天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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今回はろーちゃんが大活躍ですって。Danke!
演習でも実戦と同じようにどかーん、どかーんってやっつけちゃうって。
がんばるー、がるるー。




天龍ちゃんと演習2

 

 

 

 

 

「大丈夫ゼヨ?念のため秘薬飲んどくゼヨ?」

 

破れかぶれで装甲空母鬼に戦いを挑んだオレは、あっという間にボコボコにされレンタクに乗せられた。

当然のようにロッカー室ではなくベースキャンプに運ばれ、更衣室に戻ることが出来ず仕方なくもう一度出撃。

再び装甲空母鬼に挑んだものの先程の焼き直しのように敗北、またしてもレンタクのお世話に。

三度目の正直と言わんばかりに装甲空母鬼に挑むものの、結局瞬殺。

 

記念すべき初の3オチは装甲空母鬼でした……って何の記念だよ!?

あぁもう酷い目に遭った!

 

大体ブレイヴってなんだよ!?

思うように動けねーし、攻撃技は貧弱だし、納刀も何だか変だし……。

納刀するだけで体力とスタミナがどんどん減って何もせずに死にそうになったぞ!!

 

「何で鎮守府に深海棲艦がいるんだよ!?これ演習じゃなかったのかよ?」

 

「ここの鎮守府では生態観察と訓練も兼ねて、深海棲艦の飼育をしているゼヨ。」

 

「深海棲艦の飼育ゥ!?」

 

なんだそれ!?そんなことが可能なのか?

 

「当然、本土の鎮守府でそんな危険なことはやっていないゼヨ。アタリハンテイ力に縛られたカリュード諸島だからこそ出来ることゼヨ。とはいえそれでも危険なことには変わりないから、やっている鎮守府は非常に少ないゼヨ。」

 

「鎮守府に深海棲艦が攻めてきたワケじゃないってのは理解した。だけどなんで演習に深海棲艦が出て来るんだ?オレの知ってる演習と全然違うんだけど……。」

 

演習って艦娘同士が編隊を組んで模擬戦をする集団訓練だろ?

だったらこっちの演習でも、狩娘同士が戦って腕を磨くんじゃないのか?

 

「決められた装備とアイテムを使って訓練所内の闘技場で深海棲艦と戦ったり、同じく決められた装備とアイテムでフィールドにいる深海棲艦を探し出して戦うのが狩娘流の演習ゼヨ。狩娘同士で戦い合ってもアタリハンテイ力でダメージにならないし、闘気も練気も溜まらないから演習にならないゼヨ。狩娘同士で勝負がしたいのなら演習の攻略タイムを競い合って勝負するゼヨ。装備やアイテムを支給して条件を均一化しているから本人の実力がそのままタイムになるゼヨ。みんなで競い合ってお互いを高め合うゼヨ!」

 

「まぁそれは分かったけど、ドスイ級を倒したばっかりのオレの相手に装甲空母鬼って厳しくない?」

 

「それについてはすまんゼヨ、ワシの手続きミスゼヨ。本来なら演習相手に選べる深海棲艦の強さは受ける狩娘のハンターランクで決まるゼヨ。オヌシはまだまだ低ランクの狩娘ゼヨ、だから受けられる演習のレベルもそれに見合ったものしか選べないゼヨ。それなのに間違えて今のオヌシでは受けられない装甲空母鬼討伐演習を選んでしまったゼヨ。戦うのはオヌシだけど手続きをしたのはワシゼヨ。それで間違えてワシのランクのままで申請してしまったゼヨ、決してワザとではないゼヨ。とはいえこれは装備指定の演習で、みんな同じ条件で戦っているゼヨ。だから決して勝てない相手ではないハズゼヨ?」

 

決して勝てない相手ではないって……。

閉ざされた空間で初見の相手、それも見るからに強そうな深海棲艦と一騎討ち。

そんなの無理ゲーだって。

こちらは慣れないブレイヴスタイルでろくに身動きも取れないっていうのに、逃げ場も無い闘技場内であんなデカい深海棲艦に追い回されるとかシャレにならん。

あのデカい腕に何度も叩き潰されて、心身共に挽肉になるかと思ったぜ。

 

「もし一人で厳しいと感じたら仲間と協力してチャレンジするゼヨ。そうすれば記録は縮まるし、連携の練習にもなるゼヨ。大勢で参加するデメリットなんて報酬金が減る以外に無いゼヨ。むしろ一人で参加する方がよっぽど損ゼヨ。仲間との絆を大切にするゼヨ。」

