天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

4 / 106
まだまだ続く説明回。


さっきから全然動かないで突っ立って喋ってばかりのじれってぇSSだけど、動かすのが大変だからお喋りで誤魔化してるワケではないです(震え声)。



天龍ちゃんと新たな世界4

 

 

 

 

神通から発せられたアタリハンテイ力学という言葉にオレは混乱していた。

だってあんな真面目な顔から、出てきた内容が当たり判定だぜ?

当たり判定ってアレだろ?シューティングゲームとかに出て来る『どう見ても自機に敵弾が当たっているけど、内部データ上では当たってないからセーフです。』みたいな奴のことだろ?

 

でも神通の雰囲気は本気だったしマジであるのか……その力学っていうのがよ?

 

「アタリハンテイ力学(りきがく)とはこの島を含む海域周辺にアタリハンテイ(りょく)という特別な力場(りきば)が発生しているという理論のことです。」

 

どうやらマジっぽい。だけど顔が真面目なのに出てきた話は間抜け過ぎる。真剣な顔でアタリハンテイって……。理論の名前はもうちょっと何とかならんかったのか?

 

 

 

 

 

「科学的な話まですると専門的な用語が多い上にキリが無いので省きますが、アタリハンテイ力に対して、艦娘の艤装との相性は最悪でした。未だに研究中であり解決方法は不明なものの、アタリハンテイ力の影響下において、艤装による攻撃は命中しても深海棲艦にまるで通用せず、素手で石ころを投げつけた方がよっぽど効果があるという信じがたいデータが出たのです。」

 

「それって要するに、力場の中では艤装を使った攻撃は深海棲艦に通用しないってことなのか?」

 

「いえ、艤装そのものの攻撃力が無くなったと言った方が正しいでしょう。その後、実験としてアタリハンテイ力の力場内にて艦娘同士での実弾演習を行いました。そして通常では間違いなく大破するような砲撃が命中したにも関わらず、力場の中ではダメージがありませんでした。つまり艦娘、深海棲艦を問わず艤装の攻撃は無効化されるということです。しかしこの研究によってイ級が肉弾戦を挑んできた理由も分かりました。彼らの砲撃もこちらには効果が無いことが分かっていた為、砲撃を一切行わなかったということです。」

 

どうやらオレの考えは、半分当たりで半分外れのようだった。

 

「だから熟練部隊でもイ級に勝てなかったのか。まぁ攻撃が通用しなけりゃ勝てるワケが無いよな。」

 

「天龍ちゃん、話はそれだけじゃないのよ~。」

 

「えぇ、このアタリハンテイ力の影響下において艤装を装備した艦娘は本来の力を発揮出来ません。島に近付いた艦隊が倦怠感を感じたのも当然です。今まで艤装から供給されていたエネルギーが途絶えていたのですから。むしろ重い艤装を背負っている分、普段より辛いでしょう。服にダメージを受け流せなかったのも同様にアタリハンテイ力が関係しています。この島の物理法則の前に妖精さんの技術は通用しないのです。」

 

「だけど何で艤装を捨てると重い剣が扱えるようになったんだ?艤装の補助が無いのと艤装が無いのは同じようなもんだろ?それに鉄の剣で深海棲艦と戦えた理由にもなってないじゃん?」

 

「当然の疑問ですね。それは艦娘や艤装が力場の影響を受けるように、大剣や深海棲艦もアタリハンテイ力の影響を受けていたということです。竜人妖精さんの技術によって作られた大剣はまさにアタリハンテイ力の申し子。アタリハンテイ力と相性の悪い艤装を身に着けた艦娘には扱えず、逆に艤装の無い艦娘に扱えた理由もそれによるものです。艤装を外した艦娘はアタリハンテイ力のマイナス面ではなく、プラス面による影響を受けます。つまり艤装の無い艦娘が突然怪力になったのではなく、艤装を捨てたことでこの島の物理法則に適応出来たということです。アタリハンテイ力に適応さえすれば、同じくアタリハンテイ力によって作られた大剣を扱うことなど造作もありません。深海棲艦の怨念による守りのオーラも、アタリハンテイ力に適応した武器の前では無いも同然です。そして仮に怨念を突破したとしても並の砲撃にも耐えうる深海棲艦の装甲を、単なる鉄製の剣で貫けたのもアタリハンテイ力によって物理法則が異なっていたからです。」

 

