読者の皆さん、ハンター生活を楽しんでいますか?
巨大な相手を小さなプレイヤーが倒すカタルシス、新たな装備を手にする達成感。
ソロで遊ぶのもいいけど、みんなでワイワイ遊ぶと最高ですよね。
私ですか?当然私もたっぷりと楽しんでいますよ!
カービィハンターズZをな!!
今回は山無しオチ無し回だが、意味無し回ではないと俺は信じている。彼らも俺を信じている。
「天龍ちゃん、虫あみとピッケルは持ったわね!!行くわよぉ!!」
何だか妙にテンションの高い龍田に前回と同じように拉致されて、連れて来られたのはさっきと同じ海域。
龍田にアイテム屋で採集道具をたくさん買っとけって言われたからさっきのクエストの報酬を使って買ったんだけど、元々の報酬が少ない上に1オチしたせいで更に報酬は減ってるんだよなぁ。
龍田は初のお給料なんだから全部貰うべきだって言って報酬を分けてくれたから数本ずつ買えたけど、ピッケルと虫あみ数本買っただけでオレの懐はスッカラカンだよ。
ちなみにアイテム屋の店員は連装砲ちゃんだった。レンタクの時点で分かってたけどやっぱり連装砲ちゃんが働いていて、それで給料貰っているらしい。明石なんていなかった。
「採集って楽しいのよぉ。戦いがメインじゃないから天龍ちゃんには物足りないかもしれないけど私は好きよぉ。戦いばかりしていると身体は疲れるし心も荒むわ、だからたまには息抜きついでに採集をするの。広い自然の中でのんびりと虫取りしたり鉱石を集めていると時間を忘れるわぁ。トレジャーハンタークエストっていう時間内にどれだけ珍しいアイテムを集めて納品出来るかを競う楽しみ方もあって採集はとっても奥が深いの。機会があったら天龍ちゃんも是非トレジャーにチャレンジしてみてねぇ。」
……だってさ。そんなに楽しいもんかね?虫捕りとか小学生じゃねぇんだし、すぐに飽きそうな気がするんだが?
さて、言われた通りに採集道具持って海に来たわけだがそもそも海で虫あみって使うか?タモ網の間違いじゃなくて?海の上に虫なんているのかね?
フナ虫でも捕まえるのか?だけどああいう素早い虫は普通に網で捕るより、罠を仕掛けた方がいいんじゃなかったっけ?
疑問を感じながらも龍田と一緒に海上に繰り出すと、まず最初に目に入ったのは海面にプカプカと浮かぶ藻屑。海底からちぎれた海藻や漂流物が集まって出来た、云わば海のゴミだな。
ところが龍田はそんなゴミ溜めに屈んで何かを拾い始めた。
「ほーら天龍ちゃん、海藻よぉ。」
いやいやそんなもん拾うなよ、ばっちいな。晩飯のおかずにでもするつもりか?
確かにオレ自身は全然金は持ってねーけど、鎮守府で生活してるから飯は出てるだろ?ましてや龍田はちゃんと金を持ってるだろ、そんなもので飢えを凌がなきゃいけないほど貧困してたっけ?
ちなみに食堂の店員も連装砲ちゃんで、食堂の名もレンソウキッチンっていうらしい。別にオリーブオイルをたくさん使ったりはしない。案の定間宮さんや伊良湖なんていなかった。
「この海藻は
「薬草?どう見ても草じゃないだろ。」
「薬草じゃなくて薬藻よ。薬に海藻の藻って書いて薬藻。これを食べるとダメージが回復するわ。だけど回復量は少ないからこのまま使う狩娘は少ないわよぉ。」
薬藻って、それ食べて回復すんの?何か嫌だなぁ。戦闘中に隙を見て海藻を頬張って体力を回復する狩娘……だっせぇ。
生の海藻をモグモグ食べる龍田を想像してドン引きしていると、またしても龍田は藻屑を漁り始めた。
薬藻に続いて龍田が手にしたのは、海に浮かぶ朽木に生えていた青いキノコ……キノコ!?キノコって海水でも育つのか?しかもこんな日当りのいい場所で?
