家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~   作:R0

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ロヴィーノの暗躍

ベルゼブブたちがロヴィーノ教団に入って、数日が経った。ベルゼブブ以外の子供たちは訓練兵として入団したが、ベルゼブブは最初のテストで並の戦士を遥かに上回る戦闘能力を持っていることが判明したので、入ってすぐに最年少の正式の戦士となった。

 

そして、そのことについて、《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちとリリアーナ、ロヴィーノが話し合っていた。

 

「ベルゼブブ…………」

 

「この前、起きた研究所の壊滅の犯人か……」

 

「彼のテストを見させてもらったが、あの年であれほどの実力を持っているとはな………」

 

「しかも、彼は《雲》と《大空》の波動を持っています。そして、彼の2つの波動をダークネスの《闇》の炎の力で融合してみると………」

 

「融合は成功したのか…………」

 

大罪の7人(ペッカート・セッテ)》の1人がそう言うと、リリアーナは頷いた。

 

「はい。《雲》と《大空》が融合した炎、《暴食の炎》が誕生しました」

 

「《暴食の炎》………」

 

「はい。《暴食の炎》はルシフェルたちの《傲慢》、《憤怒》、《怠惰》、《嫉妬》、《強欲》、《色欲》とはまた違う恐ろしい炎です」

 

「ふむ。どう恐ろしいのだ?」

 

《大空の大罪》が《暴食の炎》について、リリアーナに説明を求めた。

 

「はい。ベルゼブブはその《暴食の炎》を自分の体内にある大蛇丸の鱗に纏わせているのですが………。もともと大蛇丸の鱗の防御力は高く、《暴食の炎》を纏わせたことでさらに防御力が上がりました。しかも、それだけではありません。恐ろしいのはここからです」

 

「ふむ。と言うと?」

 

「それは、相手の攻撃を《暴食の炎》を纏った鱗で防御すると、その攻撃で受けた衝撃は全て、調和されて、自分の力へと増殖するのです」

 

『!!?』

 

リリアーナの説明に《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちは驚いた。

 

「つまりは攻撃が全く効かないどころか、そいつをパワーアップさせてしまうってことか?」

 

「はい、そうです。実際に攻撃してみると、ダメージは全く効かなく、大蛇丸の攻撃力もスピードもかなり上がりました」

 

『………………………』

 

リリアーナの説明を聞いて、《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちは思案の顔をした。

 

「ベルゼブブはこの《暴食の炎》の性質を数日で理解して、使いこなせるようになったのか………」

 

『残っていた《雲の大罪》の候補としてはふさわしいな』

 

すると、ロヴィーノが口を挟んだ。

 

「《雲の大罪》の候補って………あいつはまだ、子供だぞ!いくら、研究所を破壊したとはいえ、《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》にはまだ早い!」

 

ロヴィーノの言葉に《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》の1人が反対した。しかし、ロヴィーノは声を低くして、言った。

 

『子供だから何?私は貴様らに言ったことがあるよね?『この世の強弱は年齢も性別も身分も種族も関係ない。強いやつが強い。弱いやつが弱い』って、そのベルゼブブは年齢という差を無視して、貴様らよりも実力は上なんだ。そして、ルシフェルたちに近い。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》という名は中途半端では意味がないんだよ。多少の差はあっても、実力を合わせなくてはいけない。私の言っていることは間違っているかな?』

 

『…………………』

 

ロヴィーノの言葉にその場にいた全員、反論ができなかった。確かに、《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》という名は7人揃って意味があるものだ。1人でも欠けたり、実力が絶望的に離れていたら意味がない。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》はロヴィーノ教団の中心とも言える部分だった。それのバランスが崩れたら、少なくともスペルラティーヴォ帝国を打ち倒すことはできない。だから、現状、ルシフェルたちに実力が近いベルゼブブを《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》の1人にするという考えは正しかった。

 

ちなみに、ロヴィーノが言った『この世の強弱は年齢も性別も身分も種族も関係ない。強いやつが強い。弱いやつが弱い』という話はリヴォルッツィオーネからロヴィーノ教団に変わったときにロヴィーノが構成員、全員に話したことだ。その言葉の意味も教えられて全員が理解していた。当然、抜けた輝夜も知っていて、理解していた。その後のスロウスやリリスたちみたいな後で入ったメンバーも教えられていた。それは数日前に入ったベルゼブブたちも同様だった。

 

『見た感じ、あいつの覚悟もなかなかのものだから、足手纏いになる可能性は低いだろうな』

 

