「……子守り状態ですか?」
「分かんないけど昨日からずっと離してくれない。トイレの時以外離れてくれない」
「そうですか……うん?」
いつも通りの食堂で、厨房の中から違和感に声をあげるカーマ。
その視線の先は、いつもとは違い食堂から厨房を覗き込んでいるオオガミと、彼にくっついて離れようとしない、何故か嬉しそうなエウリュアレ。
「……トイレの時以外一緒なんです?」
「うん。ちなみに逃亡を図ったら先回りされてた」
「え、こわ……全力じゃないですか」
「ちなみにこの話をすると腕の力が強くなって苦しくなる」
「……これはあれですか。愛の女神として試練与えた方がいいヤツですか」
「一時的に離す手段はないですか」
「私、死にたくないので。だって二人とも、透明化しても互いを見つけるじゃないですか」
「まぁ、何度かイタズラされたしね?」
「それで対応できるのもどうかと思いますが、今は保留します。なのでまぁ、既に私にどうにか出来るレベルを越えてるんです。今も射殺しそうな目で私の事睨んでますし。別段マスターを取るつもりはないので落ち着いてもらえます?」
カーマがそう言うと、腕にこもっていた力が抜け、なんとなく先程よりは優しい目になるエウリュアレ。
オオガミは苦笑いをしながら、
「とりあえず、今はこんな感じ。二人きりの時以外全く喋ってくれないのがめちゃくちゃ怖いんだけど、それ以上にお菓子が作れないのが痛手。なんで、例の高カロリー爆弾なお菓子じゃないなら作ってくれるとありがたい。ちなみに例の高カロリー爆弾なら八つ裂きにするって言ってた」
「全く洒落になってないんですけど。やるって言ったらやるじゃないですか確実に。今の精神状態絶対摩耗しきってますよね。正直以心伝心で理解できるだけで喋ってない説ありますけど」
「……それだと精神死にかけが二人ってことになるけどそれでもいいのかな?」
「……医務室へいくことをオススメします」
「うん。今のところ全員に同じこと言われてる」
「じゃあなんでこっち来たんですか……言っておきますけど、厨房には入れさせませんよ。それに、今日の私はお菓子じゃなくて普通に料理です」
カーマそう言うと、オオガミは首をかしげながら、
「あれ、倉庫の中身無くなってる?」
「いいえ? ただ、私が使いすぎてるので、今はバラキーを使って補填しているところです。まぁ、私のお菓子を9割食べているのはバラキーですし」
「なるほど……今度同じことをしてみるか……」
「そっちは少数だから元々足りてるじゃないですか……そう言うことをして暴動が起こる方が嫌なのでやめてください」
「むぅ……じゃあ、エウリュアレが飽きたらまた作り始めるかな」
「えぇ、そうしてください」
そう言って、カーマはオオガミを追い返すのだった。
可愛く表現しているが、要するに爆発寸前の爆弾状態のエウリュアレである。
何故こうなったか? ギリシャは愛が重い。つまりはそういう事だろう。たぶん。きっと。おそらく。