チマメクロニクル   作:日々はじめ

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エイプリルフールネタに感化され書いた。後悔はしていない!!


CHIMAME CHRONICLE

 「チノ!そっちいったよ!」

 

 「気を付けて。チノちゃん!!」

 

 「大丈夫です、マヤさん、メグさん」

 

 複雑な詠唱を高速で口にしながら魔力をコントロールして杖を上空に掲げ叫ぶ。

 

 すると、草が生え茂った緑豊かなこの地に不似合いな複雑な魔法陣がいくつもそのモンスターの周りへと展開される。そのモンスターはいきなり浮かび上がった魔法陣に驚き身を固める。

 

 それを好機と捉えたチノは最大威力で魔法を放つ。

 

 「カフェラテ!カフェモカ!カプチーノォォ!!!」

 

 可愛い声で放たれたソレは大きな地響きを起こしそのモンスターを消滅されるほどにまで至った。

 

 数秒の静けさは戦闘の終わりを告げるとともに勝利の鐘をも鳴らすことを意味していた。

 それを、知ったのかチノは小さく息を吐く。

 額から流れた汗はこの戦闘の激しさを知らしめていた。

 

 「お疲れ、チノ、メグ!」

 

 「はい、お疲れ様です。マヤさん」

 

 「チノちゃんの魔法ほんとすごいねぇ!」

 

 青い髪をした銃使いのマヤさん。

 赤い髪でラビット族のメグさん。

 そして、水色の髪の魔法使いの私。

 

 私たち3人は今この世界の平和を脅かしているとされている4大魔王という巨悪の根源を立つために世界を旅しています。すでに、3人の魔王は倒し改心させて残り一人倒せばこの世界は守られるところまで来ています。そして、その最後の魔王がいるとされている城の付近まできていた。つまりは―――最終決戦の時が来ているということです。

 

 胸の拍動が少しばかり早くなる。これは別にもう少しで戦いが終わるということからではない。単純に死を身近に感じているからだ。幾度となく死に直面しそのたびに仲間に助けてもらった。マヤさん、メグさん、そして―――。

 

 そこまで考えて首を横に振る。雑念が入ったままではいい戦いができない。

 

 「では、最後にもう一度作戦の確認をします」

 

 「えぇ、またぁ?」

 

 「マヤちゃん、そんなこと言わないで聞こ?」

 

 幸いにも、メグさんは近接型、マヤさんは遠距離型、そして私は回復魔法などのバックアップや攻撃に優れているので作戦は立てやすい。

 

 いつもはメグさんが切り込み、マヤさんが遠距離で援護射撃、そして私は状況を確認しつつ魔法を唱えるといった感じだ。

 

 しかし、相手は魔王なのだ。一筋縄ではいかない。最初に戦ったリゼ魔王はなんとかうさぎのぬいぐるみ作戦で勝てて、次のシャロ魔王はカフェインの魔法を使える私がその魔法を唱えたら勝手に自滅しました。次に、今までで一番強かった千夜魔王は本当に大変でした。千夜魔王の使い魔であるあんこといううさぎとのコンビネーションは手を焼きましたが最後は私たちのコンビネーションがソレを上回り勝てました。今は全員が復興の手伝いをしてくれています。

 

 しかし、千夜魔王は強敵でした…。ほかの魔王はまぁ…。

 

 「どうしたの、チノちゃん?考え事?」

 

 「いえ、なんでもありません。作戦は頭に叩き込みましたね。それでは、行きましょう」

 

 

 

 「ちょっと待ってよ」

 

 立ち上がり今にも城に歩を進めようとしたところで待ったを掛ける声が上がった。

 

 「―――なんですか、マヤさん」

 

 「いや、さ。これで最後なんだし円陣でもやっていかない?」

 

 頬を人差し指で掻きながら照れくさそうに口をしたマヤさんのその意図はすぐに理解できた。しかし、それをやっている暇があるならすぐにでも魔王を倒しに行ったほうがいい。そう思い反対しようとしたところでまた別の声が上がる。

 

 「いいよぉ!チノちゃんも、ね?」

 

 「メグさん…」

 

