「あ、マスター。今日は姉様はいらっしゃらないですか?」
「いないよ? というか、帰ってきてからエウリュアレもメルトも周回に行ってくれてる」
「そうですか……仕方ないですね。じゃあ代わりに付き合ってください」
「え……あぁ、うん。良いけど」
アナに言われ、特に考えず了承するオオガミ。
そうしてついていった先には、椅子に座ってのんびりとしていたエレシュキガルとカーマ。
「あら、遅かったじゃない……って、ままま、マスター!? どうしてここにいるのだわ!?」
「暇そうにしてたので。姉様がいない間は安静にさせておけと言われていますから」
「ちょっと待ってアナ。それ初めて聞いたんだけど」
「マスターには言わないように言われてますから」
「今思いっきり言ってるんですが……いえ、私は気にしませんけど……」
呆れたようにため息を吐くカーマと、顔を赤くして慌てふためくエレシュキガル。
アナは首をかしげながら、
「はて。アビゲイルさんが見えないようですが……」
「あぁ、彼女ならすぐ来ますよ。頼んでたものを回収してもらいにいってただけですから」
「頼んでいたもの、ですか?」
アナがそう言って首をかしげると、カーマの隣に門が開き、アビゲイルが出てくる。
「もう! カーマさんったら、こんなに熱いだなんて聞いてないわ!」
「いえ、オーブンに入れてたんですから熱いに決まってるでしょう? 何言ってるんですか」
「はっ、それもそうね……どうしてそう思わなかったのかしら」
首をかしげながら、アビゲイルが机の上に置いたソレは、とても甘い香りを放つ美味しそうなアップルパイ。
カーマの口振りからして、安心と信頼のカーマ製だと予想出来た。
「それで、アナさんは……いらっしゃるようだけど、どうしてマスターも?」
「暇そうでしたので」
「なら仕方ないわね」
「待ってアビー。どこに仕方ない要素があったの?」
なぜか納得するアビゲイルに突っ込むオオガミ。
すると、アビゲイルは不思議そうに、
「だって、エウリュアレさんに安静にしていなさいって言われたんでしょ?」
「何で広まってるの!?」
「だって、エウリュアレさんがみんなに言っているもの。暴れさせるなって」
「凄い人聞きの悪いこと言われてない?」
「だってマスター、それだけしないと休まないもの」
「うっわぁ、マスターがブラックだからブラック周回とか笑えますね。アップルパイ食べます?」
「あ、それはいただきます」
そう言って、オオガミは席に着き、隣に座られたエレシュキガルは想定外の事態に顔を赤くしながらテキパキと食べる準備を進めるのだった。
今更ですけどマナプリ足りねぇ……種火周回でも限度はあるんですよ……!