天龍ちゃんと狩娘   作:二度三度

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問題:デデ砂漠のガレオスと氷海のスクアギル、キモを集めるのはどっちが辛い?

答え:どっちも




天龍ちゃんと新たな世界2

 

 

 

パシャッ!!

 

 

 

 

 

工廠で立ち尽くしていたオレの耳に何やら物音が聞こえてきた。

これってカメラのシャッター音だよな?近くに誰かいるのか?

 

音のした方に振り向くと、工廠の機材の陰から人影が現れた。

 

「はぁ~い天龍ちゃん、久しぶり~♪目覚めたばかりでしょうけど私のことが分かるかしら~?」

 

黒い服、特徴的な喋り方、そしてあの不思議な輪っかを頭の上に浮かべている艦娘なんて世界ひろしと言えどもただ一人。間違いねぇ、あいつはヴォル……じゃなくて龍田だ!

 

「お前、龍田か?久しぶりだなぁ!」

 

何故か片手にカメラを持った龍田が笑顔を浮かべながらこっちにやって来た。

この艦娘としての姿になってから会うのは初めてだが、知識に無くても龍田のことは一目見りゃ分かるってもんだ。姉として妹のことが分からないなんてことはないさ。

 

「ほら天龍ちゃん、ボーッとしてないでカッコいいポーズを決めてね?再会の記念よ、記念。」

 

目の前まで来た龍田は唐突にカメラを構えながらそんなことを言ってきた。

突然のことで頭が追いつかないオレは言われた通り、つい反射的にポーズをとる。

まぁ他ならぬ龍田の頼みだし、特に断る理由もないからな。

 

どうだ、バッチリ決まった天龍様のカッコいいポーズは?

波絞……じゃなくて波紋使いの冒険第4巻の表紙みたいでイカすだろ?

 

我ながら下らねーことを考えながらポーズを取っていたが、顔の前に手をかざした瞬間に凄まじい違和感に襲われた。

右目だけじゃなくて左目でも物が見えている?ってことは今のオレは眼帯を着けてないのか?

このオレのトレードマークでもあるあの眼帯が無いっていうのはどういうことだ?

 

建造されてから眼帯どころか顔すらいじってねぇし、誰かに触られてもいねぇから建造された時点で最初から着けてなかったってことになる。

建造直後から色々とあり過ぎてそれどころじゃなかったとはいえ、艦娘は建造の際に肉体だけじゃなく服や艤装も一緒に用意されるから服の一部である眼帯も当然あるもんだと思ってたし、そもそも眼帯が無いなんて考えもしねぇから全然気付かなかったぜ。鈍いとか言うなよ!

 

 

 

 

 

「はいチーズ!」

 

パシャッ!!

 

色々と考えている間に、龍田にそのまま写真を撮られてしまった。

ってことはノリノリでポーズを決めてたとはいえ、眼帯無しの素顔を写真に撮られたってことか?ちょっと恥ずかしいな……。

 

「うふふっ、いい写真が撮れたわ~♪ありがとう天龍ちゃん。それじゃあさっそく鎮守府まで案内するわよ~。どうせあの提督のことだからロクに説明を受けてないんでしょ?」

 

そう言って工廠の出口を目指して歩き始めた龍田に当然オレも付いて行く。

しかし龍田にも『()()()()』って言われてんだな。オレも初対面とはいえあの変な提督には正直良い印象を抱けなかったし、やっぱり態度が悪いからあんまり人望がねぇのかな?

 

 

 

 

 

「天龍ちゃん、ここの工廠は鎮守府とは別館になってるの。だから鎮守府に行くには一度工廠の外に出る必要があるのよ~。」

 

そう言いつつ工廠の扉を潜り抜け外に出る龍田。当然オレも続いて外に出る。

いい天気だ、眼帯が無いせいか太陽の光がやけに眩しいぜ。

 

新たに着任したオレを祝福するかのように、爽やかな一陣の風が吹く。

 

 

 

 

 

「……さぶっ!?」

 

 

 

 

 

何だ何だ何だってんだ!?ただ風が吹いただけだってのに、やたらと寒いじゃねぇか!?

慌てて龍田の方も見てみるが、龍田はニコニコしながらこっちを眺めているだけで全然寒がっているようには見えない。

そもそも天気は晴れ。雲一つない素晴らしい快晴だ。今の気温は知らないが、少なくとも秋や冬じゃないのは確かだ。寒い要素が無い。

それと何故か歩いていると足の裏がチクチクして痛い。靴の中に小石でも入ったかな?

 

ふと龍田の目線が気になった。オレの顔じゃなくて身体の方を見ている?オレの身体に何か変なものでも付いてんのか?

オレも気になり、目線を下げて自分の身体を確認してみる。

 

 

 

 

 

……ふむ、我ながらよく引き締まった健康的な肢体が目に入る。出るとこはちゃんと出ているし、引っ込むところはしっかりと引っ込んでいる、スタイルには自信があるぜ。

続いて見えるのは飾りっ気のない白いブラジャーと同じく白いパンツ、やっぱり建造されたばかりじゃ洒落たデザインの下着は着てねぇな。

そしてお腹の真ん中には形のいい可愛らしいおへそが…………えっ?

 

 

 

 

 

「何じゃこりゃあああぁぁぁ!?寒いと思ったら服を着てねーじゃねぇか!!!」

 

「あらあら天龍ちゃん、やっぱり気付いてなかったのねぇ。」

 

「やっぱりってなんだよやっぱりって!?っていうかまさか写真撮ってたのって?」

 

「えぇそうよ、天龍ちゃんったらそんな格好で自信満々にポーズ決めちゃって可愛い♪」

 

「消せーっ!その写真のデータを消してくれーっ!!」

 

「うふふ、だーめっ♪」

 

 

 

 

 

チクショー、着任当日からなんて厄日だ!変な提督の下に就くわ、龍田に下着姿でカッコつけてる写真を撮られるわ。ってことはあの変な提督にオレの下着姿を見られてんのかよ!?