「疑問に思ったら負けよ。いいわね?」
「アッハイ。」
心を読まれた、ひょっとしてオレって顔に出やすい?
「出やすいわよぉ。それに天龍ちゃんの考えてることはすぐ分かるわよ、なんたって姉妹だものねぇ。」
フフフ、怖い……。何だよその奇妙な姉妹の絆、オレは龍田の考えてること全然分かんないんだけど……。
「それでね、これがアオキノコよぉ。これと薬藻を調合すると回復薬になるの。回復薬は薬藻より回復力が高いから、これを使うのが基本よぉ。」
そう言いながら龍田は慣れた手つきでアオキノコと薬藻を1つのビンに一緒に入れると蓋をした。そしてシャカシャカと軽く振る。
そうするとあら不思議!振っただけなのにキノコと海藻が綺麗に混ざり合い、緑色の液体になったじゃありませんか!?
「はい回復薬の出来上がり。ほら、天龍ちゃんもやってみて。」
とりあえず龍田の真似をして、薬藻とアオキノコを拾うとビンに入れてシャカシャカ混ぜる。
そうするとあら不思議!ポンッという軽い音と共にキノコと海藻はビンごとペンギン人形へと生まれ変わったじゃありませんか……何でだよ!?
「あらあら、それはもえないゴミよぉ。調合に失敗しちゃうとそうなっちゃうのぉ。それにしても初めての調合は必ず成功するっていうジンクスがあるのに、それを失敗しちゃうなんて凄いわねぇ。初調合を失敗するところなんて初めて見たわぁ。」
「うるせいやい!」
「まぁ調合は調合書っていう教本を読みながらやらないと、慣れた狩娘でも失敗しちゃうから気にしなくて大丈夫よぉ。(回復薬の調合成功率は95%だけどね……。)」
いやそれ全然フォローになってねーから……。
「この回復薬にハチミツを混ぜると更に効果の高い回復薬Gになるから覚えておいてねぇ。回復薬Gは狩娘の必需品よぉ。」
海藻とキノコとハチミツのブレンドドリンク?何その食欲のそそらない飲み物、絶対マズいだろ?
でもそれが狩娘の必需品なんだよな、良薬口に苦しってことか?なるべく飲まないで済むためにも攻撃を食らわないように気を付けよう……。
再び龍田と一緒に進んでいき、藻屑に続いて見つけたのは海面から顔を出す小さな岩礁。
だけど普通の岩礁じゃなさそうだ。周囲の岩礁と違ってそこだけ少しキラキラと光っているように見える。
「見て見て、これが採掘ポイントよぉ。ほら、普通の岩と違って光ってるでしょ。こういう岩からはピッケルを使って鉱石を採掘出来るから覚えておいてねぇ。」
なるほど、確かに見た感じは普通の岩と明らかに違うな。何ていうか特別感があるな。
「じゃあ早速ピッケルを使ってみて。カツーンとやるのよ、カツーンとね。」
言われたとおりにやってみる。それっカツーンと。おっ、握り拳大の金属片が出てきたな。
「それは鉄鉱石ねぇ。ありふれた金属で硬さはそれ程でもないけど、大抵の金属製の装備は鉄鉱石をベースに作ってるからとっても大切よぉ。」
「えっ、鉄の硬さがそれ程でもないっていうのか?鉄って十分に硬いだろ?」
「それがそうでもないのよぉ。この諸島では本土で見られないレアメタルがたくさん採掘されてるの、そしてその金属はどれも鉄より硬くて丈夫なのよぉ。それに強力な深海棲艦なら力も強いから鉄製品の守りなんて簡単に貫いてくるし、皮膚も硬いから鉄の刃じゃダメージが通りにくいの。だけどレアメタル製の装備ならそんな強敵とも渡り合えるわぁ。そしてそんな鉄よりも強い深海棲艦の素材とレアメタルを組み合わせて作った装備の威力は更に強力よぉ。」