 

「だったら師匠も一緒に受けてくれよぉ……。」

 

「それもいいけど、今回の目的はオヌシの仕上がりを見ることゼヨ。だから今回はオヌシ一人で頑張るゼヨ。二人で戦う場合は深海棲艦が相方に気を取られている隙に、アイテムを使ったり大技を繰り出せばいいゼヨ。だけど一人だとそうはいかないゼヨ、相手は常に自分だけを狙ってくるからアイテム一つを使うのにも一苦労ゼヨ。だけどどんな相手にも付け入る隙はあるゼヨ、観察を怠らないことが大事ゼヨ。」

 

簡単に言ってくれるなぁ。

勝てるって言われても現状じゃ、またしても装甲空母鬼に一捻りにされて終わりじゃん。

 

「心配せずとも今度はちゃんと見合ったランクの相手を用意するから安心するゼヨ。二の轍は踏まないゼヨ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠に言われて仕方なくもう一度演習をすることになったオレはまたしても更衣室で着替えていた。

着替えていたんだが……やっぱりこれ着なきゃダメなのか?

 

 

 

 

 

天龍ちゃんの現在の装備

 

武器:鉄刀

頭:朝潮ハット

胴:朝潮スーツ

腕:朝潮スリーブ

腰:朝潮スカート

脚:朝潮ソックス

護石:無し

スキル:砥石使用高速化、節食、探知

スタイル:ギルド

狩技:気刃解放円月斬り、鏡花の構え

 

 

 

 

 

ツ級頭の島風に比べれば全ての防具が同じシリーズなだけあって、見た目の統一感はバッチリだ。

見た目の統一感はな……、問題はオレがこの服を着るってことだ。

朝潮型の格好をしたオレかぁ……。

 

『朝潮型駆逐艦の天龍です司令官!アゲアゲで行きましょ、このクズ!』

 

……我ながらこりゃねぇわ。

鉄刀はいかにも刀といった外見で、非常に格好いいが肝心のオレがこの格好じゃなあ……。

それに朝潮ハットっていってるけど、これって大潮や霰が被ってるヤツじゃね?

確かに朝潮型ではあるけどさ……。

そういや雷や電は暁や響とお揃いの帽子を持っているって言ってたな。

ということはひょっとすると朝潮や満潮もお揃いの帽子を使ってんのかもな……。

ちょっとだけ見てみたいと思ったのは内緒な。

 

スキルの砥石使用高速化っていうのは便利そうだが、この探知っていうのは役に立つのか?

たまに敵の位置が分かったり、ペイントした時に詳細情報までが分かるスキルなんだろ?

だけど闘技場って閉ざされた空間じゃん。無いよりマシだが……。

この節食っていうのも飲食物を節約出来るから有用っちゃ有用だが、食べ残しをずっと持っておくのって汚くない?

持ち物は応急薬と携帯燃料に携帯砥石の3点セット、粉塵とかいうのは入ってなかった。

まぁ今回の相手はオレのランクに見合った相手だって言ってたし、相手が弱いのなら用意されたアイテムもこんなもんか。

そして最後に支給用の狩技ドリンクが一つ。もう見たくもないんだが捨てちゃダメか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

BGM:死闘の円形闘技場

 

 

 

「ロロロォォ……。」

 

プールの闘技場に足を踏み入れたオレを出迎えたのはドスイ級によく似た中型の深海棲艦。

丸みを帯びたイ級とは違い、全体的に角張ったシルエット。

笑っているかのようにつり上がった口元。そして『ロロロ』という独特の鳴き声。

初見だが間違いなくこいつはドスロ級だ。

頭に生えたサメの背ビレのような形のトサカがその証拠。

頭に角を生やした大型のイ級がドスイ級なら、頭にトサカの生えたデカいロ級がドスロ級じゃなくてなんだってんだ?

この調子ならドスハ級やドスニ級もいそうだな。

 

「ローーーッ!!」

 

「うおっと!?」

 

オレが仕掛ける前にドスロ級が襲い掛かって来た。咄嗟に横に跳んで躱す。

お互いに身を隠せる場所がないので、ドスイ級の時のような不意打ちは難しい。

師匠の言っていたようにまずは様子を見ることにする。どんな相手にも付け入る隙はあるんだろ?