 「これで最後なんだから、少しでも思い出を作っておこ?」

 

 この戦いが終わればみんなは本来の目的を達成させることを目指すだろう。マヤさんは世界一のガンマンへ。メグさんはラビット族を探しに行く旅にでる、私はある人を探す旅がある。

 

 マヤさんもそれを知っていたの発言なのだろう、最後だからこそ皆で円陣を組みたかったのだろう。

 

 私は、小さく笑い二人が待つところまで駆け寄る。

 

 「ほんっとに、しょうがないマヤさん、メグさんですね」

 

 3人は肩を組合いお互いの顔を覗き込む。

 

 「じゃあ、いくよ!チマメ隊!ファイ!」

 

 オォォォォ!!

 

 その後は3人で高らかに笑いあいました。では、行きましょう。

 

 今までのほんわりとした雰囲気から切り替えて歩を進める。

 

 「これが、門か。メグ空きそうかぁ?」

 

 「うん!これぐらいだったら動かせるよ!!」

 

 目の前には高さが10mはあるだろう大きな鉄扉が行く手を阻んでいたがメグさんは少し力を入れただけでその扉は不気味な音を立てながら開けていく。

 

 なぜ、こんなに重そうな扉を動かせるかというと種族にある。この世界は3つの種族、魔族、人間族、ラビット族に分かれている。チノとマヤは人間族で魔王は全員魔族である。そして、メグはラビット族。特徴と言えば兎耳であり途轍もない身体能力を有しているということだ。しかし、その珍し故に誘拐などで数が年々減少しているという事実もある。

 

 「…敵はいなさそう?」

 

 「油断しないでください、マヤさん。罠が張り廻られているかもしれません」

 

 真っ暗で何も見えないが大抵はこういう場合落とし穴とかの罠が設置されているのが定番だ。

 

 「メグさん!明かりを!!」

 

 「うん!」

 

 私がそう指示するとメグさんは自分の武器である斧に魔力を流し込みそれを一振り。すると、刃から炎が噴き出し塊となって天井まで登りそこを全体照らしてくれた。

 

 そこで、私たち3人は目を見張った。何もないのである。本来、魔王がいる城は迷宮と化していてモンスターや罠がたくさん設置されているのが今までの定番であった。

 

 しかし、ここは迷宮と化していなく大きな円形の部屋に椅子がポツンとありそこに一人の女性が足を組み肘を椅子にかけ手で顎を支えていた。

 

 マヤさんとメグさんが今まで違ったパターンで驚いているが一番動揺しているのは、私だ。

 

 「なんでっ…!」

 

 目尻に涙が浮かんでくる。

 

 探していた人が目の前にいる。それだけで、今は十分だった。数年前に突然姿を消した私の家族。

 

 「ココアお姉ちゃん!」

 

 私の最愛のお姉ちゃんの元へ駆け寄ろうとする。

 

 しかし、それは叶わなかった。マヤがチノの手を強く握る。

 

 「ッ!離してください!あそこに、私のお姉ちゃんが!」

 

 その手を振り払おうとするが所詮私は魔法使いである筋力は全然ないので強く握りしめられた腕を払うことが出来ない。

 

 「落ち着け、チノ!あの人がお前の姉貴ってことはわかったがその前にお前の姉貴の目を見てみろ!!」

 

 マヤさんに言われお姉ちゃんの目を見つめる。

 

 「!?」

 

 暗闇だ。

 その眼は真っ黒に染まり何も移していないのがすぐにわかった。

 

 「あれは、操作系の魔法…?けど、一体誰が…」

 

 魔法をかじってる私はそれを見た瞬間お姉ちゃんが操られているのを知った。しかも、かなりの高位魔法だ。

 

 ココアは何も言わずその椅子から立ち上がると腰にぶら下げていた一本の刀を手に握りしめ数歩歩く―――そして、気付かないうちに刀の刃がチノの首元へと迫っていた。

 

 「チノちゃんッ!」

 

 メグが一瞬にしてそれに反応しチノの服をつかみ投げる。

 

 「ッ!」

 

 突然のことだったので受け身をとることが出来ずに体にダメージを負う。その場から体を起こし私が今いた場所を見るとそこには鍔迫り合いしているココアとメグの姿があった。

 

 間違いなく、今死んでいた。

 

 メグがいたからなんとかなったが一人だったら、いやラビット族がいなく大多数でも今の一瞬で死んでいた。それほどの殺気を感じた。

 

 死を改めて実感すると体が震え始める。

 

 なんで…ッ!死にそうな目には何度もあったのに何を今更怖がって…!

