「……帰るつもりあります?」
「何言ってるの。確かに帰るって言ったけど、私から動くわけないでしょ」
「そうなの? てっきり春日山城に戻るのかと思ってたのだけど」
「体力無いから却下よ。目指すは日光よ。温泉卵でも食べながらのんびり待つの」
そう言って、意気揚々と歩くエウリュアレ。
カーマはそれを見ながら、隣のバラキーに、
「日光って、温泉あるんですか?」
「吾の時でもあった……と聞いたな。風の噂でしかないが。湯治に行く者もいたというのだから、おそらくあると思う」
「そうですか……じゃあ温泉はあるんですね。時代が違うとかならないんですね?」
「日光など吾も行ったこと無いから知らぬ……生まれは越後だし、ほとんどは大江山で暮らしていたからな……」
「そうなんですか……じゃあ東の方ではただのバラキーなんですね」
「その通常じゃない吾がいるような言い方はやめろ。吾、バーサーカーとランサーしかないからな?」
「有能バラキーを見るのはもう少しあとみたいですね」
「吾実はバカにされてる……?」
いやまさか。と呟きつつも、真剣な顔で悩むバラキー。
カーマはそれをスルーして、
「アビゲイルさん。マスターから返事来ました?」
「来たわ。小田原周辺を制圧しがてら探すって」
「周辺って……日光はかなり遠いと思うんですけど」
「サーヴァントならスパッと行けるわ」
「他の兵はどうするんですか……」
「……確かに。サーヴァントだけなら問題ないけど、マスターを守るためには大事よね……じゃあ、時間かかっても仕方ないわ」
「……一応日光にいるとだけ伝えておいてください」
「えぇ。言っておくわね」
そう言って、門の向こうから紙とペンを出して、書き始めるアビゲイル。
器用だなぁ。と見ながら歩いていると、
「そういえばカーマ。現代には温泉まんじゅうっていうのがあるらしいんだけど、今もあるかしら」
「知らないですよ。というか、今の時代とマスターの時代の温泉まんじゅうの味はかなり違うと思うんですが」
「……それもそうね。じゃあ、期待少なめで行きましょうか」
「期待が低いほど旨かったときは格別だからな。分かる。吾にも分かる」
「えぇ……いえ、まぁ、楽しいならそれでいいんですけど……」
そう言って肩を落とすカーマに、メルトは、
「保護者役も大変そうね」
「……代わります?」
「絶対にイヤ」
「ふふっ……力強い拒否をどうも。殴っていいですか?」
「オオガミにツケで」
「分かりました。合流したらマスターを一発殴っておきますね」
容赦のない理不尽がオオガミに降りかかるのだった。
バラキーの出生は諸説ありますけどとりあえず越後で。マテリアルに出生があったら教えてくださると幸いです。