「そう、だからこの鎮守府には艤装が無いのよ~。武器にも出来ずエネルギーも得られない艤装は文字通りのお荷物。そしてアタリハンテイ力への適応を妨げるなら荷物を通り越して邪魔者だからねぇ~。」

 

「そして艤装が役に立たない以上、艦娘の服も普通の衣類となんら変わりありません。だから龍田さんはインナー姿でも変わらないと言ったんです。ですが天龍さん、さっきから私や龍田さんがいつも通りの服を着ていることを不思議に思っているでしょう?」

 

そりゃそーだ。龍田は胸を強調したいつもの黒い服を着ているし、艤装が無いって言ったくせに頭の上に輪っかも浮かんでいる。神通の方も、頭には緑色の鉢金リボン。着てるのはオレンジと白の二色のカラーがオシャレな、フリフリとしたデザインが特徴的な川内型改二のセーラー服。

 

それに対してオレの格好は眼帯とブラとパンツ……これって新人イジメじゃね?

 

 

 

 

 

「この服も見た目は艦娘としての衣装そのものですが、実際は竜人妖精さんの技術によって作られた防具で、アタリハンテイ力により薄い見た目とは裏腹に高い防御力を持っています。」

 

「この艤装モドキも実は竜人妖精さんに作って貰った頭用の防具なのよ~。だから見た目は艤装だけど実際は別物なの。」

 

「じゃあオレも竜人妖精さんに防具を作ってもらえばいいんだな?」

 

オレは期待を込めてそう聞くが、神通は困った顔をしながら続きを話し始めた。

 

「はいその通りです。ですが防具を作るのにもお金と素材がいります。これは普通の服ではないのですよ。これらの装備は鉱石や虫を集めたり、剥ぎ取った深海棲艦のパーツを素材にして作られているのです。」

 

「えっ、服の素材って綿とかポリエステルとかの線維じゃないのか?っていうか鉱石はまだいいとして虫?そして深海棲艦のパーツ!?それがどうやって服になるんだよ?」

 

「それが竜人妖精さんの技術なのよ~。それと生産の素材にはチケットやコインが必要になる場合もあるわよぉ。」

 

「それは厳密には生産許可証ですね。生産の際には素材の代わりにそれらを要求されることもあります。」

 

「じゃあそういった材料とお金を持ってなきゃ服は作ってもらえねぇのか?」

 

「ですから服ではなく防具なのですが……まぁその通りです。」

 

ってことはオレはまだここに着任したばかりで素材なんて何にも持ってないから、しばらくは下着のまま過ごせってことなのか?……それは嫌だなぁ。

つぅか、防御力とかどうでもいいから普段着はねぇのかよ?しょうがない、龍田に相談してみるか。

 

「なぁ龍田、素材か防具を分けてくんねーか?流石にこの格好のまま過ごすっていうのは辛いんだけど。」

 

そう言ってみるが、流石の龍田も困り顔で首を横に振った。

 

「それはダメよぉ、眼帯をあげたのは特別サービスなのよ?武器や防具はね、持ち主の実力を示す証明でもあるの。強力な深海棲艦の素材で作られた装備を身に着けているってことは、その相手を倒して素材を手に入れられるだけの実力を持っているっていう証明なの。それに実力が無いのに装備だけが強力なものになると、弱い相手なら装備の力だけで倒せてしまうから慢心と実力不足にもつながるわぁ。だから基本的に装備と素材の受け渡しは禁止されています~。」

 

「しょうがねぇな、だったらさっさと素材とやらを手に入れようじゃないか。要は深海棲艦を倒せばいいんだろ?裸同然で深海棲艦と戦うっていうのは少し不安が残るが、ずっとこのままじゃいられねぇしな。」

 

「はいその通りです、ですが天龍さんはまだ武器をお持ちではないですよね。先程も言いましたがここの鎮守府では艤装ではなく竜人妖精さんが作ったアタリハンテイ力に適応した武器を使って戦います。ですが武器には様々な種類があります。なのでまずは最初に使う武器を選んで下さい。」

 

そう言うと神通は何やら雑誌のようなものを取り出した。

 

「これは月刊情報誌『狩りに生きる』です。狩娘なら誰もが一度は目を通すべき本ですので、天龍さんも是非どうぞ。この号は武器特集ですので、ここから使いたいものを選んで下さいね。」

 

どれどれ?なんかいっぱいあるなぁ……。

 

 

 

 

 