 

 この時チノは気づいていなかったが震えていたのは別に死ではない。具体的にはココアに殺されかけたという事実に震えていたのだ。

 

 「チノ!落ち着け!」

 

 マヤがチノに対して叱責する。

 

 状況を立て直さなければ、そう思い体を動かそうとするが―――

 

 「あ…あれ?」

 

 足に力が入らず生まれたての小鹿のようになる。震える足に力を入れようと試みるがまったくもっての無駄とかす。

 

 「チノちゃん!早く!この人思った以上に力が強いから私だけじゃあまりッ!」

 

 時間がもたない。そういうことだろう、実際メグは少しずつ後ろへ押されている。

 

 「くっ、チノまずは撤退だ!!」

 

 マヤがすぐさまチノの傍らまでよるとわき腹を持ち担ぐ。

 

 「メグ!!」

 

 「うん!」

 

 「―――!!」

 

 メグが魔力での身体強化を使い斧でココアを吹き飛ばす。それを境としてマヤとメグは扉まで走り出す。

 

 「お、追ってこない!?」

 

 マヤが振り返るとココアは吹き飛ばされたところから動かずジッとこちらを見つめるだけだった。

 

 その行動は不明だが好機と感じた二人は全速力へ外へ出た。

 

 城からそこそこの距離に用意していた拠点へと戻り腰を下ろすと同時にマヤは口を開く。

 

 「チノ、わかっていると思うけどチノの行動で今私とメグの命が危険に晒された。どんな理由であれ私たちは今死にかけた、チノは今人殺しに成りかけたんだ」

 

 「マヤちゃん、言いすぎじゃ…」

 

 「―――いえ、マヤさんの言う通りです。私はお姉ちゃんを探し出すのを目標としていました。そして、そのお姉ちゃんが魔王だという事実よりも先に再会を喜んでしまいました…。本当にすみませんでした」

 

 チノは先ほどまでの失態を頭の中に思い浮かべる。

 

 頭を下げると地面が少し湿っているのが目に入り頬を撫でる違和感に気付いた。

 

 「わっ!ごめん、チノ!泣かそうと思ってなくて…」

 

 こういう時にマヤさんはすぐに謝ってくれます。先ほど咎めたのは本当に私たちのことを心配してくれている証拠です。

 

 袖で涙を拭いながら深呼吸して落ち着かせる。

 

 「気にしないでください、もう大丈夫です」

 

 「いいの?お姉ちゃんとその…」

 

 「はい、もう覚悟を決めました。あの魔法を解きお馬鹿さんのお姉ちゃんを必ず連れ戻します!」

 

 先ほどまで感じていた恐怖は抜けていた。しかし、改めて考えると不思議な点がある。

 

 「…あの見た目は完全に魔王のものだったんだがチノの姉貴って人間族だろ?」

 

 そう、その通りだ。私は人間族でありココアお姉ちゃんも人間族だ。けれども、あの禍々しいオーラに加え魔王特有の

 

 「『コルヌー』があったね。あれは本物だよね、チノちゃん」

 

 コルヌー。

 それは強大な魔力の元に形成された魔王だけが持つ特別な角だ。

 

 そして、それは人間族のはずの私のお姉ちゃんの頭にもしっかりと形成されていたのだ。

 つまり、人間族でありながら魔族でもあるというのだ。

 

 「…多分あれはココアお姉ちゃんを操っている黒幕のせいです。あの高位魔法を解けばもとに戻るはずです」

 

 顎に手をかけ自分の考えを述べてみる。

 

 先ほど見たあの純黒な瞳は明らかにおかしい。大きな魔力も感じることが出来たし。しかし、だとしたら一体だれがこんなことを?

