天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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本当にやべー地雷行為は流石に書ききれない、特に性格地雷が持ち出す意味不明の俺ルールとか。
地雷プレイヤーの言動は一般プレイヤーの理解と想像を遥かに超えていて、もはや表現不可能。

とはいえ卯月にそんな行為をさせるのも可哀想だし書けない方が良いのかもしれない。





天龍ちゃんとうーちゃんさん2

 

 

 

 

 

「ようやくキャンプに着いたぴょん!お待ちかねの出撃でぇ~す!がんばるぴょん!」

 

いつもは龍田に連れられる形で出撃しているオレだが、今日は卯月に引っ張られての出撃だ。

クエストの費用は当然オレ持ち。確かにオレが受けるべきクエストなんだからオレが払わなきゃいねぇんだろうけど、割り勘システムとかないもんかねぇ……。損した気分が拭いきれねぇ。

 

「支っ給品♪支っ給品♪」

 

卯月は支給品ボックスの中に上半身を突っ込み、両足をパタパタさせながら中を漁っている。

オイオイ、スカート穿いてるせいでピンク色の縞パンが丸見えになってるぞ。恥ずかしくないのかね?

え?常にパンツ丸見え状態のヤツが言うなって?全くもってその通りだよ、コンチクショウ。

 

「これで準備バッチリ!やる気も満々!うーちゃんのガンランスはさっきからビンビンだぜ……なぁんちゃって。実際はガンランスあんまり使ったことないんだけど、金剛お姉ちゃんの見様見真似で頑張るっぴょん。」

 

ようやく卯月が支給品ボックスから出てきた、それじゃあオレも出撃の準備をするとしますかね。

 

ガサゴソ……ガサゴソ……。

 

「……あれ?」

 

ガサゴソ……ガサゴソ……。

 

「………………おい、これってまさか!?」

 

「そうよ、そのまさかっぴょん!」

 

支給品ボックスの中には地図以外何も入っていなかった。

しかもその肝心の地図にも黒の太文字でデカデカとハズレなんて落書きがしてあり、とてもじゃないが使えたもんじゃない。

そして振り返ったオレの目に入ったのは腕の中に支給品をゴッソリと抱いている卯月の姿。

 

「支給品は全部卯月が頂いたっぴょん!これこそふん娘の基本行動、支給品独り占め!天龍さんは荷物が少なく済んで良かったね、ぷっぷくぷ~。」

 

そういや以前龍田が言ってたな、支給品は独り占めせずにみんなで使いましょうって……。

確かにこれは困る、支給品がある前提で来たからあんまり自前のアイテムも無いぞ。

え、持ち込み不可クエストでもないのに自分でちゃんと用意しない方が悪いって?

 

「NDK?NDK?迷惑に感じたっぴょん?ごめんね~、でもこれも愛の鞭!天龍さんを一人前の狩娘にするための龍田さんからのお願いだっぴょん。だからいっぱい意地悪するし、当然アイテムも分けてあげないっぴょん。」

 

口では申し訳なさそうに言っているが、まるで表情が一致してない。

悪いことを自覚していながらこんなに楽しそうな顔をしていられる人なんてそうそういないぞ?

 

「あっ、そうだ。これだけなら特別に分けてあげるっぴょん、そーれ!」

 

ポイッ……ベチャッ。

 

「………………。」

 

卯月が投げてきたのはペイントボール。

それは油断していたオレの顔面に直撃し、オレの顔は妙な匂いを放つピンク色の塗料まみれになった。

 

「わーい、ピンク色っぴょん!うーちゃんとお揃いだ~!あははは~。」

 

だ……駄目だ、まだ怒るな……。こらえるんだ……、し……しかし……。

まだ出掛けて1分経ってないだろ、怒るには早過ぎる。

それにこれはオレのことを想ってワザと憎まれ役をやってくれているんだ……多分。

ましてや相手はオレより年下の子供だぞ、ここは年上として我慢の見せ所だ。

 

「そんじゃ次行こっか?このままベースキャンプにこもっての寄生プレイもオツだけど、それじゃあうーちゃんが面白くないっぴょん。れっつらご~!」

 

どこまでもマイペースな卯月に渋々着いて行く、のっけからこの調子でオレの体力持つのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘッヘッヘッ……。」

 

卯月と一緒に進んでいると、まるで不審者のような声をあげる怪しげな人影を発見した。

しかしそいつは変質者ではなく、かといって光の国からオレ達のために来てくれた正義の巨人でもない。れっきとした深海棲艦だ。

頭全体を覆う白いマスク、砲台のような右腕、そして巨大な口のような下半身。

 

あの姿は間違いなく軽巡ヘ「あれぞ今回のターゲット、ヘ級先生だっぴょん!」ゅぅ……せ、先生?

