「それで、お二人はいつまでいるんですか」
「ん~……どうしようかしらね」
「今は帰ってもそんなに喜ばれなさそうなんだもの」
茶屋で大福を食べながらそう言うエウリュアレとメルトに、カーマは呆れた顔でため息を吐く。
「嫌われてる訳じゃないんですから戻ってもいいんじゃないですか?」
「嫌われてなくたって、令呪まで使われたら流石にすぐ戻る選択肢なんて無いわよ。もうちょっと遊んで帰るわ」
「私は別に、すぐ帰っても良いのだけど……どこにいるのか知らないのよね」
「そうですか……まぁいいですけど。それで、どうするんです? 食べ歩きにしても資金はあるんですか?」
「あら、私が持ってるに決まってるじゃない。マスターの資金は私のものだもの。むしろあっちの方が大変じゃないかしら」
「……今ごろ大騒ぎですよ確実に」
カーマは今ごろ嘆いているだろうオオガミを想像して内心笑いつつ、
「それじゃあ、しばらくは食べ歩きで?」
「ふらふらとしながらそのうち帰るわ。その頃には向こうも探し始めるでしょ」
「随分と余裕ですね……」
「余裕もなにも、そうしないはずないもの。それに、私たちがいて休めないのなら、今のうちに休んでもらうだけよ」
「今のうちに取られるとか考えないんですね」
「……私以外の魅了が効かないのに心配する必要があって?」
「あ~……心配する要素皆無ですね。というか、魅了が効かないとか初めて聞いたんですけど……というかそれ、私のも効かないんじゃ……」
「試してみれば?」
「……今度そうします」
余裕の表情の理由に納得したカーマは、空いた皿を片付けて貰いつつお茶を飲み、
「そういえば、どうしてバラキーじゃなくて私の方に来たんですか?」
「あぁ、それはあれよ。強制帰還させられないようにね」
「アビゲイルがやってくるからって言って、わざわざ隠れたくらいだもの。悪気はないと思うけど、今だと悪手ね」
「あぁなるほど。意外と御しきれてないんですね。てっきりエウリュアレさんならやっているものかと」
「手に終えなくなってきている部分はあるからなんとも言えないわ。でもまぁ、かわいいものよ?」
「……どうなっても一生言ってそうですね」
「エウリュアレにはゴルゴーンっていう前科があるから。実際に言うわ。死の間際くらいに」
「ちょっと。何ふざけたこと言ってるのよ」
「大体あってるじゃない」
「それはそれ、これはこれよ」
そう言って、ワーキャーと言い合いになる二人。
カーマは楽しそうに笑いながら、
「これはこれで楽しそうですね」
と言って、眺めているのだった。
急いで帰らない焦らし戦法。オオガミは不安になる。