天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

37 / 106



遂に新しい狩り場がオープン!

これからたっぷりと遊ぶので休載します………………ウソです。(遅くならないとは言っていない。)





長門さんと真犯人4

 

 

 

 

 

『シュルルルル……シュルルルル……。』

 

 

 

 

 

………………ッ、この不気味な声は!?まさかッ!!

 

バゴンッ!!

 

盗品の山の中から飛び出してきたのは、室外機に潰されて倒されたと思われていたカマキリだった。

紫色だった瞳は、怒りの感情を表すかのように真紅に染まっている。

 

『キャアアアアァァァァ!!!!!』

 

虫が出したとは思えない程の大きな絶叫を上げるカマキリ、その迫力に思わずたじろぐ。

相手は小さな昆虫だが、この叫び声一つで生物としての格が違うような錯覚すら覚えた。

ひょっとして私は迂闊にも喧嘩を売ってはいけない相手に挑んでしまったのか?

バカな、相手はたかが虫だぞ。そんな相手に気圧されてどうする?

 

 

 

 

 

盗品の山から飛び降りたカマキリは、私に背を向けると尾から大量の黄金の糸を吐き出した。

その本数はとても一匹の生物が出したとは思えない量だ。

それらを全て盗品に絡みつかせると、地引網でもするかのように両手のカマで器用に引き上げる。

 

何をしようとしているのかは知らないが、今のヤツは隙だらけ!

背を向けている今の内に叩き潰せば…………って、私の足にはまだ糸が絡みついたままじゃないか!?

クッ、ギリギリ攻撃が届かない距離に陣取っているだと?

そうかっ、アイツは私が動けないことを見越して隙の大きな行動をしているのか!

こちらの状態を把握して行動出来るとは、やはりコイツは賢い!

とにかくこのままではアイツに手が出せない!

 

私が足の糸に手間取っている間にも、次々と引き上げられていく盗品。

それらはまるで初めからそうなることが約束されていたかのように組み上げっていき、やがて一つのシルエットを形作る。

 

「こ、これはまるで人間じゃないか!?」

 

そう、そこに現れたのは盗品で構成された人形だった。

身長は2メートル程。

その姿は人間に似ておりながらも全身が継ぎ接ぎだらけで、目も口も無い頭部が非常に不気味だ。

そして本来ならば心臓があるべき胸部、そこにはポッカリと1つの穴が空いている。

 

『シュルルルル……。』

 

カマキリは素早く人形の胸部に飛び込むと、全身を糸で覆い黄金の繭へと姿を変えた。

 

 

 

 

 

BGM:蠢く墟城

 

『ブオオオォォォン……。』

 

不気味な軋みを上げて動き出したヒトガタは、ゆったりとした歩調でこちらへと歩み寄ってくる。

規格も材料も何もかもが異なる部品で構成されているにも関わらず、その動きは人間そのものだ。

技術が進歩した現在でも未だにロボットを二足歩行させるのはそう簡単ではないというのに、コイツは信じられないことに二本足で歩いている。

継ぎ接ぎだらけの不自然な人工物が、生物のような自然な動作をするその様子は寒気すら感じさせる。

 

 

 

 

 

そうかっ、天龍が廊下で見たという人影の正体はコイツかッ!!

暗闇なら継ぎ接ぎは目立たず、遠目に見たのならば単なる人影としか思えない。

それにコイツが鎮守府で盗みを繰り返していた理由も理解した、このヒトガタを完成させるための部品集めだったんだ!

そして天龍がコイツを見失った理由もようやく分かった。

シルエットだけなら人間そっくりだが、その身体はいくつものパーツから構成させたもの。

身体を分解して小さな部品へと戻して輸送したり、蛇のような細い身体へと再構成すれば狭い隙間だって抜けられる!

これでトイレから消え去ったと勘違いさせたんだ!

 

 

 

 

 

「ええい、剥がれろっ!!」

 

ブチブチブチィ!!

 

ようやく糸から足を引き剥がすことに成功したが、目の前には大きく右腕を振りかぶるヒトガタの姿が。

いくらなんでもこれは避けようがない!

