「帰ってきたけど、なんだかここにいた記憶もおぼろげね」
「くっつく方に気を取られてたんじゃない? 離れまいと抵抗してたし」
「だからここが落ち着くのね」
そう言って、オオガミの右腕に抱きつくエウリュアレ。
もはやオオガミは怒ることもせず、ただため息を吐く。
そして、左後ろでそわそわしているメルトを見て、
「メルトは?」
「……そんなくっつくなんて出来ないわ。でもまぁ、どうしてもというのなら」
「じゃあどうしても。来てくれないかな?」
「……しょうがないわね」
そう言って、エウリュアレと同じように左腕を占領するメルト。
その様子を遠くから見ていたアビゲイルは、
「お二人とも凄いわ……なんだか見ているこちらが恥ずかしいくらいだもの」
「そうですねぇ。確かに凄いです。でも憧れというよりは呆れですよこれは。凄いバカップルです。締め上げていいですか」
「あれバカップルでええんか? 儂いい加減修羅場になると思うんじゃけど」
「お二人とも、聞こえてたら殺されるんじゃないかしら」
呆れ顔で言う二人に、アビゲイルは苦笑いをしながらそう言うと、ノッブとBBはため息を吐き、
「儂全くわからんのじゃけど、なんであやつらはバカップルを否定したがるんじゃ?」
「バカってところだと思うのだけど」
「だとしてもカップルであることは納得してほしかったんじゃが……全力の否定で儂も変な笑いが出たわ」
「それは……どう思ってるのかしらね。カップルじゃないならなんなのかしら」
そう言って、ああでもないこうでもないと悩んでいると、
「……何してるんですか三人とも。完全に不審者ですけど」
「む? カーマか」
「ちょうど良かったです。あそこに先輩たちがいるんですけど、あれって本人たち、どういう関係性だと思ってるんでしょ」
「……また面倒なことを聞いてきますね」
聞いてくるBBに、深いため息を吐くカーマは、やがて観念したように顔を上げ、
「自称友人らしいですけど、どう見てもそれ以上なんですよね……」
「本人達としては友人なんですね……恐ろしく面倒くさいですね? もう友人の域を抜け出してることにいつ気付くんでしょうか……」
「一生気付かんだろ。いや、気付いてはいるけど区分分け出来てないとかか……? エウリュアレは既にオオガミに好意をぶつけてるしな……うぅむ、どれだけ考えてもあやつらが面倒と言う結論しかでないんじゃけど」
「実際ほとんどそうですし。それじゃあ私はきんつばの研究をするのでこれで」
そう言って、カーマ悩むノッブ達を置いてさっさとその場を立ち去るのだった。
このままずるずるとどこまで行くのか。どこかで決着をつけなきゃだなぁと思いつつも踏ん切りがつかない微妙な感じ。う~んどうしよう。