 

「ロッ!!」

 

短いながらも太い尻尾を振り回すドスロ級。

だがこの程度なら、大きく回避をせずとも少し距離を取れば簡単に避けられる。

 

続いて頭突きを仕掛けてくるドスロ級。

鋭い角が生えていたドスイ級に比べると、頭にヒレを生やしたドスロ級の頭突きは大したことはなさそうだが、それでも痛いのは嫌なのでしっかり躱す。

 

 

 

 

 

しばらく回避に専念し、同時に観察を続けた結果オレはあることに気が付いた。

 

「コイツの動き……ドスイ級と同じだ。」

 

頭突き、噛み付き、突進、尻尾攻撃、更には泳ぎ方そのものまで……どの動きもドスイ級と酷似している。

ドスイ級はオトモ込みだったとはいえ、既に倒した相手。

その攻撃パターンは既に覚えた(物理的な意味で)。

同じ動きしかしてこないのなら対処法も同じだ。

あの時とは違ってオトモがいないから立ち回りには注意する必要があるが、それでも負ける気はしないぜ!

 

「さぁ反撃開始だ!」

 

今日限りで朝潮型駆逐艦となった天龍様の実力を見せてやる!

それもただ倒すだけじゃダメだ。

見せるのは太刀独自の動きと練気、そして狩技を活かした戦い方だ!

 

ドスイ級との戦いでは偶然繰り出せた連続斬り。

あのようなコンボ攻撃は技のつなげ方というのが決まっているらしく、順番を間違えるとそこで攻撃の手が止まってしまう。

そんな連続攻撃、今度の戦いでは狙って繰り出す。

ドスイ級と行動パターンの似ているドスロ級なら攻撃を当てるのはそう難しくはない。

 

 

 

 

 

「暴れまくるわよぉ~。それ!どーん!ウザイのよッ!沈みなさい………………んちゃ。」

 

「ロロォッ!?」

 

思った通り楽勝……とまでは言わないが、オレの連続攻撃はドスロ級に次々と命中する。

えっ、言葉遣いが変?

うるせー、敢えて開き直って朝潮型になりきって戦ってみたんだよ。

こうすりゃあ逆に恥ずかしさも薄れるんじゃないかと思ってな。

………………うん、余計に恥ずかしくなってきた、やっぱりこのキャラやめるわ。

 

「地道にこれを繰り返してりゃ勝てそうだが、時間が掛かるし課題のクリアにはならねぇからな。何より無難過ぎてつまらん。練気も闘気も溜まってきたことだし、そろそろ気刃斬りを試させてもらうぜ!」

 

ドスロ級の動きが止まった瞬間を見極め、気刃を開放する!

 

「うおおっ、気刃斬りィ!」

 

勢いよく振り回す太刀の切っ先は吸い込まれるようにドスロ級へと命中する。

 

「ロロロ……。」

 

「……っておい、逃げんじゃねぇ!!」

 

気刃斬りの2発目を叩き込んだ時点でドスロ級は身の危険を感じたのか、オレの脇をすり抜けるように移動をし、続く3連撃を避けてしまった。

しかし勢いづいたオレの動きは止まることなく……。

 

「うわぁぁぁ、実戦で初めて放った奥義がこれかよォォ!?」

 

そのままの勢いで気刃大回転斬りを繰り出してしまうオレ、当然ドスロ級には当たらない。

気刃大回転斬りというのはその場で一回転しつつ、太刀を鞘に仕舞うまでが一連の動作。

大技を繰り出して隙だらけのオレ、オレの背後まで回り込んだドスロ級。

ここから導き出される答えは一つしかなく……。

 

「ロォーーーッッ!!」

 

「へぶっ!?」

 

オレは背後から放たれたドスロ級のタックルでぶっ飛ばされ、そのまま顔面からプールの水面に叩き付けられる。

 

「ぺっぺっ、口に水が入ったじゃねぇかチクショウ!」

 

強がってはみたものの結構なダメージを受けてしまい、それ程余裕は無い。

練気も無駄に消費しちまったし、どうしたもんだろ……。

 

 

 

 

 

取り敢えず体力を回復したいが、ここは訓練場内の闘技場。

隠れるとこも無ければ逃げるところもない。

敵の気を引いてくれるオトモもおらず1対1のこの状況。

こんな時に呑気に応急薬を飲んでたら、ガッツポーズ中にタックルを喰らってヘソを増やされる。

 

「そんなデジャブはゴメンだぜ。守れないのであれば攻めるのみ!攻撃は最大の防御ってな!!」

 

練気が無くなったのであれば、補充するまでのこと!

