家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~   作:R0

77 / 104
予告通り『~追憶~ 闇夜の過去編』、これで最後です。……思ったより長くなりました。


そして、始まりへ

「ハァ…………ハァ…………ハァ…………」

 

模擬戦が終わって、輝夜は荒く息をつきながら、その場に座り込んだ。

 

「ハァ………ハァ………ハァ………」

 

輝夜は荒く息をつきながら、ルシフェルのほうを見た。ルシフェルは羅刹開匣が解けていて元の姿に戻っていた。今は気を失っているようだ。命に別状はなさそうだなと思い、輝夜は考え事し始めた。

 

(あの分身………………体の疲労が半端ないな……………。まだまだ、改善の余地があるな………………。そもそも、この程度の技で《死ぬ気の到達点》を使うのもどうかな……………。もっと………鍛え………なくてはな………。………明聖を………守る……ため………に…………も…………)

 

「パパ、大――――!!!」

 

遠くで明聖の声が聴こえながら、輝夜は疲労がピークに来たのか、後ろに倒れて気を失った。

 

 

 

 

それから時間が経って……………

 

「うっ………うん…………」

 

輝夜は白いベッドの上で目を覚ました。

 

「パパ!!!目を覚ましたのね!!!」

 

すると、ずっと側にいたのか明聖が喜んでいた。

 

「明聖………。ここは………?」

 

「医務室だぜ、ダークネス」

 

「…………ルシフェル」

 

すると、隣のベッドに座っていたルシフェルが声をかけた。輝夜と同じように医務室に運ばれたようだ。

 

「あ!!私、先生、呼んでくる!!」

 

輝夜が目を覚ましたことを報告するために明聖は医務室を出ていった。

 

「「……………」」

 

明聖が出ていったことで医務室は静けさに包まれた。しかし、すぐにルシフェルが口火を切った。

 

「しかし………俺に勝った癖に、俺よりも起きるのが遅いとはな………」

 

「そんな軽口が叩けるなら、大丈夫そうだな」

 

「チッ!皮肉が通じねぇ奴だな………」

 

「誉め言葉として受け取っておくよ」

 

輝夜の言葉にルシフェルは再び舌打ちすると、ベッドに寝転がって悔しそうに言った。

 

「あぁ~!それにしても悔しいな!!これでも、今まで負けたことが無かったんだがな………」

 

「……………」

 

「おまけにロヴィーノが言っていたドレイクを形態変化(カンビオ・フォルマ)させた鎧を使わせることもできなかったしよ!!」

 

(……………ロヴィーノはどこまで知っているんだ?)

 

ルシフェルの言っていることは《(アルマ)(トゥー)(ラ・ド)(ラゴー)(ネ・ネ)(ーロ・)(コルヴ)(ィーノ)》だと思われるがそれは輝夜がロヴィーノ教団を抜けてから判明したものだった。もともと、ドレイクを提供したのがロヴィーノみたいだから知っていてもおかしくなさそうだったが、それを差し引いても輝夜は畏怖を感じた。

 

「ダークネス!!」

 

すると、急にルシフェルが起き上がって、輝夜に声をかけた。

 

「…………なんだ?」

 

寝転がったり、起き上がったり、忙しい奴だなと思いながら、返事した。

 

「認めてやるよ。お前は俺よりも強い。《人類至上サイキョウ(最強・最恐・最凶)の人間》だ、って認めてやるよ」

 

「別に俺は《人類至上サイキョウ(最強・最恐・最凶)の人間》という肩書きなんかに興味無いが………それよりも何が言いたい」

 

「ハッ!!さすがだな。気づいていたか………。………俺は、これから先、お前以外のやつに負けない。たとえ、相手が100人、1000人、いや、1億人以上いたとしてもだ!!!そして、最後には必ずお前を倒す!!!!覚えていやがれ!!!!」

 

「…………好きに言ってろ」

 

