「……なんですかあの二人。何かあったんですか」
「ん? あぁ、昨日ちっとあったらしい。まぁ、マスターが頑なに口を割らんから詳細はわからんが」
「そうですか……いつもより三割増しでくっついてますね」
食堂でそう話すカーマとノッブの視線の先には、いつもよりベッタリとくっついているオオガミとエウリュアレ。
ただでさえいつもくっついているのだが、今日はエウリュアレのテンションがいつもより高く感じて、圧倒的に目の毒だった。
「う~む、本当に何があったんじゃろ。BB知っとるか?」
「あ、私です? いえまぁ、知らないこともないですけど……言ったら聞いた相手含めて記憶を失うまで殴り続けるって脅されてますけど、それでも聞きます?」
「遠慮しときます」
「言ったら儂が撃ち抜くわ」
「そっちから聞いてきたのにどうして脅されてるんでしょ……」
「日頃の行いだろ。吾知らんけど」
容赦なく言葉のナイフを突き立て、ティラミスを食べるバラキー。
BBはそれを聞いてどこか悲しそうにしながら、
「私、そこまでのことしましたっけ……」
「ルルハワ事件」
「エンドレス同人誌生活」
「あれは満場一致で良イベントだったでしょう!?」
「ん。まぁ、儂も大活躍だったしそれは納得じゃな」
「吾も大活躍だったしな。何より暴れられた」
「私の中ではただの小旅行だったんですけど。何もなかったんですが」
「カーマさんはいませんでしたしねぇ……」
「なんですか。妙な含みがありましたよね今」
「そんなことないですよ。えぇ、全く」
そう言って、ノッブに淹れてもらった緑茶を一口飲むBB。
すると、カーマの隣にやって来たメルトが、
「あの二人の状況を説明すればBBを退去させられるって聞いたのだけど」
「は? そんなこと誰も言ってないですけど」
「言ってた」
「言ってましたね」
「言っとったぞ」
「薄情ものですね!?」
秒速で売られたBBは半泣きで抗議する。だが、誰もそこには触れず、二人はメルトに目を向ける。
「あら、意外と興味あるのね。じゃあいいわ。教えてあげる」
「や、やめてくださいってば!」
「無視して続きを」
「聞く耳持たんでいいぞ」
「BBに辛辣だな……吾別に興味ないのだが……」
「バラキーしかまともなのがいないってどういうことですか……!」
嘆くBBに、しかし止まらないメルト。
「簡単よ。昨日休憩室で、寝かけてたエウリュアレがオオガミに『好き』だとか言って、その後エウリュアレが起きてから距離を取ってたのに、その事を思い出したエウリュアレが開き直って今に至るわ。ちなみにオオガミは未だに飲み込めてなくて笑顔が凍ってるわ」
「はぁ~……そうですかぁ……それ面白くないヤツじゃないですか」
「む。この前告白されたんじゃなかったのか……? 名前呼ばれただけだったか……? ふむ。まぁ、冗談だと思ってた可能性はあるな……」
「残念です……こんな情報でBBさんがお亡くなりになるな――――」
ヒュンッ、と風を切る音がして、次の瞬間には後ろに何かが刺さる音がする。
そちらに視線を向けてみれば、不思議なことに壁に矢が刺さっていた。
「……狙われてます?」
「儂もだなぁ……未だかつて見たことがないレベルの怒り顔なんじゃが。無理。逃げるわ」
「あ、ノッブズルくないですか!?」
そう言って逃げ出したノッブだったが、食堂唯一の出入り口の前で後頭部を射ぬかれ、動かなくなる。
カーマは瞬時に子供のサイズになり当たりにくくし、BBは邪神の力を使って門を開こうとするが、
「あ、あれ……? 開けないんですが……?」
そう呟きながら視線をエウリュアレに向けてみれば、そこには笑顔でこちらを見ているアビゲイル姿が。
周囲に目を向けてみれば、不思議なことにメルトとバラキーを除いた自分達とアビゲイル、エウリュアレ以外に誰もいない。
そう、オオガミすらもいなかった。
「さて、それじゃあ刑は執行ね。メルトとバラキーは許すけど、残りは始末するわ。一週間はベッドの上よ」
「うっわマジギレじゃないですか。そっちの土台とか聞いてないんですけど……!」
そう言いながら、BBとカーマは必死でその場から逃げ出すのだった。
突然のホラー。ちなみに、ノッブ、BB、カーマが異界送りにされたタイミングは矢が飛んできた辺り。食堂では三人とエウリュアレが突然寝てアビゲイルが消えてる感じで。
困ったら邪神のせい。強制睡眠と夢を繋げるのは大好きですよたぶん。アビーの邪神レベル上がってんなぁ