天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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ドス古龍やバゼルギウスの参戦に世間が湧く中、ようやく下位のロアルドロスを狩っているノロマは私です!

オサナズチやアケノシルムよりロアルドロスの方が狩り易く感じるのはベテランハンターの性か……。





ユーちゃんとヤーパン2

 

 

 

 

 

「そしてここの部屋が倉庫でち。ここには色々物が置いてあるから、必要になったら取りに来るといいよ。」

 

ゴーヤの案内で鎮守府のいたるところを案内されるユー。

しかしその案内は意図的に特定のエリアを避けるように案内されており、そのことにはユーも気が付いていた。

それについてユーが質問すると、ゴーヤはそれは後でのお楽しみと誤魔化した。

 

 

 

 

 

何ともチグハグな建物、今まで鎮守府を見て回ったユーの率直の感想がそれだ。

全体的な作りはヤーパンの古き良き旅館を彷彿とさせる上品な木造建築であり、障子や畳を使用した部屋も数多く見られる。

ヤーパン特有の落ち着いた建築様式は、これから新しい住人となるユーの心も落ち着かせてくれるものだった。

しかし美しいのは表向きな場所だけだ。

人目に付きにくい部分や関係者以外入れない部屋などは素人目にも作りが雑であり、まるでハリボテである。

綺麗な部分と雑な部分がパズルのように組み合わさっており、まるで出来の悪いパッチワークのような印象を受ける。

この鎮守府はどうしてこんな妙な作りになっているんだろう?

 

「今案内出来る範囲は大体このくらいでち。それじゃそろそろいい時間だし、これからとっておきの場所に連れて行ってあげるね!」

 

ユーは疑問を抱くものの、質問をする前にゴーヤはユーの手を引っ張ってズンズンと広縁を進んでいく。

広縁から見える外の景色は徐々にオレンジ色に染まってきており、夕方になりつつあることが見て取れる。

やがて辿り着いたのは二枚の障子により閉められた部屋。

障子に映る陰から部屋に誰かいるのは分かるけど、誰がいるのかまでは分からない。

 

「それではお一人様ごあんなーい!」

 

ゴーヤの声と共に二枚の障子が内側から開かれる。

 

 

 

 

 

「「「「「「ユーちゃん!ユクモ鎮守府へようこそ~!」」」」」」

 

 

 

 

 

ゴーヤに押されて部屋の中に入ったユーを出迎えたのは、パンッという音と共に左右から飛んでくる紙吹雪とリボン。

畳張りの部屋の中央には大きな座卓が置いてあり、左右にそれぞれ狩娘達が座っている。

ユーと向かい側のお誕生日席に座っているのは提督のトモちゃんである。

 

「こ、これは?」

 

「これはね、ユーちゃんの着任のお祝い!ユーちゃんのためにみんなで御馳走を用意したんだよー!」

 

突然のことに戸惑うユーだが、その疑問に笑顔のトモちゃんが答える。

ユーが座卓に視線を向けると、そこには美味しそうな料理が所狭しと並べられている。

 

「ひょっとしてこれってヤーパンのおもてなし文化?」

 

「そうそうそれそれ!ユーちゃんおもてなし知ってるんだ!これはユクモ鎮守府のみんなからのユーちゃんへのおもてなしだよー!ユーちゃんの歓迎会!」

 

「ほらっ、早く座るでち。」

 

自分の歓迎会と言われて目をパチクリさせるユー。

ゴーヤはそのままユーの背中を押してトモちゃんの向かい側のお誕生日席に座らせた後、自分はトモちゃんの近くの空席に座った。

 

 

 

 

 

「さーて、それではユーちゃんの歓迎会をはっじまっるよー。まずは自己紹介から始めよっか!」

 

「はいはーい、イクなの!新しい潜水艦仲間が後輩になってくれて嬉しいのね。格好もイクとお揃いで嬉しいの!」

 

トモちゃんの提案に真っ先に反応したのは伊19ことイク。

青紫色の髪をトライテールにまとめた、立派な胸部装甲を持つ潜水艦娘。

格好は旧スク水一枚であり、今のユーと同じである。

イクはユーから見て左手前の席に座っており、片手には使用済みのクラッカーを握ったままである。

 

「しおいです、よろしくね!」

 

続いて自己紹介をしたのは伊401ことしおい。

小麦色の健康的な肌と茶髪のポニーテールが特徴的な潜水空母。

しおいはユーの右手前の席、イクの向かい側に座っており、彼女の手にも使用済みのクラッカーが握られている。

どうやらユーにクラッカーを鳴らしたのはこの二人のようであった。

 