「あぁ、そうさせてもらうぜ」

 

ルシフェルのこれからも挑んでやるという目に輝夜は呆れてため息を吐いた。

 

「あ!それともう1つ、お前に言いたいことがあったんだ」

 

「なんだ」

 

ルシフェルの言葉に輝夜が短く尋ねるとルシフェルは答えた。

 

「お前、ロヴィーノ教団の()()()()になれよ」

 

「…………は?」

 

ルシフェルの言っていることに輝夜は理解ができなかった。しかし、すぐに理解すると、ルシフェルに訊いた。

 

「………おい。どういうことだ?次期団長の座は次期《大空の大罪》のお前だろ。《大空》の波動を持っていない俺には無理な話だ」

 

「あぁ。それなら、俺が次期《大空の大罪》、お前が次期団長っていう風にするだけさ」

 

「…………そもそも、なぜ俺を団長にするんだ?」

 

「そんなの簡単な話さ。お前が俺に勝ったこととロヴィーノ教団って名前なら《闇》の炎を持つお前が団長になったほうがふさわしいからさ」

 

「たった1度だけの勝利だろ…………。それに俺は1度抜けて、戻って来たばっかりの奴だぞ。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》や他の連中が納得するのか?」

 

「大丈夫、大丈夫。俺が説得しておくし。それに、お前も知っているだろ?ここは実力至上主義だって」

 

「…………………」

 

「俺の場合も俺が1番実力があったからっていう理由で次期《大空の大罪》に選ばれたんだからな」

 

「…………………だから、俺が団長になるべきだと?」

 

「そういうことだ。(まぁ、それ以外にもあと1つ理由はあるがな)」

 

ルシフェルはふと、そう考えた。

 

「(こいつなら『死なれると俺の後味が悪くなる』とか、なんだかんだ適当な理屈を言って俺と違い、味方を死なせないようにするからな。まぁ、それよりも…………)それにお前にとっても都合がいいぜ」

 

「都合がいいだと……………?」

 

ルシフェルの言葉に輝夜が首をかしげた。輝夜は地位も名誉も興味なかった。だから何が都合がいいのかわからなかった。

 

「お前が団長になったら、お前が大事にしているあの小娘を守るのにも役立つと思うぜ?俺もお前もあまり好まないものだが権力っていうのは案外、馬鹿にできないものだぜ?」

 

「っ!!?」

 

ルシフェルの言葉に輝夜は言葉が詰まった。『権力』。この2文字は今まで貴族がさんざん使ってきたものだ。その恐ろしさは十分わかっていた。

 

(チッ!!卑怯な手を使ってくるな…………)

 

輝夜はルシフェルの意図に毒づいた。団長に就くことでその権力を使って明聖を守らせることができるとルシフェルは言っているのだろう。しかし、それには一理あると思った。明聖の持つ《光》の炎は死者の蘇生を可能にするものだ。利用されるのを防ぐためには団長になって注意を促しておけば、研究のために炎を提供されることはあるかもしれないが十分抑制になる。輝夜はそう考えて、ため息をついて、ルシフェルに話しかけた。

 

「…………わかったよ。だが、俺が団長になれる保証はねぇぞ」

 

「あぁ、それはわかっている。そこは俺に任せろ!」

 

「…………期待せずに待っといてやるよ」

 

その後、明聖が連れて来た医師に診てもらい、特に問題ないと判断された。それにより、輝夜は明聖と一緒に手配された部屋に向かって、その日は寝た。

 

 

 

 

そして、それから流水が流れるが如く過ぎていった。

 

数日輝夜の次期団長の推薦の話は、ルシフェルがあの日、すぐに《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》に輝夜が次期団長にするように薦めた。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちはそれに難色を示した。それは当然のことだった。輝夜は1度、ロヴィーノ教団を抜けた身で先程、改めて入団した者だったからだ。その時にロヴィーノが口添えをしたらしい。どう口添えしたのかわからないが、それによりルシフェルたちを次期《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》として、それとは別に輝夜が次期団長になることが決定した。いつの間にか、ロヴィーノ教団、全団員の耳に届いていた。もう、輝夜も諦めて、次期団長になることを了承した。