「……………そうだな。ベルゼブブを《雲の大罪》の候補として考えよう」

 

《大空の大罪》はロヴィーノの言葉を受けて、そう言った。

 

「お言葉ですが団長。子供や新入りだからという理由でベルゼブブを認めないという者が現れるのではないのでしょうか?」

 

すると、リリアーナが心配そうに言った。

 

『大丈夫さ。ここの連中は私の教えもここが実力至上主義だということも、貴族たちに勝つためにそうしたほうがいいということも理解しているからね。もし、不安なら、私の名前を出せばいいさ。それで連中は納得するはずだよ』

 

リリアーナを安心させるかのように、ロヴィーノはそう言った。

 

「そうですか。それなら、私から言えることはありません」

 

それを聞いたリリアーナはまだ、どこか納得してなさそうな感じを出しながらもこれ以上は何も言わず引き下がった。これで会議が終わりそうになったときだった。

 

「…………ロヴィーノ、お前はこうなることがわかっていたのか?」

 

《大空の大罪》が今まで以上に真剣な顔つきでロヴィーノが聞いた。

 

『あぁ、数日前に私が『《雲の大罪》候補はすぐに来る』って言ったから、そんなことを聞いてくるんだね?』

 

「そうだ」

 

『ふっ………その答えはとりあえずイエスかな?そうなるって確信したのはベルゼブブが研究所を破壊したときだね。もし、ベルゼブブが破壊せずに貴族たちの味方になったら、その時は無視するさ』

 

「………………ベルゼブブたちがここの居場所を知っていたのは貴様が…………」

 

『お?勘がいいね。そうだよ、私があいつらに教えたのさ』

 

「貴様!!貴族の被害者とはいえ、ここの居場所を教えるとは何事だ!!」

 

「いくら、貴様とはいえ勝手が過ぎるぞ!!」

 

《大空の大罪》の質問に答えたロヴィーノは《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》の他のメンバーが怒号を上げて攻め立てた。それに対して、ロヴィーノはどこ吹く風のように受け流して、軽く謝罪した。

 

『あぁ、それは悪かったね。でも、彼らの能力はロヴィーノ教団で使ったほうがいいからね。だから、いち早くあいつらの身柄を保護するために居場所を教えたのさ』

 

「………………まぁ、確かにベルゼブブたちは我が軍の有力な戦力になったから、このことはこれ以上は不問にしよう」

 

『ククク、感謝するよ。あ!それと、せっかく《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》候補が全員、揃ったんだ。私から提案があるんだけどさ』

 

「提案だと?」

 

『そう。まぁ、詳しくはこれを見てみなよ』

 

ロヴィーノはそう言うと、白い炎から《霧》と《砂漠》の炎を出して、8人に幻術で何かを見せた。

 

『!!!?』

 

それを見て、8人は驚愕した。

 

「これは………!!?」

 

『私が考えた新生《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》専用の匣さ。これを作るのに必要なサンプルなどは私が既に用意しているよ』

 

ロヴィーノは常識はずれなことを言ったがロヴィーノならできると思い、受け流した。

 

『これに名付けるなら《羅刹開匣》だね』

 

ロヴィーノは人を越えた鬼の匣を《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちに説明した。

 

 

 

 

『クククッ。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》も、羅刹開匣を気に入ってくれて何よりだ』

 

会議が終わり、解散して、周りに誰もいなくなったところでロヴィーノが呟いた。あの後、本人たちの意思を確認するということで保留されたが、ロヴィーノはわかっていた。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちは羅刹開匣を気に入ったということを。

 

『ルシフェルたちはこれを断るはずがない。今まで以上にない力を手に入れることができるんだからな』

 

大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちがルシフェルたちの意思を確認するというのは嘘ではないだろう。だが、ルシフェルたちは二つ返事で了承するだろう。ルシフェルたちはそれぞれ理由は違うが貴族を憎んでいる。ベルゼブブも力をくれた貴族には感謝していると言うが無意識では自分や仲間たちに苦痛を与えた貴族たちを憎んでいる。だから、貴族たちを復讐できる方法があるなら、それを使うまでだった。

 

『あいつらは羅刹開匣のリスクを考えていないだろうな。………いや、そのリスクを全て受け止める気か』

 

羅刹開匣はその強大な力の反面、かなりの負荷が体にかかる。《大罪の7人(ペッカート・セッテ)》たちはそのことをルシフェルたちに説明するだろうが、きっと、だからなんだという感じでそのリスクを受け止める気だろう。

 