 

突然意味不明なことを言い出した卯月に困惑するオレだが、卯月は構うことなく話を続ける。

 

「ヘ級先生こそ、全ての狩娘に戦い方のイロハを教えてくれる大先生だっぴょん!ヘ級の動きは他の大型深海棲艦と共通するところが多いっぴょん。だからヘ級と戦ってその動きを覚えてしまえば他の深海棲艦なんて楽勝……になるハズぴょん。」

 

な~るほど、最初は何言ってんのかと思ったが多少は納得がいったぜ。戦い方の参考になるってんで、それで先生って呼ばれてるんだな……。

見た目もドス級駆逐艦に比べて人型に近いし、確かに学ぶことは多そうだ。

それに図体も大柄で見るからに手強そうだ、気を引き締めて掛かるとするか。

 

「まぁうーちゃんは今までずーっと寄生をしてきたから、未だに先生の動きを覚えてないんだけどね。えへへへ~。」

 

いやそれ笑い事じゃねぇだろ……。

オレにフン娘の何たるかを教える前に、自分の腕を磨いた方がいいんじゃないか?

 

 

 

 

 

「さぁて、ヘ級はまだこっちに気付いてないな。だったらチャンスだ。」

 

現在のオレ達は大きな岩陰に身を潜めている。

このままヘ級が背中を向けたところで、背後から奇襲をかけるのがベストだろう。

そうすれば最初の不意打ちと振り返ってから戦闘態勢に入るまでに4、5発は多く殴れるはずだ。

 

「あっ、そうだ!うーちゃんいい物持ってきたっぴょん。」

 

卯月はそう言うが早いか、ポシェットから手榴弾のようなものを取り出した。

それを左腕に着けた小さなボウガンのようなものに取り付ける。

 

「それは?」

 

「これ?これはスリンガーだよ。」

 

「スリンガー?」

 

「えーっとね、卯月もよく分かってないんだけど開発中の新アイテムでね、物を遠くまで飛ばすことが出来るんだっぴょん。まぁパチンコ銃みたいなものだっぴょん。まだ試作品であんまり出回ってはないんだけど、今回はテスト運用中の香取お姉ちゃんのところからこっそり借りてきたんだっぴょん!」

 

パチンコが新開発の装備?原始的だなぁ……。

それにしても黙って持ち出してよかったのか?

 

「それじゃあ発射っ!」

 

卯月は岩陰から腕だけをこっそり出すと、ヘ級に狙いを定めて弾を発射する。

 

 

 

 

 

キイイイィィィン!!!

 

 

 

 

 

ヘ級のすぐ傍まで飛んで行った弾は空中で破裂し、それと同時に大きくて甲高い音を立てる。

 

「ヘエッ!?」

 

高音に動揺したのか、ヘ級の動きが止まった。頭をふらふらさせながら呆然としているように見える。

 

「これぞ必殺、音爆弾ぴょん!」

 

「音爆弾?」

 

「そう!音爆弾は破裂する際におっきな音が出るイタズラに持ってこいのアイテムっぴょん!金剛お姉ちゃんがトイレに入ってるときにドアの前で破裂させたら、驚いて便器にハマっちゃったほどの威力だっぴょん。まぁ後ですごく怒られたんだけどねぇ~、ぷっぷくぷ~。」

 

なんつーことを……。そりゃ誰でも怒るわ。

 

「そして先生は大きな音に弱いっぴょ~ん。きっとマスクの中で音が反響してるんだっぴょん。おっきな音を聞いた先生はビックリして動けなくなるから攻撃のチャンスっぴょん。」

 

そうか、ならば今こそ攻め時!