 

そして、その日から1週間後。輝夜は新団長、ルシフェルたちは新《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》に就任した。旧《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちはそのまま隠居する者、相談役や訓練兵たちの教官になる者と様々だった。リリアーナはそのまま、輝夜たちの秘書に残るようだった。

 

とりあえず、輝夜は当初の予定通り、明聖の身の安全を保証するようにした。これにより、明聖を不用意に利用する者はいなかった。

 

 

 

 

その日からさらに数ヵ月経った。

 

その間に地球では1人の中学生が赤ん坊の家庭教師(カテキョー)との出会いを果たし、騒がしい日々、戦いを送っていた。

 

そして、ベネスタンテ星では最後の戦いが起きていた。ロヴィーノ教団VSスペルラティーヴォ帝国だった。………………しかし、その戦いに均衡など起きていなかった。それは一方的な虐殺だった。

 

「う、うわあぁぁぁぁーーーー!!!!」

 

「ぎゃ、ぎゃあぁぁぁぁーーーー!!!!」

 

「く、来るなあぁぁぁぁーーーー!!!!」

 

スペルラティーヴォ帝国の兵士たちも当然、このときのために戦力をしっかりと強化していたのだ。しかし、彼らはロヴィーノ教団の猛攻に逃げ惑っていた。特に化け物のような体を持っている7人の男女から…………。

 

灼熱の熱さを持つ炎、100を超える死体の兵士たち、強靱な肉体を持つ狼男、本物(リアル)よりも精度の高い幻術、動きを鈍くさせる大海、8つの頭を持つ攻撃の効かない大蛇、そして鷲のスピードと獅子のパワーを兼ね備えた男。それぞれ、特殊な力を持つ7人にスペルラティーヴォ帝国の兵士たちは恐怖に染まって、逃げた。しかし、それは許されず、その兵士たちは数十秒も経たずに殺されてしまうのだった。

 

「手応えがねぇぞおぉぉぉぉーーーー!!!!」

 

「全くですね」

 

「…………怠い…………」

 

「早く帰って、ご飯、食べたいなぁ………」

 

「少しは我慢しなさいよ…………」

 

「ところでダークネスはどこに行ったのでござるか?」

 

「おそらく、メインに行ったんだろ。あいつなら問題ねぇよ」

 

全員が羅刹開匣の状態でルシフェルたち、《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》は話していた。すると……………

 

シュンッ!!!

 

ドラゴンを模した漆黒の鎧、《(アルマ)(トゥー)(ラ・ド)(ラゴー)(ネ・ネ)(ーロ・)(コルヴ)(ィーノ)》を身に纏った輝夜が何か手に持っていて、7人のところに移動してきた。

 

「ほらな」

 

それを見て、ルシフェルがそう言った。

 

「どうだったのですか?」

 

「すぐに終わった」

 

エンヴィーの質問に輝夜はそう答えると、持っていたスペルラティーヴォ帝国の国王の首を地面に放り投げた。

 

「「っ!!?」」

 

死体はともかく初めて見る生首にリリスとベルゼブブは小さく声をあげて驚いていた。同様に初めてだったジャバウォックとエンヴィーも目を見開いていた。しかし、4人共、すぐに冷静になり、その生首を見て、自分たちが勝ったんだと実感していた。

 

「俺は帰る。後は頼む」

 

すると、輝夜ルシフェルたちにそう言うと、ショートワープを使ってその場から消えた。

 

「彼、行っちゃったわね……………」

 

「まぁ、ここから先は私たちで十分ですからね」

 

