「はぁ……どうしてこいつはこうものんきなのかしら」
「肝心なときはしっかり動いているからいいんじゃない? 何事にも休息は必要よ」
そう言って、オオガミに抱き着きつつ不敵に笑うエウリュアレと、占領されてどこか不満そうなメルト。
すると、オオガミが寝返りをうち、そのまま腕の中にスッポリ入ったエウリュアレを抱き締める。
それを見ていたメルトは、足だけをラムダのようなトゲの無い形にし、背中をくっつけて寄り添う。
「ふふん。不器用だから抱きつけないって言ってもね、こういうことは出来るの。バカにしないでちょうだい」
「あら、誰もバカになんてしてないわ。というか、なんでそう言うのを本人が起きてるところでしないの」
「白鳥が弱味を見せていいと思ってるわけ?」
「……手遅れじゃない?」
「ちょ、そういうこと言う!?」
もぞりと動くオオガミ。
二人はとっさに口を押さえ、息を殺す。
そして、オオガミが起きないのを確認してから、
「もう威厳なんてほとんど残ってないんだから素直にアルテミス並みのデレデレになっちゃえばいいのに」
「絶対イヤ。お断り。あんな四六時中ベタベタしてるようなのにはなりたくないわ。オケアノスで見たんでしょ? あれと一緒にしないでくれる? というか、あんなののエッセンスが入ってるとか想像したくないわ……」
「……既に影響受けまくってるのに」
「う、嘘でしょ……!? 信じないわ。あんなになってるなんて信じないわ……!!」
「信じなくてもいいけど、証拠映像はBBが持ってるから」
「今すぐ壊しにいきたい……けど、対サーヴァント用の結界が張られてるから出れないのよね……」
そう言って、扉を睨むメルト。
エウリュアレは呆れたようにため息を吐きながら、
「驚くことにアビーの門も防がれてるのよね。不思議だわ」
「ここ、夜だけは要塞染みてるわよね……どれだけ狙われるのよ……」
「まぁ、人理最後は伊達じゃないし。それに、こんなに可愛いマスターですもの。皆欲しがるに決まってるでしょ?」
「皆って……誰かしらね」
「少なくとも寝ているうちが一番危ないのだから仕方の無いことよ」
「でも、オオガミに何かあったら結界も解除されるんでしょ?」
「イベントには無力だもの。仕方ないわ」
どんな強固な守りもイベントの前には無力。
そう思い頷くメルトは、
「その一瞬で色々仕掛けてくるヤツいるわよね」
「あれは狂人だから気にしちゃダメよ」
ストーカー及び予備軍を思い浮かべながら、メルトは遠い目をするのだった。
ストーカー及び予備軍が恐ろしすぎるんですよねぇ……小型カメラのオンパレード……恐怖ですよこれは。