最初は邪魔しに来たって言われてどうしたもんかと思っていたが、こうもあっさりとチャンスを作ってくれるとはやるじゃねーか!

 

「うおおおぉぉぉ!!」

 

いつでも抜刀出来るよう骨の柄に手を添えながら一気にヘ級に走り寄る。

先生だか何だか知らねぇが、その首貰ったぜ!!

 

「……あっ、言い忘れてたけど先生はすぐ正気に戻るし、更に驚かされたことで激怒する性質があるから注意するっぴょん。」

 

 

 

「……ゑっ?」

 

 

 

「ヘアァァァ!!」

 

ドゴォッ!!

 

「うげぇっ!?」

 

ヘ級怒りの右フック。

そんなものが飛んでくるなんて夢にも思わなかったオレは顔面をブチ抜かれ、勢いよく吹き飛ばされる。

 

「あがががが……。い、言い忘れたんじゃなくて、ワザと言わなかったんだろ?」

 

「ん~?そうかもしれないっぴょん。でも聞かれなかったし、言い忘れるのもしょうがないよね。あははは~。」

 

こ、こいつぅ……。

 

 

 

BGM:咆哮

 

 

 

「ヘアァァァ!!」

 

改めてこちらに向き直り、敵意をあらわにするヘ級。

右目をギラギラと輝かせ、右手の砲口からもチラチラと火の粉を漏らしている。

 

……ん?火の粉???

 

「ヘエェ……。」

 

怒り心頭のヘ級はオレに向かって右手の砲口を向けてきた。

砲撃か?いや、この海域の深海棲艦は砲撃はしてこないハズ。

実際にイ級は撃ってこなかったし、神通がそう言ってたんだから間違いない。

だとしたら威嚇行動か?誰だって砲口を向けられていい気はしねぇ。

 

「天龍さん、ヘ級の片手の砲口をよーく見るっぴょん。火の粉が漏れているのが分かるっぴょん?ヘ級は怒ると砲口から火の粉が漏れるっぴょん。そういった普段と様子が違うところを見極められれば相手の機嫌を判断することが出来るっぴょん。」

 

岩陰に隠れたままの卯月が、声だけで教えてくれる。

 

「ついでにもう少し砲口を眺めてみるぴょん。きっとビックリするものが見られるぴょん!」

 

ビックリするもの?なんだそりゃ???

ビックリするものとやらが気に掛かり、観察を続けてみることにする。

この距離ならヘ級のパンチも届かないから安全だろうしな。さぁて鬼が出るか蛇が出るか?

 

「ヘッ!!!」

 

「へっ???」

 

ヘ級の砲口から勢いよく発射されたのは鬼でもなければ蛇でもなく、真っ赤に燃える紅蓮の火球。

当然その火球は砲口を覗いていたオレ目掛けて飛んでくるワケでして……。

 

 

 

シュボッ……。

 

 

 

「あ゙あ゙あ゙~~~っ!あ゙っぢぃ~~~!?」

 

火球はそのままオレの顔面に着弾し、オレの頭は炎に包まれる。

 

「あちあちあちあち!?」

 

慌てて両手で頭をはたいて消火を試みる……が、火は全然消える気配が無い。

マズい、このままじゃ髪型がアフロになっちまう!?

 

ドボンッ!!

 

海に頭を突っ込んで、ようやく消火する。あぁ~、熱かった……。

 

「きゃははははははは!あははははははは!あーもうお腹がよじれるっぴょん!」

 

人が死にそうな目に遭ってるのを見て笑うって酷くない?

 

「ゾフィー兄さん大丈夫っぴょん?だけど顔が燃えたお陰でペイントが取れてよかったっぴょん。」

 

「誰がゾフィーだコンニャロー!?第一オレの顔をピンク色にしたのはお前だろ……ってそんなことはいい!それよりも砲口から火の玉が出てきたじゃねぇか!どういうことだ!?」

 

「えへへっ、ビックリした?」

 

「そりゃビックリするよ!?そもそもここ一帯の深海棲艦は砲撃をしないんじゃなかったのか!?」

 

「あぁ~なるほど、そこからっぴょん?」

 

オレの文句に納得した様子を見せる卯月。

何がなるほどなんだよ?一人で納得してないでちったぁ説明しろ!

