たった一つの望み   作:#1106

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原作売ってしまって流れを全然思い出せない・・・!


補充要員カティア・ヴァルトハイム

エンジンの音がする。戦術機の。

けど、聞きなれた音と違う。これはーーーー

 

目が覚めた。栗色の髪のポニーテールの少女。初めて見る天井だ。ゆっくりと体を起こす。

そこで初めて気付いた。この部屋にいるのは自分だけでなく、2人の女性がいると。

西ドイツのものではない軍服を着ている。

唇を真一文字にし、鋭い視線を向ける眼鏡をかけた少女と、彼女と対照的に穏やかな顔をした金髪の女性。

「目が覚めたか」

「はい。・・・ここは?」

「気付いていると思うが、西ドイツではない。東ドイツの戦術機基地だ」

「助けていただいて、ありがとうございます!」

すぐお礼を言う少女。そこからは純粋さが伝わってくる。

 

そこまでは良かった。しかし、ここから少女がーーーカティア・ヴァルトハイムが思いもよらぬ発言をすることで、東ドイツの運命は変わる。

 

 

 

 

 

ブリーフィングルーム。作戦の説明や部隊の動きを事前に説明し、作戦行動を円滑にするための話をする部屋。そこに、中隊長アイリスディーナによって集められた第666戦術機中隊のメンバーが待機していた。なんでも、補充要員の紹介をするそうだ。

一体どんな経緯で、どんな理由で入ってきたのかは知らないしテオドールにとってはどうでもよかったが、ここは軍隊。逆らうことは出来ない。まして、先日の会話がある。彼女が国家保安省の犬であれば、即密告されてしまいかねない。自分が優秀な衛士だと自惚れるつもりも、だからといって粛清の対象にならないなどど間抜けな考えはしない。そうでなければこの国では生き残れない。

(あいつの正体を見極める必要がある・・・)

テオドールは考え込んでいた。一体何故あのようなことを言ったのか。なぜレコーダーの初期化の方法を知っていたのか。思考は堂々巡りを続け、答えは出ない。

 

そこで、中隊長であるアイリスディーナと中隊付政治将校のグレーテルが入室してくる。そして、その後には見慣れぬ栗色の髪をポニーテールにした少女が続く。彼女が補充要員なのだろう。

立ち上がって敬礼を交わし、着席。紹介を待つ。

「彼女が、補充要員のカティア・ヴァルトハイム少尉だ」

そう紹介された少女は、気を付けの姿勢で待機している。アイリスディーナの説明が終わると、自己紹介を始める。

中隊の面々の反応は様々だった。テオドールやシルヴィアのような無関心、ヴァルターの無表情、アネットのような少し明るさを帯びた表情・・・。

補充要員の紹介が終わった。解散し、自由時間なので各々がバラバラに解散する。

 

「あの、すみません」

「・・・なんだ」

考え事をしていて、テオドールはその場に残っていた。そこに、補充要員であるカティアが話しかけてきたのだ。

「あなたが、私を救助してくださったんですよね」

「ああ」

「ありがとうございました!」

勢いよく頭を下げるカティア。しかし、テオドールの反応は冷たい。

「ああ」

そう短く返すと、立ち上がって部屋を出ていった。カティアに、彼に話しかける勇気はなかった。

あまりにも、はっきりと拒絶の意志があったからだ。

悲しげに目を伏せるカティア。

 

 

 

 

そんな彼女を、アイリスディーナが静かに見ていた。




11/27 22:50 誤字の修正

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