 

 「高位魔法?それを使えるのはこの世界でも数えるほどいないんじゃなかったけ?」

 

 高位魔法というのは魔法の極致に達した者のみが得られる魔法である。その稀少さゆえに魔法を見るだけに大金を叩く貴族がいるというのはこの世界に住む人たちの常識でもあった。

 

 この魔法の恐ろしいところはすべてがオリジナルで形成されているということだ。本来、魔法というのは魔法陣を書いてそれを組み合わせ反応を見て仕上がったならその魔法陣を自身が持つ杖に記憶させるものだ。つまりは、積み重ねが大事だということになる。けれども、高位魔法は違う。極致に達した者の頭の中に直接魔法陣が刻まれるらしいのだ。

 

 その極致に達した者の一番の願いに反映され高位魔法は形成される。

 

 力を求めた者は強力な魔法を。

 

 知恵を求めた者は奇想天外な魔法を。

 

 優しさを求めた者は暖かい魔法を。

 

 魔法というのには必ずしも相殺できるという定石がある。こちらが炎の魔法を使った場合相手の使う水の魔法で相殺されるといった感じだ。

 

 けれども、その定石は高位には通じない。

 

 受けたら最後、ということになる。

 

 「あんな魔力の流れは見たことありません…。間違いなく高位魔法、しかも人を操るのに特化したものです」

 

 「じゃあ、どうするの?私は魔力が少ないから身体強化もあまりできないし…」

 

 「―――私に考えがあります。二人はココアお姉ちゃんの足止めをお願いします」

 

 「…。わかった、チノを信じるよ!」

 

 「うん!」

 

 「あいがとうございます、マヤさん、メグさん!」

 

 

 二人に感謝して立ち上がる。

 

 

 「再度見ると、ほんと不気味だなぁ」

 

 私たち3人はあの扉の前まで戻ってきていた。メグがこちらを向き静かに頷いてきたのでチノとメグも頷きで返す。

 

 

 「来たよ、お姉ちゃん」

 

 「―――」

 

 ココアは椅子に座りながらこちらを眺めている。そして、ゆっくりと立ち上がり

 

 「来ます!!」

 

 ココアの姿と消えたと同時に戦闘の鐘が鳴る。

 

 「メグさん!」

 

 「うん!」

 

 メグが斧を振るうとそこにはココアの姿があった。

 

 斧と刀の金属音が大きなホール中へと響き渡る。

 

 「マヤさん!」

 

 「おう!任せて、レベルアップした私の力を見せてやる!!」

 

 マヤの両手に握られた2丁の拳銃から銃弾が飛び出す。

 

 「―――ッ!」

 

 ココアはその場から離れ銃弾から難を逃れる。しかし、暇は与えない。与えてしまったらそれこそ致命傷となりかねない。

 

 「パトリオット!」

 

 水の最上級魔法、パトリオット。これは最初に戦ったリゼ魔王から教わった魔法だ。水がレーザーの如く飛び出てコンクリートでできている地面を鋭利に削る。

 

 ココアがこちらの攻撃に気付いた時にはもう遅い。回避ができないと悟ったココアは力任せに刀を振るう。

 

 ドッパァン!

 

 辺りに水が飛び散る。その先には無傷な姿で佇むココアが水に髪を濡らしながらそこにいた。

 

 「力任せに魔法を防いだ!?」

 

 驚きが身を支配する。まさか、力任せに来るとは思っていなかった。けれども、これはチャンスだ。

 

 「メグさん!この水に向かって炎を!!」

 

 「わかったよ!」

 

 メグが斧に魔力を流し込むと炎がその斧を包み始める。

 

 「セイッ!!」

 

 一閃。

 

 すると、炎が水に向かって飛んでいく。高温であるその炎を受けた水は蒸発して水蒸気となる。

 

 大量の水が水蒸気となったために煙が室内を晦ます。

 

 「チノ!」「チノちゃん!」

 

 「はい!」

 

 私は駆けだす。今度は誰もそれを妨げない。

 

 「ココアお姉ちゃん!」

 

 私はそう叫びながら杖に魔力を注ぎ込む。すると、杖の先端が水色の光が現れる。

 

