「……今日はずいぶん、べったりじゃんね」
「そうかしら。いつも通りじゃない?」
オオガミの膝の上で寄りかかっているエウリュアレ。さらに言えば、オオガミの両腕を掴んで自分を抱き締めさせるようにしている。
しかも、いつもの毎晩ではなく、食堂でのことだった。
「たまにはこういう日があっても良いじゃない」
「そう言う問題かなぁ」
「そんなものよ」
そう言って微笑みながら、エウリュアレはテーブルの上にあったかりんとうまんじゅうを一口食べ、
「あら、サクサクのおまんじゅうね。不思議だわ」
「意外と癖になる味で好きだよ。エウリュアレは?」
「ん。食感が想像と違うけど、これも良いわね。美味しいわ」
「それならよかった」
「あの、それ私も食べて良いんです?」
その声を聞いて、正面を見る二人。
そこには不機嫌そうな顔をしたカーマがおり、かりんとうまんじゅうを指差していた。
「いつからいたの?」
「最初からですよ! というか、そっちが呼び出したんでしょう!?」
「そういえばそうだったような気もするわね。ふふっ、ごめんなさいね?」
「絶対わざとですよね……だって椅子になってるマスターがそういう顔してますもんね!」
「オオガミ?」
「いえそんな顔してるわけ無いじゃないですか。ただ単純に、最近バラキーが甘いもの食べ続けてるけど虫歯になったらどうしようとかそういうこと考えてただけだから」
「本当は?」
「前より抱き心地良くなった?」
「太ったってこと? ねぇ、どういう意味かしら」
サーヴァントとしての力を使って腕を抱き締めるエウリュアレ。
しかしオオガミは涼しい顔で、
「可愛らしくなったなって」
「……当然じゃない。愛される女神だもの」
「なんですか。もしかして見せつけるために呼んだんですか」
「まぁ、半分そうね。でも、逆かしら」
「はぁ。逆?」
「えぇ。見せつけられたから仕返しをしてるの。何十通りのあま~いシミュレーションは心地よかったかしら。休ませてくれるのはありがたかったのだけど、手段は戦争ものよ? だから、一応ね。宣言しておこうかなと思って」
そう言って、エウリュアレは目を細めると、
「オオガミは譲るつもりはないわ。愛することしか知らない神に負けるつもりなんか無いもの」
「……愛される女神に言われるのは釈然としませんね。私は与えるもので、あなたは与えられるもののはずなのに。でも良いですよ。最後に堕落させるのはこの私ですから」
そう言って、二人の間に暗雲が漂い始め、その中心であるはずのオオガミは、遠い目をしながら、次のおやつを考えるのだった。
カーマの幕間を見て、書くしかないなって思って書いたら今さらになって不穏ですよこの二人。でもうちのカーマにはバラキーというマスコットがいるので実際争うかは謎。たぶん争う。