「ふぅ……危ないところだったわ」
「あらエウリュアレ。ここまで逃げてきたの?」
そう言って、起き上がってベッドに腰かけるメルト。
エウリュアレは椅子に座りつつメルトの方を向くと、
「なんとか逃げられたわ。マシュの動きも日に日に練度が上がってるわね」
「恐ろしいわね本当に。彼女、気付くと強くなってるわよね。性能じゃなく、技術や戦術的な意味で」
「まぁ、オオガミを捕まえるために創意工夫をしてるみたいだし……強くなるのも自然よね」
「むしろそれだけしないと捕まらない彼もどうかと思うのだけど」
「最終的には物量が正義よね」
「エルキドゥの鎖をその中に入れて良いのかは悩みどころだけども」
パタパタと足を振りながら話すエウリュアレ。
メルトは苦笑しつつも、
「でも、物量が驚異で助かるわ。まだ一般人だと思えるもの」
「神話の一般人に近いかもしれないわ。これだけの苦難を乗り越えてきたのだもの」
「そう言うと、一般人じゃないわね」
「鋼鉄の精神?」
「それだけじゃなくて。私たちがいるとはいえ、人類の命題を突破してるのよ? あといくつか戦うとは思うけど、それでもやっぱりおかしいわよね」
「女神口説こうとしてる男に普通な人がいたかしら」
「……それもそうね。口説かれる女神は癖が強いけど」
「あら、自覚あるのね」
「当然。むしろ無いの?」
にっこりと微笑む二人。
そんな状況の中、何も知らずにオオガミが入ってくる。
「ゴーレムとか三ターン厳しいんですけど……どうやって周回するかな……」
「そこの暇そうな女神を連れていけば?」
「またラムダ? いつになったら貴方の夏は終わるのかしら」
「うぐっ……いや、待ってメルト。まだ予定は未定。可能性はあっても確定じゃないわけです」
「あら、代案があって?」
「……無いですけども」
そう言って、考え始めるオオガミ。
エウリュアレはため息を吐きながら、
「どうせ『孔明が~』とか、『ネロが~』とか考えてるんでしょうけど、結局あの二人も好きで協力してるのだから、気にしなくて良いの。嫌なら本気で逃げるもの。そうしないのだから良いってことよ」
「あぁ、なるほど……」
「それ、誤解が生じるような……いえ、なんでもないわ。困るのは私じゃないもの」
「えぇ。だからほら、ラムダを連れていったら?」
「……そこに繋がるのね」
「ふむふむ……じゃあ考えるかな……」
「このマスターも単純ね……」
エウリュアレの誘いに乗ったオオガミに、メルトはため息を吐くのだった。
バーサーカーは周回が大変なんですよねぇ……ラムダを運用するならやっぱり孔明先生は外せないなぁ……
次のデート回
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