「むぅ……最近マスターさんもエウリュアレさんも構ってくれないわ」
そう言って、頬を膨らませるアビゲイル。
バラキーは串団子を食べながら、
「まぁ、それは仕方がないというかなんというか。吾としてはひたすらに面倒だと思うのだが、カーマ曰くあれも『愛』だそうだ。愛とは何か、等と聞いても、カーマにははぐらかされるからな。吾には預かり知らぬところよ」
「そう……じゃあカーマさんなら何か知ってるかしら」
「さてな。カーマは甘味を探しに行くと言ってどこかへ行ってしまったからな。どこにいるのかもさっぱりだ」
「そんな……じゃあ私はどうすればいいのかしら」
「何もせずともよいと思うが……」
そう言って、バラキーがアビゲイルに視線を向けると、どこか暗い顔をしているのに気付く。
「――――そうだな。吾と一緒に茶屋巡りでもするか。マスターから貨幣は貰っているから、問題なかろう」
「意外とちゃんとしているのね。てっきり鬼らしく略奪とか言うのかと思ったわ」
「……それをしたら殺されかけてな……以来やってない。反省しないとか言ってる場合じゃない……吾、
「……良くわからないけど、とにかくとんでもないのはわかったわ。何をされたのか聞かない方が良さそうだもの」
「くはは。知らぬ方が良いこともある事を知ってるなら問題なかろう。うむ。様々な人間と接しているうちになんとなく吾も変化している気がするが、あえて気にするまでもないな。少なくとも今の吾は変わらぬし」
「そうね。今のままでいいと思うわ。バラキーが悪い人になったら、私、耐えられそうにないもの」
「……吾、別にいい人でもないと思うが」
「そうね。そのままのバラキーでいてほしいわ」
そう言うアビゲイルに、何か不穏な気配を感じたバラキー。
そして、ため息を吐くと、
「吾はなりたい吾になるだけだからな。うむ。小難しい話をしすぎて吾頭が痛くなってきた。何か食わねばだな。うむ。行くぞアビゲイル。吾と共にいざ新たなる甘味を求めて!」
「おー!」
そう言って、元気良く二人は立ち上がり、美味しそうな店を探して歩くのだった。
そんな二人を、少し離れたところから見ていたカーマは、
「……これ、同じことをしてますし、素直に一緒に行けば楽だったんじゃ……あぁいえ、でも、それだとサプライズにならない……いや待ってください。そもそもサプライズする必要なくないです……?」
そう呟きながら、悶々と悩んでいるのだった。
最近達観しつつあるバラキー。もっと見た目相応の事言って……?