慌ててシャベルを盾にして防ぐ。

しかし今の私が使っているのは深海棲艦をも叩き斬る頑強で巨大な大剣などではなく、ホームセンターで普通に売っているような何の変哲もないシャベル。

こんなもので防げる攻撃など、たかが知れており……。

 

バギャッ!!

 

「がああっっ!!」

 

一瞬にして吹き飛ばされ、壁に叩き付けられる。

盾にしたシャベルの柄は真っ二つに折れ、胸への強烈なダメージに呼吸もおぼつかない。

ちょっと前に神通に似たようなことをされたが、威力は段違いだ。

信じがたいが、こちらの方が遥かに痛い。

あの百戦錬磨の神通より、カマキリの方がパワーで優るというのか!?

 

「ゲホッ、ゴホッ……ハッ!?」

 

『ブオオオォォォン……。』

 

倒れた私に対して、容赦無くダブルスレッジハンマーで追撃をするヒトガタ。

使い物にならなくなったシャベルを手放すと慌てて横へ飛び、それを避ける。

先程まで私がいた場所に振り下ろされた両腕は轟音と共に床をぶち抜き、まるで幼児が障子を破くかのように簡単に穴を開けてしまった。

 

あんなものをまともに喰らったら冗談抜きで頭が割れるぞ!

これはクエストでも何でもないから、ここで私が力尽きたとしてもレンタクの救助は来ない。

そのまま殺されてしまうだろう、そもそもここに私がいること自体誰も知らないからな。

 

だが同時に光明も見えた!あの胸の繭だ、繭の中に本体のカマキリが入っている。

間違いなく弱点はあそこだ、そこを狙えばコイツを倒せる!

 

 

 

 

 

左腕を振り上げるヒトガタ、その手にはいつの間にかフライパンが握られていた。

調理器具で攻撃するなんて傍から見れば滑稽だが、攻撃される側からすれば堪ったものではない!

ただでさえ桁違いのパワーを誇るコイツが、武器を振るえばその威力は計り知れない。

しかしアイツは動きこそ滑らかだが、動作自体は鈍い。そこに勝機を見出す!

 

『ブオオオォォォン……。』

 

振り下ろされるフライパンを躱し、腕が戻り切る前に懐に飛び込む!

チャンス到来、やるならここしかないッ!

 

「我が渾身の右ストレートを受けてみろ!でやあああぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

ズンッ!!

 

 

 

 

 

私の放った正拳突きは見事黄金の繭を直撃し、そしてヒトガタはその動きを止めた。

しっかりと繭に突き刺さる私の拳からは、確かな手応えを感じる。

………………や、やったのか?

 

 

 

 

 

バギィッ!!

 

 

 

 

 

突如として振り抜かれるヒトガタの右腕。

油断していた私は、先程の焼き回しのように壁に叩き付けられる。

 

「がふっ!?」

 

ぐっ、私の渾身の一撃も効いてないのか?

口の中にジワリと広がる鉄の味。

こんなことになるんだったら「やったのか?」なんて言わなきゃよかった……。

 

『シュルルルル……。』

 

床に倒れている私目掛けて、黄金の繭から糸が放たれる。

先程の足元の罠とは違い、大量に放たれた金糸は私の両手両足を何重にも縛り上げた。

あっという間に手足を封じられ、私は芋虫のように床に転がされる。

マズいッ、これでは逃げるどころか糸を解くことすら出来ん!

風呂場でも洗濯紐で縛られたが、この糸の強度はまるで鉄線だ。

洗濯紐など比較対象にすらなりえない。

 

 

 

 

 

動けない私に勝利を確信したのか、ゆっくりとこちらへ近付いてくるヒトガタ。

やがて私の前で立ち止まると、おもむろにサッカーボールキックの体勢に入った。

一撃でシャベルをへし折り、床を簡単に叩き割る程の腕力を誇る相手が繰り出す蹴りだ。

そんなものを顔面で受ければ、私の頭などザクロも同然に弾け飛んでしまうだろう。

 

くっ、ここまでか……。

顔面に爪先が迫ってくる様子なんて見たくない、最期に見る光景がそれなんて尚更だ。

完全に諦めムードに入った私は目を瞑る。

 

済まない鎮守府の仲間達よ。

せっかく犯人を見つけたにも関わらず盗品は取り返せず、そして私自身も返り討ちだ。

私の仇を討ってくれなんていわない、むしろこんな危険な相手には挑まないでほしい。

死にゆく私の唯一の願いは、私の墓に駆逐艦娘の靴下をお供えしてほしい。

それだけだ。

 

鎮守府のみんな、さようならだ……。

 

 

 

 

 

ズッ!!!

