「もうクリスマスなのね」
「10月なんだけど。今年もハロウィンは爆散かな?」
「イベントが来なくてもお菓子の準備はしておいてください。子供たちにイタズラされても知りませんからね」
そう言いながら、厨房でお菓子を大量生産しているカーマ。
サンタアイランドから目を逸らしているオオガミは、一緒にお菓子を作りながら、こちらの様子を覗いているメルトに、
「そういえばエウリュアレは?」
「知らないわ。去年に引き続きハロウィンが無くなったからすねてるんじゃない?」
「そんな事ある?」
「ちゃんとしたお題目のもとイタズラが出来るイベントだもの。嫌いなわけ無いじゃない」
「あ~……確かに、そういう側面もあって好きって言ってた気はするけど、すねるかな。むしろ堂々と文句言いそうだけど」
「じゃあ仮装してるとか」
「なるほどそれだね。うんうん」
そう言って、オーブンからマシュの盾に似たクッキーを取り出す。
カーマはそれを見て、
「なんですかその技術。無駄にキレイなんですけど」
「まぁ、練習してたからね。エウリュアレにメドゥーサみたいなクッキーを作れって言われたときに」
「むちゃくちゃですね……顔型ですか」
「もちろんそんな型は無いから、おっきーにデフォルメ顔を書いてもらって、型をエミヤに作ってもらって何度か試作して完成させたけど」
「その努力を別の方向に活かすとかは無いんですか」
「そもそもが息抜きだよ」
「どう考えても息抜きじゃないんですけど」
「そいつ、基本断らないお人好しだもの。無理に休ませるより簡単なお願いをした方が休むわ」
「そうでした。この人自体がずれてるんでした」
「酷い言われよう」
オオガミは悲しそうにそう言うが、若干自覚があるため言い返しはしない。
それを見てメルトは楽しそうに笑うと、
「別に悪いわけじゃないわよ。スタァにSPは必須だし、付いていてくれないと困るもの。でもそれはそれ。無理をしないのが大事よ。マスターはあなたしかいないんだから」
「……今日は優しいメルトだね」
「あら、刺して欲しいのかしら。私はそれでもいいのだけど」
「う~ん、そういうわけじゃないんだけど……そうだね。言い換えるなら、そういう側面も見れて嬉しいって感じかな」
「……そういう言葉、サラッと出てくるわよね」
「やはり本音に勝るものはないと思いまして」
「いつか絶対に刺されるわよ」
「むしろここで刺すのもありかもですね」
「う~ん物騒すぎる」
とはいえ、下手に嘘を吐くと襲いかかってくるのが約一名いることは全員知っているところなので、安全のためにどちらの危険を取るべきかと悩むメルトとカーマ。
「まぁ、男女関係なくこういうこと言う人ですし、気にする必要はなさそうですね」
「えぇ、気にするだけ無駄よね。さぁオオガミ。早くそのクッキーを寄越しなさい」
「はいはい。スタァ様の仰せのままに」
そう言って、オオガミは出来立てのクッキーを持ってメルトのもとへ向かうのだった。
なんだかんだエウリュアレもステンノもこういうイベント事は好きそうなイメージ。うちの子だけかもだけど。