シノが死に、その他大勢の人員が負傷、戦死した鉄華団。紆余曲折を経て、彼らはクーデリアの提案を採用し、IDを書き換えて「別人」になって今の逼迫した状況から逃れるべく行動していた。最後に残った僅かな希望。しかしそれ以外に、これ以上死傷者を出さずにラスタル・エリオンから逃れる道はない。
事務方のデクスターとメリビットが予め隠しておいた資金により、全体から見ると五分の一という少なさではあるが、資金もできた。皆が希望に湧いていた。この絶望的な状況から逃れられると。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
オルガ・イツカは倒れた。何者かから銃弾を受けて。
彼は夢を持っていた。目標を持っていた。しかしそれは叶わなかった。
周りの仲間が何やら叫んでいる。聞こえない。血が、命がだらだらと自分の体から流れ出ていくのを感じる。不思議と落ち着いている。自分を客観的に見ることができる。そのことに気づく。案外死ぬには時間がかかるんだなと思った。
「(死ぬのか・・・俺は・・・)」
朦朧とする意識の中、仲間とともに過ごした時間がフラシュバックする。三日月と初めてあったあの日のことを。阿頼耶識の手術を受けたことを。三日月のバルバトスが敵のMSをメイスで行動不能にさせた時のことを。
地球降下作戦での戦闘、その後のビスケットの死、三日月の叱咤、エドモントンでの会話と夕日が。
それだけではない。辛いこともあった。悲しいこともあった。けど、楽しいことも嬉しいことも確かにあったのだ。目標に向かって一生懸命になって動いたと、胸を張って言える。まぁそれもここで終わりだろうが。
「(すまねぇ・・・皆・・・)」
三日月に打ち明けた、「みんなでバカ笑いしてぇ」という夢。自分はそこに混ざることは出来ないのだと考えると。少し寂しい。
「(三日月・・・ユージン・・・昭弘・・・。あいつらは・・・鉄華団はこれからどうするんだろうな・・・その中に俺は・・・)」
そう考えると、胸に穴が空いたような悲しみに襲われる。
「(死にたくねぇ・・・まだ、夢は・・・叶えちゃいねぇ・・・!)」
何を考えても、数発の銃弾が体の重要な箇所を射抜いた後では、生きることなんて無理だ。
思考ができなくなっていく。死がゆっくりと、しかし確実に近づいてきている。
「(生まれ変われるのか・・・?俺は)」
振り絞るように、思考する。
「(もし生まれ変われるなら・・・・・・鉄華団の・・・全員で、夢を・・・)」
願望。しかしそれは叶わない。"今"死のうとしているのは自分ひとりだけなのだ。また寂しさに襲われる。
オルガ・イツカはそれを最後にぼんやりと考え、死んだ。
最初なんでこんなもんで。続けるかどうかすら決めてませんが、「ネタを取られるくらいならいっそ!」って感じで投稿してます。