「スペルラティーヴォ帝国の国王が討たれたでござるからね。それを両軍に伝えれば、この戦争も終わりでござる」

 

「そうだな。それじゃ、行くぞ」

 

ルシフェルたちはそう話し合って、スペルラティーヴォ帝国の国王の生首を拾って、両軍の兵士たちに伝えに行った。

 

そして、ルシフェルたちがスペルラティーヴォ帝国の国王が討たれたことを公表した。これにより、スペルラティーヴォ帝国軍は投降した。この戦いで2時間とも経たず、ロヴィーノ教団の犠牲者は0人だった。最後の戦争にも関わらず、圧倒的結果で終わってしまった。

 

ベネスタンテ星で1番の王族、スペルラティーヴォ帝国が墜ちたことで、世界中の貴族が投降した。これにより、長きに続いた革命軍と貴族たちの戦いはこれで終焉を迎えた。平民たちはその事実に大いに喜んだ。貴族たちに奴隷にされていた者たちは皆、解放された。そして今後、貴族たち、彼らの土地や資源などをどうするかについて平民たち、貧民たち、革命軍の代表者たちが集まって話し合いが行われた。その中には輝夜も参加した。当の本人は興味なかったのだが立場上、渋々と参加することになったのだった。

 

 

 

 

…………………しかし、その話し合いは無駄になるのだった。豊かだった土地や資源が廃れていくのだった。その原因は不明であり、貴族たちやロヴィーノに聞いても対策がわからず、最終的にベネスタンテ星では世界中が生きていくだけで精一杯の星となってしまったのだった。

 

貴族、平民関わらず、住民たちはそのことに絶望した。そして、ロヴィーノ教団は先祖が犯した罪により、ベネスタンテ星へと追放されたことに逆恨みするのだった。ロヴィーノ教団はロヴィーノの協力のもと、今の地球で起きている出来事、(トゥリニセッテ)に関しての情報、そしてロヴィーノ復活の方法を聞いて、《地球の破滅》という計画を立てた。

 

そして、計画を移すために地球へ行くことになったロヴィーノ教団。肝心の地球に行く方法はロヴィーノの《夜》の炎だった。しかし、それにも限度があり、計画に参加するメンバーは輝夜や《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》、ロヴィーノ教団の戦士たちだった。リリアーナなどの非戦闘員はベネスタンテ星に残ることになったのだ。そして、輝夜は明聖もここに置いておくつもりだった。

後見人はリリアーナに頼んだ。明聖もリリアーナを慕っているので問題ないと判断したのだった。そして、リリアーナはそのことを快く受けた。しかし、このことに明聖は輝夜と喧嘩したのだった。明聖としては輝夜が死ぬのは嫌だったのだ。しかし、現実は虚しく輝夜は行くことになった。

 

見送りの場に明聖の姿が見当たらなかった。輝夜はそれに心なしか悲しみの雰囲気を出していた。輝夜としても喧嘩別れの状態で心残りがあったのだ。しかし、自分が悪いんだと諦めて、ロヴィーノの《夜》のワープホールをくぐり抜けた。それに続くようにロヴィーノ教団の団員たちはワープホールをくぐり抜けた。そして、最後の1人がくぐり終わって、ワープホールが閉じようとしたときだった。

 

ダッ!!!!

 

誰かが人混みの中から閉じようとしているワープホールに向かって走り出したのだ。それが誰か気づいたリリアーナはその人物の名前を叫んだ。

 

「明聖ちゃん!!!?」

 

その人物は明聖だった。明聖は自分を呼ぶ声を無視して、ワープホールが閉じきろうとする前に飛び込んだ。

 

シュン……………

 

明聖が飛び込んだのと同時にワープホールは閉じきった。その場は今の明聖の行動に静けさに染まった。

 

 

 

 

しかし、そんなベネスタンテ星の住人の心境とは関係無く、物語は始まりへと向かうのだった。




次回から、『最終決戦編』が始まります。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。