「えーと大剣……一撃の威力は全武器中でも最高クラス、力を溜めて更なる破壊力を生む、デカくて使い勝手悪そうだなぁ。ランス……相手の弱点を集中して狙う鋭い攻撃と鉄壁の防御力が自慢ねぇ、ちょっと地味だな。このスラッシュアックスってのは何だ?斧が剣に変形するって言われてもよく分かんねぇぞ。ふむふむヘビィボウガン……機動性と引き換えに放たれるな弾丸の威力は絶大かぁ、せっかく艤装じゃなくて武器が使えるんだから遠距離戦じゃなくて接近戦がやりてぇな。ん?これは何て読むんだろ……せ、せん?穿龍棍でいいのか?見た目はトンファーみたいだな。」

 

 

 

 

 

オレが武器選びに悩んでいると横から神通が声を掛けてきた。

 

「天龍さん、狩猟笛はいかがですか?攻撃とサポートが同時に出来るテクニカルな武器ですよ。」

 

そう言って神通が取り出したのは、変な形をした身長よりも大きな棍棒……いやよく見たらこれはマイクか?大きさを無視すれば、駄菓子屋で売ってそうなチープな見た目のマイクだ。でも笛っつってたな、じゃあこれはマイク型の笛なのか?

マイクのボディにデフォルメされた那珂ちゃんのイラストが描いてあってなんか恥ずかしい。マジで何だろうなコレ?このマイクでぶん殴って戦うのか?

 

「狩猟笛には演奏という他の武器に無い特徴があります。そのメロディーは聴いた者の秘められた力を引き出す不思議な効果があるんですよ。」

 

音楽を聴いたらパワーアップするってことか……音楽療法を通り越してドーピングか洗脳の域じゃね?そういや世の中にはドラム係やタンバリン係っていうのがいて、ひたすら演奏を続けて仲間の補佐をするらしい。これもそれ系の道具なのか?

 

「狩猟笛ごとにメロディーや効果も違うので、色々な笛を作って使い分けるのも楽しいですよ。この那珂ちゃんマイクの場合だと吹くと恋の2-4-11のメロディーが流れます。私のお気に入りなんですよ。」

 

マイクなのに吹く?マイクなのか笛なのかハッキリしろよ……。

 

 

 

 

 

オレが狩猟笛に気を取られていると、負けじと龍田も何かを取り出した。あれって龍田の艤装の槍じゃん。でも艤装は使わないって言ってたな、じゃああれも艤装型の武器なのか?

更に龍田は槍とは別にもう1つ、オレの頭よりデカくて丸い何かを取り出した。そっちは何だ?槍とセットってことは盾か?

 

「じゃじゃーん!天龍ちゃん、操虫棍はどぉかしら?こっちも便利な武器よぉ。猟虫は相手のエキスを吸い取って、こっちのパワーに還元してくれる凄い能力を持っているの。それに猟虫も慣れれば可愛いわよぉ、育てる楽しみもあるしね。」

 

そう言って龍田が差し出してきたものは……うわっ!でっけえカナブン!?何それ気持ち悪い!それに龍田の言う相手っていうのは当然深海棲艦のことで、エキスっていうのは要するに体液のことだろ?つまりこのお化けカナブンは深海棲艦に取り付いて体液をチュウチュウ吸い取るってワケだ……最悪な絵面じゃん、オエッ。

 

すると顔に出ていたのか龍田はあからさまに不満そうな顔をした。

 

「もぉ~天龍ちゃん、私のマルドローンちゃんのこと気持ち悪いって思ったでしょ?」

 

うっ、スマン。つい気まずくなって手元の雑誌に視線を戻す、するとそこに書かれていたある武器にオレの目は釘付けになった。

 

 

 

 

 

「太刀……鋭い連続攻撃で敵を圧倒する。己の気を刃に宿すことで繰り出される気刃斬りは万物を両断し、持ち主の更なる力を引き出すことも出来る…………これだっ!オレに合う武器は間違いなくこの武器だ、これが使いたい!」

 

 

 

 

 

興奮のあまりつい叫んじまったが、龍田と神通は気にすることなく納得したような顔をした。

 

「やっぱりその武器を選ぶのねぇ。まぁ最初からそうなるんじゃないかな~って思ってたけど。」

 

「太刀を使われるのですね、分かりました。ではこちらをどうぞ。」

 

そう言って神通がオレに手渡してきたものは……ナニコレ?削っただけの細長い骨か?

