこれ以上放置するのはダメだね」
「いや、俺の事は気にしなくていい。むしろ、そのまま茨木を抱いているのはかなり危ないと思うのだが」
そう言って、綱はバラキーのことを指差す。
オオガミは一瞬不思議そうな顔をするが、すぐに綱の言っている意味に気付き、
「あぁいや、危なくはないよ。少なくとも、ここではそんなに暴れたりしないから。まぁ、今目の前で飛び掛かろうとしてたけども」
「そうか……いや、それならいい。ただ、もし主に危害が加わるのであれば、俺は斬らねばならないだけだからな」
「じゃあその心配はないね。とりあえず、頼光さんのところまで案内しようか。カーマはどうする?」
「私はバラキーを連れていきますよ。というか、どうして連れてきたんですか。せっかく私が引き離そうとしてたのに」
「ん~……連れてきたと言うより、ついてきたから。どのみち何かするようならこうするつもりだったしね。最初からおとなしくしてるとは思ってなかったし」
そう言って、カーマにバラキーを預けるオオガミ。
カーマは受け取りつつ、
「それじゃ、頼光さんは向こうにいましたので。バラキーに近付けさせないでくださいよ」
「はいはい。任せといて」
カーマはオオガミの言葉を聞いてから、立ち去るのだった。
「……それじゃ、行こうか」
「あぁ。よろしく頼む」
そうして、二人は歩き出すのだった。
5.5章読み終わってから地道に書いてたら3日経ってた……いやぁ、うちのバラキーとカーマは平常運転だなぁ。
そして綱さんのバラキーへのボイスがわりと豊富でワクワクしちゃう……あ、リンボは召喚できませんでした。カタパルトには乗せられなかったよ……