「よし。箱開け分は揃ったかな」
「お疲れ様です!」
一仕事を終えカルデアに帰還し、挨拶をするキャストリア。
その時、彼女はふとオオガミに違和感を覚え、
「あれ……なんですかね。なんか昨日と違う気がするんですが……」
「えっ、いや、何にもないと思うけど……?」
「ん~……なんでしょう。昨日はハロウィンでお菓子を配ってただけだったはず……その時は特に違和感はなかったんですけど……」
「それ以上考えない方がいいと思うなぁ!」
「あ、わかりました! 昨日と違って首元が見えないんです……ね……?」
ポン、と肩に置かれた手。
振り向くと、先ほどまで一緒に周回をしていたエウリュアレが、にっこりと微笑んでいた。
「え、なんですか? 待ってくださいすごい怖いんですけど! なんで静かなんですか! 怖い怖い怖い! マスターも見てないで助けて欲しいです!」
「ごめんキャストリア。残念だけど、助けられないんだ……きっとあと何人か追加で連れていかれると思うよ」
「そ、そんなぁ……!」
そして、エウリュアレに連れていかれるキャストリア。
オオガミがそれを見送ると、入れ替わるようにアビゲイルが現れ、
「マスター、なんだか大変なことになってるって聞いたのだけど」
「あぁ、アビーか……まぁ、大変なことと言えば大変なことかな……」
オオガミはそう言うと、食堂に向かいつつ、
「エウリュアレが今朝からあまりしゃべってくれなくて。怒ってるわけじゃなくて、どっちかっていうと落ち込んでる感じ」
「そう……」
アビゲイルはそう言うと、オオガミの首元を見て、
「ここが原因だと思うのだけど」
「……やっぱり?」
そう言って、首元を押さえるオオガミ。
アビゲイルは首をかしげながら、
「結局、何があったの? 私、マスターが怪我をしたって言うのしか知らないのだけど」
「別に、大怪我とかじゃないから大丈夫だよ。それに、アスクレピオスもナイチンゲールも何も言わないでしょ」
「確かにそうだけど……」
「あの医療バーサーカーな二人が言わないってことは大丈夫ってことだよ」
「そうかしら……なんだか違う気がするのだけど……」
「まぁ、アスクレピオスはともかくとしても、ナイチンゲールが反応してないのは信頼してもいいんじゃないかな。気付いてないってこともないだろうし」
そんなことを話していると、食堂の前にたどり着く。
オオガミは扉を開けつつ、
「まぁ、エウリュアレにあそこまでされるとは思わなかったけど」
「え、エウリュアレさんが関わってたの?」
「……やぶへびだったか」
目を輝かせているだろうアビゲイルの気配を感じ、オオガミは頭を抱えるのだった。
はたしてエウリュアレの胸中にあるのは羞恥か照れ隠しか。連れ去られたキャストリアの安否は如何に……そして、真相に一歩近付いてしまったアビゲイルは、エウリュアレの逆鱗に触れず無事のまま過ごせるのか。
さぁオオガミよ。その首元を見せるのだ!
次回、オオガミ死す!
レイシフトスタンバイ!