「ウシシシシ、オトモ連装砲ノむるれんダ!」

 

「オトモ連装砲?」

 

次に自己紹介をしたのはイクの隣に座っている、首から三度笠を掛けた連装砲くん。

トモちゃんの服装とよく似た服を着ており、よく見れば笠のデザインもお揃いである。

だがオトモ連装砲という言葉に聞き覚えのないユーは首を傾げる。

 

「オトモ連装砲っていうのはねー、狩娘のお手伝いとしてハンターをやってる連装砲ちゃんや連装砲くんのことだよー。」

 

「ヨロシクナ!」

 

「ヤーパンでは連装砲までヤクトするんだ……。凄いですね、流石はブシドーの国。」

 

ここにいる全員がヤーパン?ヤクト?と頭にクエスチョンマークを浮かべているが、特に突っ込まれることはなく話は続いていく。

 

「同ジクオトモ連装砲ヲヤッテルヒラオカウラ。」

 

しおいの隣、むるれんの向かいに座っている金色をしたひょうたんのような物体が話し出す。

 

「ひらおかうら?……っていうかこれ連装砲なの!?」

 

まず謎の物体が喋ったことに驚き、そしてその正体が連装砲であったことに二度驚くユー。

 

「これってヒドイなー。ヒラオカはむるれんとコンビで働いているユクモ鎮守府自慢の連装砲ちゃんなんだよー。」

 

「ウララ、知識ナラ誰ニモ負ケナイウラ!」

 

これが連装砲ちゃん!?と呆気にとられるユー。

よく見れば露出している腕から中身が連装砲であると辛うじて分かるが、それ以外は全て金色に覆われており、初見でこれを連装砲と見抜くのは無理がある。

ましてやひょうたんの頭部には子供の工作のような雑な覗き穴が開けられているだけであり、中身が連装砲ちゃんか連装砲くんかどうかなんて見分けの付けようもなく、また表情が無いのだから何を考えているのかも全く読み取れない。

そもそもつるんとした頭部には、連装砲の特徴である二対の砲塔部分が見当たらない。

中身はとんでもないことになっているんじゃ……と、ユーは内心で恐れおののく。

 

「次は私の番ですね。秘書艦の大鯨です、よろしくお願い致しますね。」

 

ユーの内心などつゆ知らず、むるれんの隣の大鯨がぺこりと頭を下げる。

大鯨の服装はお馴染みのセーラー服にクジラエプロン姿ではなく、ピンク色の頭巾のような帽子と、同じくピンクの羽織に膝丈までのもんぺのような変わった服装をしていた。

 

「この服が気になりますか?これは撫子シリーズといってトモちゃんの着ているユクモノシリーズと並んでユクモの伝統衣装……だそうですよ。」

 

「ユクモの伝統衣装?」

 

「そう、このユクモに古くから伝わる装備なんだよー!」

 

なるほど、ヤーパンのカリュード地方にあるユクモなんですね……と、ユーは若干ズレたことを考える。

ユーの中ではドイツのバイエルン州のミュンヘンといったような感覚なのだろう。

 

「もう既に教えたけど、ここは空気を読んで自己紹介するね。ゴーヤだよ!」

 

ヒラオカの隣、大鯨の向かいに座ったゴーヤが笑顔で手を振る。

 

「そして私がトモちゃん!ユクモ鎮守府の提督だよー!」

 

最後に大鯨とゴーヤに挟まれた、ユーの対面のお誕生日席に座っているトモちゃんが両腕を広げて既に分かり切っていることを自慢げに言い放つ。

 

「私達ユクモ鎮守府はユーちゃんを歓迎します!それではユーちゃんどうぞ!」

 

「ダ、ダンケ!ユーです。まだ来たばかりで何も分からないけど、皆と仲良くなってここの文化に馴染めたらいいなって思います。よろしくお願い致します。」

 

ユーの自己紹介、それを狩娘達は笑顔と拍手で迎え入れた。

 

「さて、それでは前置きが長くなったけどそろそろ食べよっか。せっかくの料理が冷めちゃうからねー。」

 

トモちゃんがそう言うと狩娘達は胸の前で手を合わせた。

ユーもみんなが手を合わせたのを見て真似して手を合わせる。

 

 

 

 

 

「「「「「「「いただきます。」」」」」」」

 

「い、いただだきます?」

 

 

 

 

 

「久々のご馳走なのね!」

 

「もうお腹ペコペコでち!」

 