 高位魔法『ラビット・ハウス』

 

 これがチノの持つ最大魔法だ。

 

 発動条件は対象への杖の接触。それだけでいい。

 

 対象を空間へ誘う。そして、その空間はありとあらゆるモノを無効化し上書きする。そして、これは回復魔法であって回復魔法ではない。

 

 生から死への上書きすら可能。しかし、その逆は不可能。だから殺すことはできるが生き返させることは不可能。すべての傷は完治させることが出来るものだ。

 

 千夜魔王との戦いの時に発現した思いやりと憎しみの魔法である。

 

 その空間は真っ白なものだ。何も存在しない、ただの白。

 

 「―――お姉ちゃん」

 

 「チノ…ちゃん?」

 

 明らかに自我を保っている。成功だ―――!

 

 「わっ!どうしたの、チノちゃん?」

 

 いきなり抱き着かれて体をすこし後ろめるがすぐに体制を立て直し手を頭において撫でててあげる。

 

 「こんなにも甘えん坊になっちゃって…。お姉ちゃん冥利に尽きるね!!」

 

 「もうっ!お馬鹿さんなんですから…」

 

 この空間は時間という概念は存在しない。なので、こちらでどれだけ時間が経とうがあちらでは一瞬しか時間が経過していないということになる。

 

 しかし、この魔法は欠点がある。魔力を使わないこの魔法は代わりにあるものを媒介として発動される。

 

 ―――それは、術者の寿命である。

 

 長居はできない、そうは分かっていても久しぶりの再会のため体がうまくいうことが聞かない。涙が溢れ出てくる。

 

 「ココアお姉ちゃん、聞いてください。お姉ちゃんは――」

 

 「操られていたんだよね?」

 

 「!?気付いていたんですね…」

 

 「うん、これでも魔法使いの家系だからね」

 

 「では、術者もわかっているんですか?」

 

 ココアはその発言に対して静かに頷く。

 

 「い、一体誰が?」

 

 私の問いは答えられることがなかった。

 

 ココアは手でチノを体から引き剥がす。

 

 「いい?チノちゃん。現実に戻っても目を背けないで。戦うの。それしかもう方法が残っていないから」

 

 「ココアお姉ちゃん!!」

 

 「じゃあ、そろそろ戻ろう?これ以上チノちゃんの寿命を私のために使ってほしくないな」

 

 まさか、もうそこまでこの魔法について理解しているとは。

 

 チノは小さくため息を吐き、微笑みを浮かべる。

 

 「では、全部終わったらすべて話してくださいね。何があったのか包み隠さず。それと、ずっと前の昔話もしましょう。もちろん、私が淹れたコーヒーを飲みながら」

 

 「―――うん、そうだね」

 

 返答までに少し間があったのを不思議がるが上書きへと移る。

 

 『お姉ちゃんが操られている』という事実から『お姉ちゃんが操られていない』という事実に。

 

 「ありがとうね、チノちゃん」

 

 その言葉の真意を確かめる前に私たちは元いたところへ帰ってきていた。

 

 と、同時に体に声をも凍らせるほどの激痛が走る。

 

 「チノ!大丈夫!?」

 

 「ココアさんも大丈夫ですか!?」

 

 「はぃ…なんとか…ッ」

 

 「ぅ、うん。大丈夫だよ、確かメグちゃんだっけ?」

 

 どうやら操れているときはこちらの声は耳に届いていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

  「―――小娘が」

 

 

 

 

 

 

 

 どこからともなく声が聞こえた。すると、チノたちの4人に向かって光の槍が襲い掛かってくる。突然の奇襲に反応できたのはただ一人、ココアだけだった。その様は奇襲されると知っていたかのような動きだった。

 

 

 「皆ッ!」

 

 ココアは3人を突き飛ばす。チノ、マヤ、メグは突然のことで頭が回らなかったが目の前にある光景は嘘ではない。

 

 光の槍がココアの胸へと突き刺さっていた。

 

 「・・・え?」

 

 静かにココアの体が地に伏せる。即死だった。

 

 胸からは夥しいほどの血液が流れ徐々に地面を赤く染め上げていく。

 