そういえば装備は己の実力を示すって言ってたな。つまり装備を強化して深海棲艦を狩り、そいつから手に入れた素材で更に強い装備を作っていくのか。それなら確かに装備自体が強敵を倒したっていう実力の証明になるな……。
「だけどそんなに強い金属があるのなら、それを本土に持って帰れば強い兵器が造れるんじゃないのか?」
「ところがそうはいかないのよぉ。そういった金属はアタリハンテイ力の力場内でないと上手く加工出来ないし、そもそも竜人妖精さん以外が加工しても真価は発揮されないもの。第一アタリハンテイ力と艤装の相性が悪いのは既に教えたでしょ?だからそういったレアメタルは本土に持ち帰っても珍しいだけでしかないのよぉ、不思議でしょ?」
そりゃ残念、そう簡単な話でもないのか。
「それでね、前に神通さんがこの島はいつの間にかあったっていう話をしたでしょ?そしてどうして現れたのかも分からないって言ってたわよねぇ?」
「そういやそんなことも言ってたな、それがどうかしたのか?」
「あのねぇ、さっき見つけた海藻やキノコもこの島特有の物なの。薬藻とかアオキノコとか聞いたことないでしょう?」
「言われてみりゃその通りだな。海藻は体にいいって言うけど流石に傷の治療に使えるなんて聞いたことねぇもんな。」
「でしょう?それでね島が突然現れたことや、見たことも聞いたこともない資源がたくさんあることから、この島は実は異世界からやって来たとか宇宙から降って来たっていう噂話まであるのよぉ。」
んなアホな……って言いたいけど頭ごなしに否定出来ねぇな。確かに変な物が採れるし、そもそもこの島の周囲にだけ変な力場があるっていうし、正直言って地球の物とは思えん。
そりゃ調査もするワケだ。とはいえ流石に宇宙から来たはねぇだろ……ねぇよな?
さぁて、雑談も程々に採掘の続きを始めるか。そーれカツーン、カツーンと。
ポキンッ!
あん?何の音だ?
近くから聞こえた謎の音が気になりつつも、構うことなくピッケルを振り下ろす。
スカッ!スカッ!
……あれっ、手応えがおかしいぞ?
こればっかりは流石に気になり手元に目を向ける。
うん、ちゃんとピッケルの柄があるな。折れたところの断面を見て気付いたけど、これって骨が材料になってんだなぁ。これは一体何の生き物の骨なんだろ……ん?
「何じゃこりゃあああぁぁぁ!!!折れてるじゃねーか!?まだ数回しか使ってねーんだぞ!!」
「あらあら、もう折れちゃったのねぇ。」
龍田が呑気にそう呟く。
いやいやこんな簡単にぶっ壊れてちゃ苦情モンだろ?買ったばかりで10回も使ってないピッケルがその日の内に壊れたんだぞ!?
「ピッケルは見た目より壊れやすいのよぉ。でもそんなものなのよ、だって硬い鉱石を掘ってるんだもの。数回で壊れるなんて当たり前、ひどい時は1回使っただけで壊れちゃうんだからぁ。」
マジかよ……だから複数本買えって言ってたのか。
「ピッケルも骨と鉄鉱石を調合すれば作れるから覚えておくといいわよぉ。失敗すると回復薬と同じようにもえないゴミになるけどねぇ。」
またもえないゴミか……。っていうか何でピッケルの調合、つーか製作で失敗してもえないゴミになるんだよ?それにこのデカいピッケルが縮んで両手サイズのペンギン人形になるってのもおかしいだろ?これもアタリハンテイ力の影響なのか?