みんな思い思いの料理に手を付け始める。

山菜の天ぷら、ドスマツタケのお吸い物、サシミウオのお刺身、ガーグァのタマゴの茶碗蒸し、鎮守府の畑で採れた野菜のお漬物、ユクモ温泉たまご、特産タケノコの炊き込みご飯、デザートの白玉ぜんざい。

どれも美味しそうな和食のフルコースである。

しかしユーは食べようにもまごまごしたまま手を出さない。

 

「え、えっと……。」

 

「あれ?ユーちゃん箸使えないの?」

 

「……そうなんです。」

 

ユーの様子がおかしいことに気付いたしおいは、ユーが食べられない理由をすぐさま察する。

 

「気が利かなくてごめんなさい、海外の方には難しいですよね。フォークやスプーンもあるから大丈夫。テーブルマナーなんて気にしなくていいんですよ、料理はおいしく食べるのが一番です!」

 

そのやり取りを見ていた大鯨は立ち上がってキッチンの方へと駆け出していき、フォークやスプーンを手に戻ってくる。

 

「はい、こちらをどうぞ。」

 

「ダンケ。」

 

「いえいえ、それではどうぞ召し上がれ。」

 

ようやく使える食器を手にしたユーはおっかなびっくり目の前の料理に手を付ける。

 

「…………美味しい!」

 

「でしょー?大鯨の作る料理はすっごく美味しいんだよー!」

 

ユーは和食の味に目を輝かせ、パクパクと夢中で料理を頬張る。

そして自分で作ったワケでもないのに自慢げに無い胸を張るトモちゃん。

 

「このテンプーラっていう食べ物、外はサクサクしてるのに中はふんわり!こんなの初めて食べました!」

 

「天ぷらだけじゃないよ、こっちも食べてみてー!大鯨は本当に料理が上手なんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「ごちそうさまでした!」」」」」」

 

「ご、ごちそーさまでした?」

 

 

 

 

 

食事が終わり、再び胸の前で手を合わせる狩娘達。

ユーももう一度真似をして手を合わせる。

 

「はい、お粗末様でした!それでは私は後片付けと洗い物をしてるから、皆さんは先に行っていていいですよ。」

 

「えーっ?大鯨も一緒に行こうよ。」

 

「しおいの言う通りなのね、大鯨も一緒じゃないとつまんない!」

 

いつの間に持ってきたのか、お盆を片手にお椀の片付けを始める大鯨。

しかしそれに狩娘達が待ったを掛ける。

 

「でも時間が掛かりますよ。まだユーちゃんに紹介するとっておきがあるでしょう?」

 

「ダッタラオイラトヒラオカガ代ワリニヤッテヤルゾ!」

 

「ウラッ!?ボクモヤルウラ?」

 

「だったら、お言葉に甘えちゃいましょうか?」

 

「オウ、任セトケ!」

 

「ムムム……仕方ナイウラ。」

 

「それじゃあユクモ鎮守府の狩娘全員でレッツゴーだねー!」

 

オトモ連装砲達が家事手伝いを申し出たことにより、手持ち無沙汰になった大鯨。

そんな大鯨もメンバーに加えて、意気揚々と歩き出すトモちゃん。

 

「ほら、ユーも付いてくるでち。これから凄いものが見られるよ?」

 

「凄いもの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャーン!これこそユクモの名物、温泉だよー!」

 

「温泉、これが本物の温泉……。ヤーパンの文化として温泉が有名なのは知ってたけど、実物を見るのは初めてです。」

 

トモちゃんに連れて来られた先、そこにあったのは湯気の立ち昇る温泉。

 

「凄いでしょー?ユクモ鎮守府のある土地はなんと地下から温泉が湧き出てるんだよ!だからここでは源泉かけ流しの天然温泉が楽しめるんだー!」

 

「天然温泉?かけ流し?」

 

トモちゃんの説明でここに温泉が湧いているということは理解したものの、天然だとか源泉だとか知らない単語が出てきて首を傾げるユー。

 

「天然温泉というのはですね、成分を後から追加していない温泉のことですよ。温泉というのは簡単に言うと特別な成分が溶け込んだお湯のことなんです。その成分を人の手で足したものが人工温泉、最初から溶けているのが天然温泉になるんですね。定義上では水道水に入浴剤を入れたものでも温泉になるわけなんです、でもそんなのじゃ味気ないし風情もない。だからこそ天然温泉は人の手が入っていない自然そのままの温泉ということで人気なんですね。」

 