 

「天龍さんの言う通りここの深海棲艦は砲撃をしないっぴょん。でもその代わりに火を噴いたり、放電して攻撃してくるっぴょん。アタリハンテイ力学に適応した結果、砲撃を捨てて代わりにそういった能力を得たっぴょん。つまり変わった飛び道具を持ってることが多い代わりに、実際の砲撃戦みたいに長距離での撃ち合いになることは滅多にないっぴょん!だから一方的に蜂の巣にされることはないから、安心して当たって砕けるといいっぴょん!」

 

あぁ、そういうこと。確かに砲撃はしてないな、砲撃は……。

でもその代わりに火を吐くのなら最初からそうと言えっ!こんなの砲撃と変わらねぇじゃんか!?

誰だ、ここの深海棲艦は砲撃してこないなんて嘘を言ってオレを騙したヤツは!?

………………あっ、神通か。

うん、騙してはないね。オレが勘違いしてただけだった。

 

何だかんだで神通のことが怖い天龍であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘェーッ!!ヘェーッ!!」

 

硬い装甲に覆われた右腕を身体ごと振り回しながら暴れるヘ級。

これじゃあ危なっかしくて近寄れないぜ。

あの右フックは適当にブンブン振り回しているように見えるが、一発一発がドスイ級のタックルに匹敵する破壊力がある。

そんな威力の技を連発してくる相手に、無暗に突っ込んでいったらあっという間に返り討ちだ。

本来ならば相手が怒る前にある程度動きのパターンを見て覚える必要があるんだろうけど、そんな悠長なことをする前に相手がキレて暴れ出したからそれどころじゃなくなった!

クソッ、どうすれば……。

 

「うーん、このままじゃ天龍さんが乙っちゃうっぴょん。フン娘的にはそれもアリなんだろうけど、この時点でやられてもらっちゃうのはまだ面白くないし、ここは一度形勢を立て直した方がいいっぴょん………………よぉーし。」

 

今まで何もせずに岩陰に隠れていただけの卯月は、ボール状のものを取り出すと今度はそれをスリンガーに装填し始めた。

 

「よーし、これを喰らうっぴょん!」

 

また音爆弾か?

これ以上怒りのボルテージが上がっていくのは勘弁なんだが……。

 

 

 

ピューン、ベチョッ……。

 

 

 

発射されたそのボールは途中で破裂することなく、そのままヘ級に命中した。

そしてヘ級にベットリとこびりつくボールの中身。

 

「………………オゲェッ!?く、臭っ!な、何だこれ?うっ!?臭いを通り越して痛い!?」

 

それはとてもじゃないがこの世の物とは思えない、謎の液体だった。

一秒ごとに目まぐるしく色が変わり続ける液体。敢えて言うなら虹色だろうか?

虹色の液体はドロッとした粘性の高いゲル状をしており、ゴポゴポと不気味な泡が次々に立っている。更にシューシューと不快な音を立てながら、これまた虹色の煙が上がり続けている。その煙は凄まじい激臭を放っており、とてもじゃないが近付けたもんじゃない。

 

そしてそんな劇物をぶつけられたヘ級はどうなったかというと……。

 

「ヘエ゙エ゙エ゙ェ゙ェ゙ェ゙!!!???」

 

怒り状態になった時よりも更に凄まじい声を上げながら、もだえ苦しみのたうち回っていた。

当然である。離れていても悶絶するような液体を全身に浴びたのだ。

 

ヘ級は浴びた液体を洗い流すかのように、慌てて海中に潜っていく。

海面から薄っすらと見える水中にいるヘ級のシルエット、その影はそのままどこかへと泳ぎ去っていってしまった。

 

 

 

 

 

…………あれ?これってひょっとしなくても逃げられた?

 

 

 







卯月に変なことをさせるのは可哀想だけど、天龍ならどんな酷い目にも遭っていいという謎ルール。
様々な体験を通して成長していくのが主人公の特権だから仕方がないね。
それに天龍は弄られキャラが似合ってるし。




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