色々と納得がいかないが、とりあえず予備のピッケルで続きを掘る。そーれカツーン、カツーンと。結果として掘れたのは鉄鉱石数個と石ころ、そして丸くて硬そうな青い玉。
「あら、鎧玉じゃない。良かったわねぇ。」
「鎧玉?この青い玉のことか?」
「ええ、そうよぉ。鎧玉には防具に蒸着させることで守備力を上昇させる効果があるのよぉ。今使っている防具の守備力が不安になったら集めてみるといいかもね。ちなみにユクモ鎮守府では武具玉って呼ばれていて防具だけでなく武器の強化にも使ってるみたいだけど、それはあまり一般的じゃないみたいねぇ。」
なるほどな。確かに今の装備じゃ防御力には不安しかないからな、というか眼帯しかないワケだけど……。
だけどもっといい防具を作ったときにそっちに使ってもいいわけだよな、何に使うか悩むぜ~。
どうせならいっぱい集めたい、そうすりゃ悩まずにすむからな。だけど目の前の光る岩は掘り尽されてただの岩になってるな。
「これってもう掘れないんだろ?鉱石ってそう簡単に集まるもんじゃないし、どうすんだ?」
「心配しなくても大丈夫よぉ、この島では鉱石の掘れるポイントって珍しくないから他所に行けばまだあるわぁ。それに掘り尽した採掘ポイントも時間が経つといつの間にかまた鉱石が掘れるようになるのよぉ。」
いやいやそれはおかしいだろ、鉱石が湧くのか!?草とか生き物とかなら増えるのも分かるけどよ、掘り尽した石がまた掘れるってどういうこった?この石生きてねーだろうな?
手に入れたばかりの鉱石が突然動き出したりしないか不安になりながらも次に進むと、今度は朽木ではなく見るからに丈夫そうな大きな丸太がプカプカと浮かんでいるのが見えた。
「あら、運がいいわねぇ。これはユクモの木よ。ユクモの木はユクモ鎮守府周辺で見られる木で、軽くて丈夫でしなやかだから建材や家具だけじゃなくて、武器や防具の材料にもなるのよぉ。せっかくだから剥いでいきましょう。」
よーし、龍田に言われた通りに丸太を剥いで……剥いで……うぎぎっ、何これ硬ってぇ!さっきから頑張ってんのに全然剥げねぇ!
んっぐっ、ぎぎぎぎぎ……ふぅ、やっと剥げた。硬過ぎて筋肉痛になるかと思ったぜ、こんだけ硬けりゃそりゃ装備の素材にもなるよな。
オレが硬い丸太と格闘している間に、龍田が丸太の根元に何かを見つけたらしくオレに向かって手招きしてきた。いい加減木を剥ぎ取るのにも疲れたし、龍田のもとに行ってみるか。
「ほら見て、ここに虫がいっぱい飛んでるでしょう?こういう虫は虫あみで採取出来るわよぉ。試しに虫あみを使ってみてね。」
虫くらい素手で採れと思わなくもないが、毒とかあったら嫌だし渋々虫あみを振り下ろす。
そんでもって採れた虫は……ミミズ?飛ぶ虫じゃねーじゃん、っていうかミミズって虫か?そもそも土の中にいるハズのミミズが何でこんなところで採れるんだよ?
ウネウネしていて気持ちわりーな、こんなのポーチに入れたくないぜ。
「あら、それは釣りミミズねぇ。名前の通り釣りの餌になるのよぉ。それに畑に撒くと豊作間違いなし、土壌を豊かにしてくれるわぁ。そして猟虫のご飯にもなっちゃう使い道の多い虫よぉ。私もお世話になってるわぁ。」
いやオレ釣りなんかしねーし、園芸もやってねーし、操虫棍も使わねーから。
しかしこの後、嫌になるまで釣りをするハメになるのを今の天龍は知らないのであった……。
釣りミミズをとっても便利な虫のように書いたけど、実際は邪魔なアイテムの代表格。
畑や猟虫に使う際には店で買えばいいし、釣りをするならルアーやダンゴを使えばいいもんね。
釣りバッタよりはマシだけど。