 

 

 

 

 

硬い物が柔らかい物へとめり込む鈍い音が聞こえた。

 

………………ん?蹴られた音が聞こえたわりには、全然衝撃が来ない???

あまりにも痛過ぎて、逆に神経が痛みをシャットしたのか?

それとも私はまだ生きているのか?既にあの世に来てしまったのか?

少し怖いがそっと目を開けてみる。

 

 

 

 

 

BGM:英雄の証 ~ MHXXver.

 

「オオオォォォ!!!」

 

私が目にしたのは短い脚で踏ん張りながらも、二本の触手で蹴りを受け止めているジョニーの勇ましい後ろ姿だった。

更に私の後方から飛んできた青白い粘液がヒトガタの関節に降り掛かり、その動きを阻害する。

この粘液は間違いない、スミスが吐き出したものだ!

 

「キイイィィィ!!!」

 

予想通り、ジョニーに続いてスミスも現れると私を守るようにヒトガタに立ち向かう。

お前達、私を助けてくれるというのか!?

駆逐艦と一緒にお風呂に入ったことで腹を立ててお前達を排除しようとしたり、お前達を勝手に事件の犯人扱いしたこの私を!?

二匹に対する感謝と感動の気持ち、そしてそれに対する私自身の情けなさに涙と鼻水まで出てきた。

 

そうか!龍田の証言でお前達が通気口に潜んでいたとの情報があったが、その理由が分かった!

お前達もこの事件の犯人を追っていたんだな!

だからこそ私が誰にも行き先を告げていないというのにも関わらず、ここに駆け付けることが出来たのか。

 

………………しかしちょっと待て?

コイツ、神通をも超えるパワーの持ち主の蹴りを普通に受け止めている?

この小さな体格で?嘘だろう!!!???

 

 

 

 

 

『ブオオオォォォン……。』

 

「オオオォォォ!!!」

 

ヒトガタはジョニーを振り解こうとするが、ジョニーは人型の足を掴んで離さない。

それどころか二本の触手で徐々にヒトガタを持ち上げていく。

信じられん、なんてパワーだ。

神通より強いカマキリよりも更に強いジョニー、もう訳が分からない。

 

「キイイイィィィ……。」

 

その間にスミスは力を溜めるような動作と共に口腔から赤黒い光を漏らし始め、それとは対称的に全身からは青白い光を放ち始めた。

 

 

 

 

 

どんどん赤みを増していくスミスの口元。

全身から放たれる青白い光はどんどん強まり、部屋中を眩しく染め上げていく。

それに対して焦りを見せるかのように暴れるヒトガタだが、逃すまいとジョニーは全力でヒトガタを押さえ続ける。

 

「キイイィィィ!!!」

 

やがて全身から禍々しく感じられる程の赤黒い稲妻を迸らせるスミス。

その迫力はG級の深海棲艦でもたじろぐ程のものだろう。

この殺気は私に向けられたものではないから私は平気でいられるが、もしもこれが私に向けられたものであれば、私はすぐさま白目を剥いて失禁しつつ気絶するに違いない。

 

 

 

 

 

床に触手を突き刺し身体をしっかりと固定するスミス、それを確認すると同時にヒトガタを部屋の中央へと放り投げるジョニー。

 

 

 

 

 

「オオオォォォ!!!」

 

「キイイィィィ!!!」

 

『キャアアアアァァァァ!!!!!』

 

 

 

 

 

次の瞬間、私の視界は真紅の閃光で染まった。

これは……スミスが口からビームを吐いているのか?

