「ふふっ。だんだんお菓子作りも楽しくなってきたわ!」
「はぁ……それはいいですけど、なんで私が講師なんですか。普通厨房メンバーじゃないんです?」
「バラキーにお勧めされたの。とってもお上手だって」
「……良からぬ噂をばらまいてますねあの鬼」
調理のために身長を伸ばしたカーマは、そう呟いて完成したばかりのクッキーを一口で食べる。
アビゲイルがそれを不安そうに見ているのに気付き、
「……まぁ、悪くないですよ。ちょうど良い焼き加減です」
「! 良かったわ、ちゃんと出来てたのね!」
「まぁ、焼けた瞬間に分かってたでしょう?」
「それはそれよ。食べて貰うまで実際にはわからないもの」
「そう、ですねぇ……作っていればなんとなく分かりますけど、今はまだ分からなくて普通ですね。一ヶ月もやってれば慣れますって」
「むぅ……やっぱり、練習は大事なのね。頑張らなきゃ」
「うむ。吾も応援してるぞ」
「どこからわいてきたんですか」
どこからともなく現れ、断りもなく出来立てクッキーを食べているバラキーの頭を軽く小突くカーマ。
バラキーは不満そうな顔をしながらクッキーを飲み込むと、
「何をする」
「勝手に食べないでください。貴女、何も考えずズバッと言うんですから」
「ふん。言葉を濁しては伝わるものも伝わらんだろう。故に今も素直に答えようではないか」
「そうですか……で、感想は?」
「うむ。大変美味だが、吾としてはもうちょっと甘くても良いのではないかと思った。生地の味が強い感じだな」
「貴女がひたすらに甘いのが好きなだけでしょうが」
「全く間違ってないな! 甘いの食べたい!」
「これ持って向こうで静かにしていてください!」
そう言って、カーマは袋詰めされたクッキーを渡し、バラキーをテーブルに行かせる。
それを見ていたアビゲイルは、少し羨ましそうに、
「カーマさん、なんだかお姉さんみたいで羨ましいわ。私もなれるかしら」
「はぁ? 何をバカなことを言って……いえ、自分のやってることを考えたら確かにそうですね……? でもまぁ、私みたいにならない方が良いと思いますけどね。人間なら」
「そういうものかしら」
「そういうものです。そのうち分かりますよ」
そう言って、使った調理器具を洗っていくカーマ。
アビゲイルも隣に立ってその手伝いをする。
遠目から見ると、カーマが背の高い姿だと言うこともあり、年の離れた姉妹か従姉妹に見えないこともない。
「……まだ作ります?」
「ん~……これ以上は食べられそうにないわ」
「そうでもないですよ。あそこの鬼とか、わりとなんでも食べますし。失敗作でも渡しておけば静かです」
「あはは……でも、本当に大丈夫。また明日お願いしますね。カーマさん」
「……まぁ、暇だったら教えますよ」
そう言って、カーマはアビゲイルから顔を隠すのだった。
カーマのお料理教室。アビーをメインで書きたいなぁって思ったらカーマが主張してきたのでお料理教室。きっとカーマも料理上手(願望
まぁ、あらゆるニーズに応える愛の女神ですし、こういう部分も完璧ですよね……? でも、アビーより目立ってるのなんなんです……?
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技術部二人と散歩でもいいのよ
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いいから全部だ