 「キャァァアアァァア!!!」

 

 チノが喉が裂け切るのではないかと錯覚させるほどの悲鳴を上げる。マヤとメグは動揺しているがすぐに臨戦態勢に入る。

 

 「ふん、出来損ないが。邪魔をしおって」

 

 声をしたほうを見るとそこには白い体毛に覆われた一匹の動物が空に佇んでいた。

 

 チノはそれ見て言葉を小さく零す。

 

 「ティッ・・・ピー・・・?」

 

 そこに居たのはチノの使い魔であったティッピーの姿があった。

 

 なぜこんところに…。だって、ティッピーは…。

 

 「ティッピー!なんでお前がここにいるんだ!だって!」

 

 「死んだはず、と言いたいのか?」

 

 そう、ティッピーは千夜魔王との戦いの場であったアーマ・ウーサであんこからチノを守る形で命を落としたのだ。そして、その時にチノは助けたい、憎いという二つの感情のもと高位魔法の発現に至ったのだ。

 

 「生憎、あれぐらいでくたばるワシじゃないわい。ワシが黒幕だともうわかっておろう。貴様たちがまさかここまで来るとは思っていなかったが、ここで終わりじゃ」

 

 ココアが言っていた黒幕がティッピーだったとは誰もが予想だにしない出来事だ。

 ティッピーの目的は世界征服らしい。なんと在り来たりな悪者の考えだろうか。

 

 姉の死と、仲間が黒幕だったことを知ったチノの心は折れかかっていた。ダメだ、戦えない。

 

 

 この時チノの頭の中にはココアの言葉が過ぎった。

 

 あの発言からするにココアは自分が元に戻ったら死ぬことを薄々感づいていたのかもしれない。

 

 ―――戦って、チノちゃん!

 

 耳にココアの声が聞こえた気がしてハッとして顔を上げる。

 

 ココアの顔は苦しみよりも笑顔と見える顔だった。

 最後の最後に姉として行動出来て嬉しかったのかもしれない。

 

 「チノちゃんどうするの!?」

 

 メグが叫ぶ。

 

 ここで悔やんでいてはだめだ。ココアお姉ちゃんに顔向けができるように立ち直らなければ…!

 

 「戦いましょう!マヤさん、メグさん!これが本当の本当に最後の戦いですっ!!」

 

 「あぁ!」「うん!」

 

 私たち3人は駆ける。相手を倒すために!

 

 

 

 「こい、ぼんくら共!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦いは熾烈を極めた。ティッピーが繰り出す最上級の光魔法と高位魔法『ブレンド』といった人心掌握に長けたのが厄介極まりない。この高位魔法で魔物たちを操り仕掛けてくる。それを倒しながらティッピーの攻撃を避けなければいけない。

 

 難易度は危険。今までにないほど死を隣に感じる。

 

 

 けれども、負けられない。それがお姉ちゃんのためだからッ!

 

 「いっけぇぇえ!!」

 

 マヤが腰に掛けていた秘密兵器である銃へ魔力を流し込みティッピーに向けて放つ。

 

 凄まじい威力が襲い掛かるがそれを光魔法で受け止め反射させる。マヤはその場から引いて攻撃から逃れる。

 

 光魔法は主に反射を得意とする。

 先ほどみたいな槍の武器を作り出すことができるが本来は光を利用して反射させるのが得意というのが光魔法の実態だ。

 

 「メグッ!」

 

 「ハァァアアァ!!」

 

 魔力で身体強化をしたメグの一撃がティッピーへと襲い掛かる。

 

 ティッピーがそれに気づいた時はすでに遅くもろに攻撃を受ける。

 

 「クッ!!」

 

 ティッピーが地面に砂煙を上げながら伏せる。

 

 私は杖に今自分が持つ魔力をすべて流し込む。

 

 ―――まだです!これで最後にします!!