「かけ流しというのはお湯の再利用をしないことでち。施設の大きなお風呂では一度人が使ったお湯を機械で循環させて消毒したり加熱することで何度も使い回すこともあって、これを循環式って呼ぶんだ。でも使い回してると温泉の成分が減っていくし、加熱消毒でコストが掛かるし、何より使い古しのお湯ということで入る人はあんまりいい気分がしないでしょ?それに対してかけ流しは常に新しいお湯が供給されていて、お湯はずっと新鮮なままなんだ。当然水をたくさん使うけど、ここは地下から天然の温泉が湧き出しているからそのデメリットはあってないようなものでち!ユクモの温泉はいつでも最高の状態でち!」

 

それに対して大鯨とゴーヤが補足する。

 

「源泉かけ流しの天然温泉がある鎮守府なんてほとんどないんだよー!そしてそんな数少ない鎮守府が何を隠そうこのユクモ鎮守府なのだ!ユーちゃん、初めての温泉たっぷりと楽しんでねー!」

 

「さぁさぁ、イクと行くのね!」

 

「みんなでどぼーん! しに行こっ!」

 

「えっ?わわっ、水着が!?」

 

イクとしおいに手を引かれて温泉マークの描かれた暖簾をくぐるユー。

次の瞬間、今まで着ていた水着がタオルのセットに変化する。

一緒にくぐったイクとしおいの服装もタオルになっており、振り返ってみれば後から続いてきたゴーヤと大鯨の服も一瞬でタオルになっていた。

 

「驚いたー?これはユアミ装備っていうんだ。」

 

最後にタオル改めユアミ装備に身を包んだトモちゃんが現れる。

 

「このユアミもユクモに伝わる伝統的な入浴衣装で、カリュード諸島特有の早着替えのシステムと併用することであっという間に入浴準備が出来ちゃうんだ!その使いやすさからユアミはカリュード全ての鎮守府で入浴時に使われてるんだよ!ユクモの伝統衣装がみんなに認められてるなんてすごいよねー!」

 

再び自慢げに無い胸を張るトモちゃん。

 

 

 

 

 

「それじゃあみんなで一斉にどぼーん!」

 

「「「「どぼーん!」」」」

 

「ど、どぼーん……。」

 

 

 

 

 

トモちゃんの合図とともに一斉に飛び込むユクモの仲間達、飛び散る飛沫。

そして口ではどぼーんと言いつつも、恐る恐るゆっくりと湯に入るユー。

 

「あっ……!」

 

「どぉ?あったかいでしょ?気持ちいいでしょ?あったまるでしょー?」

 

「う、うん。凄くいい気持ち。でも……。」

 

「うん?どうしたの?」

 

初めての温泉に表情の変わったユーを見て、嬉しそうなトモちゃん。

しかし明るかった表情はすぐに消え、ユーは顔を曇らせる。

 

「こ、ここまでしてもらっていいのかな?」

 

「え?何が?」

 

「だってユー、まだ何もしてないんだよ?鎮守府になんの貢献もしていない。なのにこんなによくしてもらっていいのかな?ご馳走してもらって、温泉に入れてもらって、それにみんなすごく親切にしてくれて、ユーにそんな価値があるのかな?」

 

自分に自信が持てず暗く沈んだユー、トモちゃんはそんなユーを優しく抱き締める。

 

「ユーちゃんが活躍しそうだから、珍しい潜水艦だから、みんなそんな理由で親切にしたんじゃないんだよ。みんなユーちゃんがここに来てくれたことが嬉しい、たったそれだけの理由なんだ。ユーちゃんはもうユクモ鎮守府の仲間で、私達の家族なんだから!」

 

「家族?そっか、ユーはもうみんなのファミリアなんだね?」

 

「(ファミリア?家族だし多分ファミリーのことだよね?)その通り!そして家族を大切にすることに理由なんてある?ないよね!だから気にしなくていいんだよー!」

 

「ダンケ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とてもあったかい、それは温泉に入っているからだけじゃない。

こんなあったかい鎮守府の、あったかいファミリアのために頑張ろう。

そう心に決めたユーなのであった。

 

 

 







トモちゃん達の喋り方を再確認しようと思ったけどMHP3の公式サイト無くなってた。

Flashのサポート終わったから無くなってて当然だけど、すごく残念。(今更)

サイト無くなる前に喋り方確認しときゃよかった……。

そんなわけでトモちゃんとむるにゃん改めむるれん、そしてヒラオカの喋り方にはかなり捏造入ってます。

仕方ないね。




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