困惑するオレに神通は言い放った。

 

「これこそ初心者狩娘に贈られる最初の太刀、その名も骨です。」

 

「やっぱり骨じゃないですかー!やだーーー!!」

 

見るからに頼りない骨なんかを渡されたショックで、四つん這いになって落ち込むオレ。

すると傍に龍田が屈んできて、オレの頭を撫でながら慰めてきた。

 

「あのねぁ天龍ちゃん、さっきも言ったけど最初から強い武器は与えられないの。それに弱い武器でも素材を使って強化をすることが出来るのよぉ。骨は素材が単純な代わりに色んな武器に生まれ変わる可能性があるの。だから天龍ちゃんが強くなれば、骨も一緒に強い武器になってくれるわよぉ。だから骨と一緒に世界水準を目指しましょう、ねっ。」

 

「……ええい妹に慰められるとは。だけどそうだな、落ち込むにはまだ早いぜ!考えてみればまだ建造されて1日も経ってねぇ、オレの伝説はここから始まるんだ!!」

 

「そうよ、その意気よ天龍ちゃん!(単純で助かるわぁ~。)」

 

「では改めまして天龍さん、あなたの活躍を期待しています。」

 

そう言って神通はオレに敬礼をしてきた。当然オレも敬礼を返す。

 

「おう、任せとけ!」

 

 

 

 

 

そしてそのままの勢いで執務室から退室しようとしたが、ふと1つ疑問を思い出したオレは足を止めて振り返り神通にこう尋ねた。

 

「そういや結局()()()()って一体なんのことだ?」

 

「そうですね、それについてもお話ししましょう。これも遺跡の研究の結果と竜人妖精さんによる話をまとめたものなので、憶測の域を出ていないのですが……。」

 

そう前置きをした後、神通は語った……。

 

 

 

 

 

「かつてこの地に暮らしていた人々は、同じくこの地に生息していた恐るべき強大な生物に脅かされていたといいます。しかしそんな人々を守るために巨大な武器を手に生物に戦いを挑んだ勇敢な者達がいました。矮小な人の身で人知を超えた生物と戦い、そして見事に討ち取る勇者。そんな彼らのことを人々は尊敬の念を込めて狩人(ハンター)と呼んだそうです。今、私たちが使っているこの武器や防具も当時の狩人(ハンター)達が使っていた装備と同じ技術で作られています。そして艦である艤装を捨て、代わりに狩人(ハンター)の誇りと魂である武器を手にして深海棲艦に戦いを挑む私達は彼らにあやかってこう呼ばれているのです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狩娘(ハンむす)と……。

 

 




良い子の諸君!いくら自己強化があるとはいえ、モンハンのモの字も知らない初心者にいきなり猟虫や印弾にジャンプといった特殊操作が多い操虫棍や、演奏といった独自要素があってヘイトも集めやすい狩猟笛は勧めない方がいいぞ。クック先生との約束だ!先輩としてアドバイスをしつつ、大剣や片手剣で基礎を学ばせるのだ。それでも自分で難しい武器を選ぶというのなら、改めて先輩として指導をしてあげよう。


ちなみに大剣一筋のフレと一緒にとある闘技大会に挑戦した時は武器に大剣が無くて、ソイツは仕方なく狩猟笛を使っていたが、武器出し攻撃と自分強化以外はロクに出来ず、実質オトリだったぞ。練習無しに逃げ場無しの闘技大会とはいえ、既プレイヤーでコレだからな。

フレ「武器出し攻撃が大剣と似ているから、他の武器より使いやすい。(小並感)」

えぇ……?(困惑)狩猟笛ってそういう武器じゃねーから。



ちなみに狩娘の格好については特別な説明が入らない限り、(見た目は)艦娘の頃と全く同じものを身に着けていると思ってOKだ。



おまけ:神通さんの装備

武器:那珂ちゃんマイクG
頭:神通Xリボン
胴:川内Xスーツ
腕:川内Xカフス
腰:川内Xスカート
脚:川内Xブーツ
護石:天の護石
スキル:斬れ味+1、見切り+1、舞闘家、隠密、笛吹き名人

ぶっちゃけるとあまり意味の無い設定。スタイルや狩技まで考えるとキリがないのでカット。
川内シリーズXは忍者的なイメージで舞踏家と隠密のスキル持ち。狩猟笛に隠密付けても意味無いとか言わない。斬れ味と見切りと笛は頭防具及びに護石とスロットでの発動。護石はイメージで決めたのでその護石じゃスキル付かないだろとか言われても気にしない。
那珂ちゃんマイクGの旋律も特に決めてない。
G級になったアイドル那珂ちゃんの笛だし、天下のはぴーと同じでいいんじゃない?(投げやり)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。