 

 

 

 

 「いっけぇ!チノ!!」

 

 「お願い!チノちゃん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 城に入る前に魔物に放った魔法を叫ぶ。

 

 

 

 

 「カフェモカ!カフェラテ!カプチィィノォォォォ!!」

 

 

 

 「グワァアアアァアア!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔法を放ったところには大きなクレーターが生じる。そこには何もいなかった。

 ティッピーを倒した。つまり、黒幕がいなくなったいうことだ。これまでの長い長い旅の物語に終止符を打って世界の平和を守ることが出来たのだ。

 

 

 

 

 

 私はすべてが終わったことに対する喜びに対して身を任せるよりも先に魔力切れとなった体が悲鳴を上げ意識を奪い取る。

 

 マヤさんとメグさんが何かを叫びながら涙してこちらに向かって走ってきますがそれを向かい入れるほどの体力と意識が持ちません。

 

 

 私は、静かに暗闇へと身を落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――なんだろう、この心地よい感触は。

 

 ―――なんだろう、この嫌いじゃない匂いは。

 

 ―――なんだろう、この落ち着く声は。

 

 「…ちゃん!チノちゃぁん!起きてぇ!!」

 

 

 私を呼ぶ声が、あの人の声が聞こえる。

 

 瞼をゆっくりと開けて見慣れた天井があるのを確認する。

 頬に冷たい感触があり新鮮味を帯びた感情が体中に駆け回る。

 

 「チノ?なんで泣いてるの?」

 

 「マヤさん…」

 

 「チノちゃん、大丈夫?」

 

 「メグさん…」

 

 なんだろう、思い出せない。長い夢を見ていた気がする。私はただの中学生でバリスタを目指す普通の女の子です。血生臭い夢を見ていた気がします。そこでマヤさんとメグさんと一緒に何かを成し遂げた気がします。

 

 目の前には泣いているチノに戸惑っているココアの姿があった。

 

 胸が高鳴る。おかしい、いつもならドライな対応をとるはず。それかお仕事に遅れているというのは時計を見てわかっているので慌てて準備をするはずです。

 

 けれども、早く仕事の準備をしなければという焦燥感は生まれず目の前の女の子がいたという事実がうれしいという感情しか生まれてこなかった。

 

 「えぇ!チノちゃん泣いてるの!?大丈夫?怖い夢でも見た!?今日のお仕事は休む?」

 

 チノは寝ていたベッドから足を下ろし少しずつココアさんの元へ近づいていく。

 

 もう少しで体がくっ付くという距離で立ち止まり顔を俯かせる。

 

 そして、私はココアさんへ抱き着きます。言いたかった言葉で。

 

 「…ココアお姉ちゃん!」

 

 ココアはいきなり泣きながら抱き着いてきたチノに対し最初は理解できなかったが次第に呼んでほしかった『お姉ちゃん』の名で呼ばれたことに気付いた。

 

 「ヴェアアアアアアアア!!」

 

 

 

 あまりの突然の出来事でうれしさのあまり可愛い女の子が出してはいけないような声で叫んでしまい家の中へ響き渡らせる。

 

 チノはこの後なんであんなこといってしまったのかと不思議がりあまりの恥ずかしさで顔を熟したリンゴのように赤くなったというのはチノの父親談だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お爺ちゃんなんて嫌いです!!」「なんでじゃ!!」「知りませんよ!!」

 

 

 数日間チノがティッピーから離れ機嫌を直すのが忙しかったというのも父親談と言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここは、木組みの町。

 

 静かで穏やかなこの町に一軒の喫茶店がありました。

 こだわりのコーヒーともっちもちの焼き立てパンが人気のその店の名は―――。

 

 

 おや?ここに一匹のうさぎがいますね。どうやらその店まで案内してくれるらしいです。

 

 

 そのうさぎについていくと喫茶店の看板が見えてきました。

 営業していることを知ると静かに扉を開けてみます。

 

 そこには、水色の髪の毛の女の子がいました。

 そして、店内には中学生ぐらいの女の子が2人と従業員と思わしき高校生らしき女の子とその友達の4人がいます。

 

 水色の髪の女の子は恥ずかしながらお盆で口を隠し、言葉をかけてくれます。

 

 

 

 「いっらしゃいませ。ようこそ、ラビットハウスへ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




備考
 
 コルヌーはラテン語で角を意味しています。

 あと、深夜テンションで書いたので誤字とか激しいです。ごめんなさい。


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