この目で見ても信じがたいが、小さなスミスの口から人一人を余裕で飲み込むほどの激しい閃光が放たれている。

 

放たれた極大のビームはヒトガタを直撃し、そのまま小屋の天井へと勢いよく押し上げる。

それでも止まらぬ光の奔流は天井を突き破り、ヒトガタを空高く吹き飛ばした。

やがて空から聞こえてくる轟音と、徐々に勢いを無くし収まる光線。

屋根に空いた穴から見える空には、まるで空中で爆弾が炸裂したかのような爆発の跡が見て取れた。

 

よく分からないが、スミスの放ったビームによってヒトガタは爆散したようだ。

……というかこいつらこんなに強かったのか。

ジョニーのあのカマキリをも超える怪力に、射線状にある物全てを灰燼に帰すスミスのビーム。

これからこいつらが駆逐艦娘とお風呂に入っていたとしても、喧嘩を売るのは止めておこう。

天龍はよくもまぁこんな危険生物を手懐けることが出来たものだな。

 

 

 

 

 

……って小屋が崩れ始めた!?

次々と落ちてくる小屋の破片には、金色の糸が絡みついているのが見て取れた。

恐らく廃屋同然のこの小屋を、カマキリが自身の糸で補強していたのだろう。

しかしカマキリが倒されたことと、スミスの規格外なビーム攻撃によりその力を失い崩壊を始めたのか。

 

って、冷静にそんなことを考えている場合じゃない!

早く逃げないと瓦礫の中に埋まってしまう!

………………あっ、逃げようにも私の手足は縛られていたんだった。

 

ジョニーッ、スミスッ、助けてくれ~~~っ!!

って、もうあいつらいないじゃないか!

あんの薄情者共め、見直すんじゃなかった!

 

うおおおお、早く解けっ!!

カマキリは倒されたんだ、その拘束力も今なら弱まっているハズ!!

よしっ、解けた…………って大きい破片がこっちに、ぐへぇ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………とさん、長門さん。」

 

う~~~ん、むにゃむにゃ。誰だ、私を呼んでいるのは?

昨日の晩から寝てないから眠いんだぞ……。

 

「長門さん、起きて下さい。」

 

「むにゃ……んっ、神通?」

 

目を覚ますとそこにいたのは神通だった。

 

「長門さん、今度は何をしたんですか?」

 

何って、何のことだ?

 

起き上がって周りを見回すと、そこは自室の布団の中ではなく野外の瓦礫の中だった。

……そうだ、私は小屋の崩壊に巻き込まれて気絶していたんだ。

 

「ここは随分と前に放棄された小屋なんですけど。突如として外から爆音がしたので何事かと思って業務を途中で休んで見に来てみれば、小屋は崩壊、貴女は昼寝。いい身分ですね?今朝に私が言ったことをもう忘れたんですか?そもそも廊下の掃除は終わらせたのですか?」

 

こ、これは非常に怒ってらっしゃる……。

しかし私は泥棒騒ぎを解決に導いたんだ、頑固な神通だって話せば分かってくれるはず。

とはいえ馬鹿正直にカマキリが泥棒をしていて、それをジョニー達と一緒にやっつけましたなんて言ってもそんなの信じてもらえるワケがない。

私だって実際に見なければ、とてもじゃないが信じないだろう。

それに色々あり過ぎて、私自身上手く説明出来る自信が無い。

説明が出来ない事を並べ立てても単なるいい訳か、頭がおかしくなったと思われるのがオチだ。

だがここで私が確保した盗品を見せれば、説得も難しくないはずだ!

 

 

 

 

 

あっ……そういえば盗品はヒトガタの身体になった挙句、スミスの攻撃で消し飛んだんだった。

 

「どうしたんですか?何か言いにくいことでもあるんですか?」

 

神通が真顔になっていく。

ヤバいヤバい……せっかく事件を解決したというのに、このままでは私は死ぬぞ?

……何か、何か使えそうなものは残ってないか?

ハッ、あそこの陰に盗品が残っている!?

 

「神通っ、これを見てくれッ!」

 

すかさずそれを拾い上げ、神通に差し出す。

 

「………………へぇ、それで何か言い残すことはありますか?」

 

あれ、神通の反応が芳しくない?

何かマズいことをしてしまったのか?