あいにく鏡花の構えを使用するには闘気がまだ足りていないみたいだが、気刃解放円月斬りなら問題無く使える。

気刃解放円月斬りを使えば練気はすぐさま溜まる上に、しばらくは減ることもないから気刃斬りは使い放題。

形勢逆転にはもってこいの技だ!

 

「よし、この技は直接当てる必要は無いって言ってたな。」

 

師匠の言葉を思い出し、ドスロ級からの妨害を避けるために少し離れた場所で狩技を使用する。

この距離ならバリア……じゃなくて、噛み付き攻撃は届かないな!

 

「いくぜ気刃解放円月斬りっ!」

 

太刀を構えて力を溜め始める……が。

 

「ロロウッ!!」

 

「おわっ!?」

 

突然オレ目掛けて飛びかかって来るドスロ級、見た目によらずかなりのジャンプ力だ。

狩技を繰り出す直前のことだったので避けられるはずもなく、あっという間に距離を詰められオレはそのままドスイ級に押し倒される。

あの距離からでも届くなんて信じられねぇ、オレの見通しが甘かったっていうのか!?

 

 

 

 

 

ドスロ級は倒れたオレを逃すまいと、そのままのし掛かり押さえつけてきた。

 

「ロロォ……。」

 

倒れたオレを見下ろし、舌なめずりをしながら口を歪めて笑うドスロ級。

 

拘束されて抵抗出来ないプライドの高い勝気な女。

そんな女に馬乗りになって見下ろし、いやらしく笑う不気味な魔獣。

あれ?こういうシチュエーションってまさか……?

 

「おっ、オレに乱暴するつもりだろ!?まだ昼間だってのに!!クッソー、深海棲艦なんかに辱められてたまるか!クッ、殺せ!!」

 

 

 

 

 

ガブリッ!!

 

 

 

 

 

「イッテェ~~!?」

 

ドスロ級に口では言えないあんなことやそんなことをされると思いきや、実際にされたのはこんなこと。

 

ガブガブガブガブ!

 

「痛い痛い痛い痛い!?ちょっ、おまっ!やめろっ!?」

 

ドスロ級に性的にではなく物理的に食べられるぅ~~~!?

アタリハンテイ力のお陰かオレの肉がちぎり取られるようなことはないみたいだが、それでも間違いない。この感覚は食べられている、コイツはオレの肉を食っているんだ!?

身体からは肉を1グラムもちぎられていないというのに、どんどん肉をかじり取られていく。

全くもって意味不明だが今はそんなことを気にしている場合じゃない。

 

「深海棲艦のご飯になんかされて堪るかぁ~~~!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かくして深海棲艦のお昼ご飯にされ掛けている我らが天龍。

しかしこの程度はまだ序の口だということを、今の天龍は夢にも思ってもいないのであった。

 

 

 

 







ドスロ級「ろーちゃんです、天龍さんを食べちゃいました!ドイツ生まれの潜水艦の底力を見たかー!」

天龍「いやお前深海生まれの駆逐艦だろ……。」



気刃斬りの途中の斬撃が当たってなくても、攻撃範囲の広い最後の大回転斬りが当たる事を信じて最後まで出し切って……結局当たらない。あると思います。



装甲空母鬼:空母の深海棲艦だが、航空機を呼び出すことはない。巨体に見合わぬ高い瞬発力を持ち、アクロバティックな攻撃を仕掛けてくる。太い2本の腕から繰り出される連続攻撃は、ベテランの狩娘でも回避は困難。
腕を集中攻撃して転倒させることが出来れば弱点である本体及び艤装の背中を狙いやすくなり、勝機が見えてくる。
天龍ちゃんをボコるためだけに選ばれた出オチ要因であり、ぶっちゃけるとこの役は誰でもよかった。
ゲーム中でも喋らず性格が分かりにくい扱い辛いキャラクター筆頭であるため、残念ながら今後の出番は無いと思われる。
行動パターンのモデルは猿型牙獣種とジンオウガを混ぜたものだが、ロクに戦う前に天龍ちゃんが敗北したため考えた意味も無かった。不憫……。




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