「マスター。本を借りに来ましたよ~……って、なんですか。寝てるんですか」
「そうよ。だから静かにして」
エウリュアレに言われ、静かにするカーマ。
エウリュアレに膝枕をされたまま寝ているオオガミを横目に、持っていた本を机に置きつつ、
「寝てるのを見るのってなんだか珍しいですね。大体起きてるので」
「そうね。起きるのは早いのに寝るのは遅いもの。不思議よね」
「不思議なのは貴女がこの部屋に寝泊まりしてる方なんですが。ベッドあからさまに特注品じゃないですか。この部屋だけおかしくないです?」
「まぁ、ある種の結界らしいから、当然よね。そこのドアと、あともう一ヶ所からしか出入りできないし」
「……ドア、一つしかないと思うんですが」
「秘密通路があるのよ。ほとんど使われないけど」
「普段使いの秘密の通路とか秘密である必要ないじゃないですか。緊急時に使うから秘密の通路なんです」
やれやれ。と呆れたように首を振るカーマに、エウリュアレは微笑みながら、
「作った本人達もそれに気付いて使わなくなったわ。でもまぁ、逃走経路として作ってあるから、時々逃げてくるけど」
「なんですかそれ……というか、どこに繋がってるんですか」
「それはちょっと言えないわ。私はともかく、マスターが気に入っているのだもの」
「……そうですか。貴女も色々大変そうですね」
「いいえ、そっちこそ。バラキーのお世話を任せてしまってごめんなさいね。これからもよろしくお願いするわ」
その言葉に、借りていく本を選んでいたカーマの手は止まり、
「バラキーと、何かあったんですか?」
「いいえ? 私は何も。ただ、バラキーがカルデアに来てから一緒にいたってだけよ。気付いたら離れてたし。代わりにアビーがついてきてたけど、最近は貴女と一緒でしょ? だから、お疲れ様」
「……そうですか。まぁ、それならそれでいいですけど」
「えぇ。気にしないでしょ? あぁでも、一つだけ」
そう、真剣な眼差しで見てくるエウリュアレに、カーマは息を飲みつつ、
「バラキーは食べている間は何してもわりと怒らないから遊ぶならその時よ」
「なるほど食事中でしたかそれは盲点でした。次からそうします」
そう言って、互いに親指を立てていい笑顔をする二人。
そして、カーマが本を選んで出ていくのと入れ替わるように目を開けたオオガミは、
「カーマに変なこと教えないで」
「ふふっ、無駄な争いは起きないと思うけどね。なんだかんだバラキーも心を許しているし」
そう言って微笑む彼女に、オオガミはため息を吐くのだった。
バラキーはおもちゃ扱いされてる不思議……でもあまl、かわいいのでオッケーですね?