 

 

 

 

 

ふと自分が持っているものに目をやると、そこにあったのは穴だらけになった那珂ちゃんのBDだった。

 

「あ、あの……これは……。」

 

「バカなことをした人へはお仕置きをしないといけませんよね?私は体罰肯定派です、しかし何でもかんでも叩いて終わりというのは逆に教育になりません!」

 

反論は許さないというように、語尾を強めて言う神通。

 

「貴女がここで何をしていたのか追及はしません、ですが廊下の掃除をほったらかしにしていたのは事実。よってここの小屋の後片付け及び、鎮守府全ての清掃が終わるまで寝ることは許しませんッ!!」

 

「えっ、でも昨日の晩は一睡もしてな「いいですね?」……はい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァハァ、やっと掃除が終わったぞ……。

一人で鎮守府全てを掃除させるなんて鬼畜の所業だ……。

あれから更に丸一日掛かった……その間は寝てもいなけりゃ、ご飯も食べてない。

これ以上は冗談抜きで命に係わる……。

結局掃除は誰も手伝ってくれなかった、それどころか神通はワザと清掃係の連装砲ちゃんを休ませていたらしい。

 

あれだけ頑張って犯人を探して、更には死闘まで繰り広げたというのに得たものが一つも無い。

それどころか神通に二回も怒られて、カマキリには死ぬ寸前まで追い詰められ、挙句の果てには罰を受けた。

何一つ良いことが無かった、ここまでに私の運は悪かっただろうか?

 

せめて瓦礫の中に何か使えるものが残っていないか調べたが、ほとんどの物は破損していたり、最初からゴミだったものばかりだった。

駆逐艦パンツもあの戦いで消し飛んだのだろう、恐らく人に擬態するために衣類を求めたんだな。

 

それにしても神通は私に対する当たりが強くはないだろうか?

私が配属された当初はそうでもなかったんだが、私が他所の鎮守府の駆逐艦娘と狩りに出るようになってから徐々に厳しくなっていき、そしてここの鎮守府に雷と電が配属されてからそれはピークを迎えたんだ。

私が何をしたというんだ?何だ?駆逐艦娘と仲のいい私に対する嫉妬による嫌がらせか?

えっ、日頃の行いが悪いせい?自分の胸に手を当てて考えてみろだと?

何を言い出すかと思えば、私は常に清廉潔白だぞ?

それに胸に手を当てても、そこにはムニムニと柔らかい脂肪の塊があるだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっと自室まで戻ってこれた、今日は一日中寝ていても文句は言われないだろう。

パジャマに着替えることも無く布団に潜り込む、食事も風呂も後回しだ。

 

「オォォォォ……。」

 

「キィィィィ……。」

 

眠りに就こうとした瞬間、どこから入って来たのやら枕元にジョニーとスミスがやって来た。

 

「何だ?もう眠いから、お前らの相手はしてやれんぞ。」

 

そう言う私に対して、ジョニーはビー玉のようなものを差し出してきた。

気怠げに布団から手を伸ばし、それを受け取る。

私が玉を受け取ったのを確認すると、二匹はそそくさと立ち去った。

 

受け取った玉をしげしげと観察してみる。

玉は薄紫色に光り輝いており、光源が無いのに玉そのものが仄かに光を発しているように見える。

見れば見る程に美しく、まるで吸い込まれてしまいそうな魅惑の玉だ。

最初はビー玉かと思ったが指触りもガラスとは全く違う、それどころか今まで一度も感じたことのの無い手触りをしている。

これは宝石と呼ぶことさえおこがましい、もっと神秘を込めた言葉にすら出来ないナニかのようだ。

 

「……こ、これは一体?」

 

未知との遭遇に疑問が湧くが、襲い来る眠気には勝てず、玉を枕元に置くと眠りに就く。

あいつらはこれを私に渡すためだけに来てくれたんだな、几帳面な奴らだ。

これが何かは知らないが、とても素晴らしいものだということだけは理解出来る。

 

フフッ、何も良いことなんて無かったと思っていたが、こんな素敵なものを貰えるなんてまだまだ人生も捨てたものではないな♪

 

 

 

 







最後に長門が貰った玉は、とっても麗しくてすっごく眩しいあの玉です。
みんないっぱい集めたよね?




▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。