『あいつらは力を過信して馬鹿を起こす奴らじゃないから、余計な心配は必要ないか。羅刹開匣もすぐに使いこなせるだろうな』

 

ロヴィーノはルシフェルたちと羅刹開匣について、考え終わると、今度は別のことを考えた。

 

『新生ロヴィーノ教団を完成させるにはあと()()()()1()()必要だな』

 

ロヴィーノは珍しく深刻そうに呟いた。

 

『この時代は逸材だらけ。特にあいつは私に似ている。私の()()()()()のために必要だがな………。………しかたない。このまま、放っておいても、状況は好転しないからな。………私、自らアプローチしに行くか』

 

ロヴィーノはそう言うと、姿を消した。

 

 

 

 

その日から数日経ったある日、とある平民の町で輝夜と明聖は歩いていた。

 

「ねぇ、パパ」

 

すると、明聖が輝夜に声をかけた。

 

「どうした、明聖?」

 

「パパはどうして目、悪くないのにメガネをかけているの?」

 

明聖は輝夜の容姿について尋ねた。今の輝夜は伊達メガネをかけていて、髪は8年前のと比べて、少し伸びた状態で後ろにヘアゴムで1本に縛っていた。

 

「これはおしゃれだよ」

 

「へぇ~、そうなんだ~」

 

(……………悪いな、明聖)

 

輝夜の答えに明聖は納得したが、輝夜は嘘をついたことに心の中で謝罪した。輝夜がメガネをかけている本当の理由は変装のためだった。ローブのフードで隠すだけでは、不審者と思われて、逆に目立つためにメガネをかけて髪を伸ばすという軽い変装をしているのだ。これだけで案外、周りには気づかれないものなのだ。

 

(8年前のあの事件で俺はいろんな意味で有名になったからな。俺だけならともかく、明聖(こいつ)には危険な目に遭ってほしくないからな)

 

8年前の事件で輝夜もといダークネスは平民や革命軍たちからは英雄としての尊敬、貴族たちからは怒りを買って、世界中に『ダークネス』という名前が広がった。そして、あの後、聖輝と明夜という両親を失った明聖を守るために輝夜はロヴィーノ教団から失踪した。明聖が持つ《光》の炎はかなりの価値がある。特に死者の蘇生の奇跡が《光》の炎の最大の特徴だった。これを知られたら、明聖は必ず狙われる。もし、死者の蘇生を強いられたら、明聖の命が危ない。死者の蘇生の奇跡は使うたびに自分の命を削る。生まれつき持っている明聖でもそう何度も使われたら一溜まりがない。だから、貴族たちはもちろん、戦いで死者が多く出る革命軍からも逃げたのだ。

 

(この8年間、面倒ごともあったが、たいした問題はなかったな)

 

失踪した輝夜はまず、裏社会にいる偽造戸籍を取り扱う者に依頼して、ダークネスの名前を完全に捨てて、『光城輝夜』の戸籍を作った。その後は、賞金稼ぎとして、賞金首を捕まえて、賞金を手に入れて、それを資金にしてた。移動は人の目につかない場所で《闇夜》の炎のワープホールを使って遠くに移動している。それで、追っ手からも巻いている。そして、そのようにして、世界中をまわって、大きな問題もなく8年間過ごした。明聖も世界中を旅するのに楽しんでいた。

 

(ロヴィーノ教団も貴族たちも俺のことを探しているんだろうな…………。だが、俺は捕まるわけにはいかない…………。なんとしてでも、明聖を守ってみせる!)

 

輝夜は覚悟のこもった目をして、目の前で楽しそうに歩いている明聖を見て、そう思った。

 

「…………………」

 

すると、次の瞬間、輝夜の顔が暗くなった。そして、輝夜は懐に手を伸ばして、何かを取り出した。

 

(…………明聖にもいつかは話さなくてはな……………)

 

輝夜が取り出したのは輝夜にドレイク、聖輝と明夜、そして、まだ赤ん坊の明聖が写った写真が入っている写真立てだった。明聖には聖輝と明夜のことも自分のことも何も話していなかった。いつかは話すべきだということはわかっていたが、明聖にこの話をするにはショックが大きいために、もう少し明聖が成長したときにするつもりだった。

 

「パパ~!!早く早く!!」

 

「あぁ、わかった」

 

明聖に呼ばれると輝夜は写真立てを懐に戻して、明聖のほうへと歩いた。

 

「………………………」ニヤリ

 

その2人から離れたところで謎の人物が2人を見て、怪しい笑みを浮かべた。


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