「はい、マスターさん。食べてくださいな」
「ありがとうアビー」
そう言って、クッキーの入った袋を受け取るオオガミ。
すると、隣にいたエウリュアレが手を伸ばし、
「私もいただこうかしら」
「ストップエウリュアレ」
即座にオオガミに止められる。
エウリュアレが不思議そうに首をかしげると、
「貰った本人より先に食べるのもどうかと思うよ?」
「……仕方無いわね。おとなしく待つわよ」
「あ、ごめんなさいエウリュアレさん。ちゃんとエウリュアレさんの分もあるの。早く渡さなくてごめんなさいね?」
「……謝る必要なんてないわ。というか、謝られると、まるで私がお菓子に目がないみたいじゃない」
「えっ」
「え?」
オオガミの反応に、思わず首をかしげるエウリュアレ。
アビゲイルは口を押さえて、私は何も言っていないと態度で表していた。
「いや、今までの態度を見ていて疑問に思わない方が無理無い?」
「あら、私はまだ何も言っていないのだけど」
「しまった誘導かっ」
「盛大な自爆よ。でも良いわ。特別に、私への奉仕で許してあげる」
「ふむ……で、何をすれば良いの?」
「久し振りにパフェ食べたいわね。チョコレートのやつ。最後に食べたの何時だったかしら」
「いやぁ、憶えてないね。でもなんとなく覚えてるから作ってこよう。クッキー食べ終わった後で良い?」
「構わないわ。私もいただくし。ありがとうねアビー」
「い、いいえ。どういたしまして。喜んでもらえたなら嬉しいわ」
そう言って、エウリュアレはアビゲイルからクッキーを受け取ると、先にオオガミが食べるのを待ってから食べ始める。
そして、先に食べたオオガミは、
「……うん! うまい! 流石アビーだ!」
「えへへ……! ありがとう、マスターさん」
「えぇ、本当に美味しいわ。でも……どこかで食べたのよねぇ……これ……」
そう言って、考え始めるエウリュアレ。
すると、アビゲイルは楽しそうな笑顔を浮かべながら、
「カーマさんがお手伝いしてくれたの! とっても助かったわ!」
その一言を聞いて、硬直するエウリュアレ。
そして、ゆっくりとアビゲイルの方へ顔を向けると、
「ねぇ、アビー? 作ってる途中で、カーマが何か混ぜ込まなかった?」
「えっと……『秘密の調味料です』と言って、何かを入れていたわ。中身は分からなかったのですけど、でも、美味しくなったからいいやって思って気にしなかったのだけど……ダメだったかしら……」
「いいえ、もう大丈夫よ。貴女は悪くないわ。でもごめんなさい。少し用事が出来てしまったの。少し席を外させてもらうわ」
「え、えぇ……行ってらっしゃい……?」
「えぇ、行ってきます」
そう言って、食堂を出ていくエウリュアレ。
扉が閉まる直前、弓を展開していた気がするが、気のせいだろうと二人は思うのだった。
だが、オオガミは念のためと思い、
「アビー。他の誰かに配った?」
「いいえ? マスター達が最初よ?」
「よし。じゃあ残っているヤツ貰って良いかな。代わりに一緒に新しいのを作ろう」
「え……でも……」
「大丈夫。損はさせないよ」
「……まぁ、少し失敗してしまったのもあったから、新しく作れるなら……お願いしても良いかしら」
「請け負った。よし、どんどん作っていこう」
そう言って、オオガミは厨房に向かうのだった。
カーマのお料理教室がただで済むわけもなく。しかし、サーヴァントすら太らせられるアレ。着火材に便利なのですね……そして彼女なら何度でも流用する。確信できる。
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王道のエウリュアレ
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メルトしかあるまい
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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