そもそも提督や鎮守府のことが気になってオレ自身に付いて考える時間が無かったとはいえ、服を着てないことにすら気付かないとか何やってんだよオレは!?

そういやさっき顔の前にかざした手にも指抜きグローブがはまってなかったじゃん!何でそこで気が付かないかなぁ?それに裸足で歩いてたんだぞ、足の裏の感触で分かるだろ!?

 

艦娘は建造された時点で当然服も一緒に作られてるし、最初から着込んでいるっていうのも常識だ。裸で着任する艦娘なんて聞いたことがないし、そんなのいたらただの露出狂だ。

第一服は最初から着ているっていうのが当たり前だから、ちょっと違和感があったとしても服を着ていないなんて無茶苦茶な発想に至るワケねぇだろ!?

ましてや龍田は普通に服を着てたもんだから尚更だ。

あれ、じゃあ何で下着は穿いているんだ?全裸は流石に論理的に問題があるからか?だったら最初から服も着せときゃいいだけの話だろーが!?

 

 

 

 

 

とにかく今のオレは眼帯どころか下着以外の服を身に着けていないってこった。しかも頭を触ってみたら電探すらついてねーじゃん!つーことはまさか……。

 

「ええい、ウオリャーーーッ!!オレの艤装よ、出やがれーーーっ!!」

 

本来は艤装を出すのに掛け声やガッツポーズなんて必要無い。意識するだけで出したり引っ込めたり出来る。しかしひょっとしたら出ないんじゃないかという悪い予感と、もしかしたら出るかもしれないという僅かな希望に賭けて、気合!入れて!いきますッ!……じゃなくて、全身に気合を入れて艤装を出そうと試みる。

 

 

 

 

 

…………うん、やっぱり何も出ないな。やる前から何となく分かってはいたよ。だけど半ばヤケクソとはいえ確かめない訳にはいかねぇだろ。

そして龍田の方を見てみると、案の定笑いながらこっちを見ている。

 

「もう天龍ちゃんったらお茶目なんだからぁ。でも変身するウル○ラマンや、ガ○ダムファイターみたいでとってもカッコよかったわよ~。これもビデオに撮っておけばよかったわ~。」

 

あぁもう、他人事だと思って……っていうかまた龍田に変なシーンを撮られるところだったぜ。

しかし服が無いどころか艤装すら無いって、もはやこれを艦娘って呼んでいいのか?

 

 

 

 

 

「うふふ、天龍ちゃんとっても混乱してるわねぇ。」

 

龍田は笑顔のまま、混乱するオレにとんでもないことを言い放った。

 

「あのねぇ天龍ちゃん、ここではインナー姿で建造されるっていうは当たり前のことなのよぉ。」

 

な……何だってェーーー!?

いやいやどういうことだよ、下着姿で建造されるのが当たり前って?じゃあ龍田もここに来た当初は下着姿だったってことか?

 

「提督はお金儲けに夢中だし、インナー姿とか全然興味の無い人だから見られたことなら気にしなくてもいいわよぉ。下着姿で興奮するのはオコチャマだとか偉そうに言ってたし……。」

 

いやいや、興味の有る無し以前に初対面のおっさんに下着姿を見られることそのものが問題だと思うんだが……。

そう思っていると龍田は更なる爆弾を投下した。

 

「それに場合によってはね、インナー姿じゃないと出発が出来ないクエストもあるのよぉ。」

 

一体何の話だよ!?大体クエストって何のことだ?作戦のことか?下着姿で出撃って変態を通り越して自殺行為だろ!?潜水艦だって下着姿じゃ出撃しねぇよ!!

それに服の事は百歩譲るとしても、艤装が無いっていうのはどういうことだよ?

服も無し、艤装も無しで出撃したら10秒立たずに海の藻屑になるぞ?

 

 

 

 

 

「まずは報告と詳しい説明も兼ねて秘書艦に会いに行きましょう。提督はあんな感じで仕事をしないから鎮守府の仕事は全部秘書艦がやっているのよ。」

 

まだまだ聞きたいことが山ほどあるが、今ここで説明する気はないのか、そのまま鎮守府を目指そうとする龍田。

だが再びこちらを振り向いてこう言った。

 

「そうそう天龍ちゃん、着任祝いと姉妹の再開の記念にこれをあげるわね。」

 

そう言いながら龍田が懐から取り出したのは……眼帯じゃねーか!?

さっそく左目に着けてみる。うん、悪くねーな。やっぱこれがなきゃキマらねぇ!

 

「うんうん、似合ってるわよぉ。それじゃあ防具が手に入るまではそれだけで過ごしてね。」

 

……えっ、くれるの眼帯だけ?せめて靴もくれよ、足の裏が痛いんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい職場での第一目標は出撃や戦果のことではなく、まず服を手に入れることと心に誓う天龍なのであった。

 

 

 






天龍は両目がちゃんとあるし、両目とも見えるよ派。
いくら元となった船の照明灯が片方破損していたとしても、せっかく新しく建造する際にわざわざ片目を潰す必要はないよね?



天龍ちゃんの現在の装備

武器:無し
頭:竜王の隻眼
胴:無し
腕:無し
腰:無し
脚:無し
護石:無し
スキル:無し

シリーズにもよるけどハンターのゲーム開始時の装備は基本的に防具無しのインナー姿。
それに倣って天龍ちゃんも装備無しのインナー姿、ハンターナイフやボーンククリすら持っていないMH4仕様。
建造直後からマフモフやユクモノ着てるっていうのも何か違う気がするし。



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