「むぅ、結局水着は着れなかったわ」
「本当にね。まぁ、私も水着は持っていないから泳げたりはしないのですけど」
「そうねぇ……泳げるのなら、適当にプールでも作ろうかと思ったけど」
「湖から帰ってきたばかりでまだ遊ぶのか……」
マイルームのベッドの端に座りながら残念そうにしているアビゲイル達と、そのベッドで横になっているオオガミ。
最後の最後まで粘ったのだから許されてほしいと思うオオガミだが、エウリュアレとラムダは楽しそうな笑みを浮かべ、
「残念。えぇ、本当に残念ね。全く、悲しい限りだわ」
「結局アビーはまだ泳げないだなんて」
「うぅっ、ら、来年こそは確実に手に入れるから……」
「それならとっても嬉しいのだけど……でも、エウリュアレさんもメルトさんも勘違いしているみたいなのだけど、水着の私は別の私よ? だってみんながキャンプをしている間、ずっとエレシュキガルさんと待っていたもの」
そう言って、他の三人が硬直しているのを見て首をかしげるアビゲイル。
そして、エウリュアレとラムダはオオガミの方を向くと、
「つまり、私のかわいいアビーには水着を着せられないってこと?」
「いつからエウリュアレのアビーになったのかは話し合う必要があるけど扱い的には北斎さんが良い例だと思うよ。うん。あと増殖するアルトリアさん」
「私は自由に変更できるけど別の存在だから変えられないわよねどうするつもり?」
「そこに万能のルーンがありましてね」
「「それよ」」
二人は息ピッタリにそう言うと、アビゲイルに向き直り、
「来年水着さえ手に入れればどうにでもなるわね」
「えぇ。それで良いわ。オオガミには張り切ってもらいましょう」
「あ、あの、なんだかエウリュアレさんもメルトさんも怖いのだけど……」
「なんか、エウリュアレはともかくとしても、メルトまでこうなるとは思わなかった。これが夏の魔力か……」
なんだかんだとアビゲイルを可愛がっていたエウリュアレと同じくらい盛り上がっているラムダを見て不思議に思うオオガミ。
だが、突如としてエウリュアレは立ち上がると、
「そういえば、アビーのことを先輩って呼んでいたのがいたわよね」
「え、せ、先輩? そんな風に私呼ばれてたの……?」
「いたわね。呼び出すの?」
「まさか。水着のアビーの話を聞くの。だって私たち、なんだかんだ水着のアビーと話してないじゃない」
「それもそうね。聞き出しましょうか」
「それじゃ、行ってくるわ」
「え、あ、いってらっしゃい」
「怒涛の勢いで出ていったよ」
部屋を瞬く間に飛び出していったエウリュアレとラムダに呆然とする二人。
すると、アビゲイルは困ったような様子で、
「えっと、その、マスターは水着の私をどう思ったのかしら……」
「ん~……そうだね。いつもより大人ぶっているアビーだね。可愛かったよ?」
「そう……あぁ、ダメね私ったら。水着の私に嫉妬しちゃいそうだわ」
「大丈夫大丈夫。少なくとも、召喚されるまでは今のアビーが唯一だからね。それに、今なら誰もいないから独占できるよ?」
「もう、マスターったら……私、悪い子になっちゃいそう」
そう言って、オオガミの隣に寝転がるアビゲイル。
「今だけ。今だけ、こうしていても良いかしら……」
「うん。おやすみ、アビゲイル」
その声を聞いて、アビゲイルは目を閉じるのだった。
おかしい……キャンプ中の話が全然無いんだが!! 楽しく遊んでいたの、カーマとバラキーだけなんだが!!
でもあの三人が遊ばないわけ無いので来年の宿題ですねこれは。
ちなみになんですけど、一応セリフで通常アビーと水着アビーは別扱いらしいのでそこはこの作品でも分けようかと。つまり夢のダブルアビー……これは最強の予感しかしない!