家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~ 作:R0
ダークネスはエレオノーラについていって、アジェンテの基地に向かった。そして、今はアジェンテの基地がある森の中を進んでいた。その森の中にアジェンテの基地があることは知っていたので、ダークネスは別におかしいとは思っていなかった。………このときまでは。
「……………どういうことですか?」
ダークネスはエレオノーラに尋ねた。
「何がですか?」
当然、エレオノーラは立ち止まりダークネスのほうに振り向いて、なんのことだかわからず、そう返事した。
「そこの木々に俺に殺気を向けている連中が何人もいます。とても、歓迎ムードとは思えないのですが」
そう言って、ダークネスは周りに視線を向けながら、エレオノーラを訝しげに見た。
「………………ふ~ん。下等で下劣な平民の癖に気づいたんだ~」
すると、エレオノーラの口から敬語がなくなり、ダークネスを見下すような目をした。そして、それと同時に……………
ザザザザザザッ!!!!
ガチャッ!!!!
森の茂みの中からおよそ30人ぐらいの貴族の兵士が現れて、ダークネスに武器を構えた。ダークネスはその兵士の服についている紋章を見て、驚いた。
「!?それは、グレム帝国とアルミダ帝国の紋章!?なぜ敵対している者同士の兵士がここに!?」
そう、そこには、戦争をするはずのグレム帝国とアルミダ帝国の兵士がだいたい半分ずついたのだ。
「ふん!馬鹿なあんたに特別に教えてあげるわ。あんたたちが手にいれた情報はあんたたちを油断させるための嘘!本当は私たちは同盟関係にあるのよ」
「!?」
「そして、私はアルミダ帝国の国王の娘よ!本来ならあんたみたいな野蛮な平民の男が私に会う資格なんてないのよ!あ~もう、やだわ!任務のためとはいえ、こんな安物のコートを着なくちゃいけないなんて!」
そう言って、エレオノーラは顔をしかめて、アジェンテのコートを脱ぎ捨てた。そして、近くにいたアルミダ帝国の兵士からアルミダ帝国の紋章が入った、いかにも貴族が着そうな豪華なコートを受け取り、それを着た。
「グレム帝国とアルミダ帝国が同盟関係…………?」
ダークネスはその情報に信じられなかった。なぜなら、グレム帝国とアルミダ帝国ほどの大国が同盟を結んだならば、それは世界中にビッグニュースとして報道されていたはずだからだ。しかし、そんな報道はなく、むしろ、戦争を起こすという情報が入ったのだ。
「えぇ、そうよ!私たちもね、いい加減、あんたたちみたいな礼儀知らずに煮え湯を飲まされるのは嫌なのよ!この世界は私たち貴族たちで成り立っているの!あんたたちは私たちのもとで奴隷として働くのがお似合いなのよ!!仲良くするとかもってのほかよ!!」
「…………」
エレオノーラの最後の言葉にダークネスは顔を思いっきり歪めた。自分もあまり人のこと言えないが、それはダークネスにとって大切な人たちの侮辱に感じたからだ。だから、ダークネスにしては珍しく感情的に顔に表情が出たのだ。
「…………何その顔?平民の分際で私に文句あるの?」
それを見て、エレオノーラは気を害した様子だった。
「…………別にそれよりもお前らの目的はなんだ?」
「『お前ら』じゃなくて『あなた方』!『なんだ』じゃなくて『なんですか』でしょ!!………まぁ、いいわ。私たちの目的?そんなもの、あんたたちみたいな無礼者の始末に決まっているでしょ!!だから、グレム帝国と同盟を組んだ!!そして、真っ先にアジェンテを壊滅させたわ!!」
「なっ!?」
ダークネスはアジェンテが壊滅したことに驚いた。
「馬鹿な!アジェンテが壊滅しただと!?そんな情報は来ていないぞ!!」
ダークネスはすぐさま反論した。もしアジェンテが壊滅したならば、ロヴィーノ教団もそれを知るだろうし、そうなったら、休暇中のダークネスにも連絡が来るはずだった。しかし、そんな連絡は全くなかったのだ。
「そりゃそうよ!あいつらの情報操作を利用してばれないようにしたんだから!」
「!?」
ダークネスの反論にエレオノーラは答えた。しかし、確かにそれならば納得できる話だった。アジェンテの情報操作技術を使えば、隠蔽など容易であり、エレオノーラがアジェンテのコートを持っていたことにも理由がつく。
「…………お前らの目的はわかったが、なぜロヴィーノ教団と同盟を組むために俺を勧誘しに来たっていう嘘をつきやがったんだ?やっぱり、俺を消すためか?」
ダークネスは冷静にそう言った。
「あら?確かにロヴィーノ教団と同盟を組むっていうのは嘘だけど、あんたを勧誘しに来たのは本当よ」
「何?」
「あんたの《闇》の炎は私たちも興味あるのよ。だから、おとなしくついてきてくれるなら、痛い目に合わずにすむわよ?」
「はっ!!冗談言うな!どうせ、ついていったところでひどい目に遭わされるってわかるうえに、誰がお前らみたいなゴミの犬になるか!!」
ダークネスの言葉にエレオノーラも兵士たちも顔を歪めた。
「………ゴミとは言ってくれるわね…………。…………でも、あんたは私たちにまんまと騙されて罠に引っ掛かったのよ!!つまり、あんたはあんたの言うゴミ以下なのよ!!」
「くっ………!!」
エレオノーラの言葉が事実だったためにダークネスは顔をしかめた。
「それにあんたの答えなんて誰も聞いていないのよ。どっちみち、力づくで連れ去る予定だったしね」
エレオノーラの言葉に同調するように周りの兵士たちは武器を構えた。
「チッ!」
ダークネスは周りの敵の多さにイラついて舌打ちした。
「あぁ、そうそう。あんたをここに連れてきた目的はもう1つあるのよ」
「何?もう1つの目的だと?」
エレオノーラの言葉にダークネスはどういうことだと思った。
「それはね、…………
「なっ!!?」
エレオノーラの言葉にダークネスは驚愕した。
「なぜ、あの人たちを殺そうとするんだ!!あの人たちは革命軍じゃないんだぞ!!!」
それを聞いてダークネスは思わず叫んだ。
「だって、あいつらのやろうとしていることが気に入らなかったんだもん」
「気に入らなかった………だと………?」
「そう!《光》の炎の力を使って、荒れた土地を豊かな土地にするって、ふざけているの!?そんなことしたら、私たち貴族の立場がなくなるだけじゃない!!さっきも言ったけど、この世界は私たち貴族たちで成り立っているのよ!!それを仲良く平等なんて許せないわよ!!!」
「……………」
エレオノーラの言葉にダークネスは当然、怒りもあったが、それよりもまず先に疑問のほうがあった。
「…………なぜ、知っているんだ。そのことを…………」
そう、聖輝も明夜もその話を言い回したりしていないし、自分も他の連中には誰1人しゃべっていなかったのだ。
「さぁ?具体的な理由については私たちも知らないわ。その情報もアジェンテが持っていたものだしね」
「アジェンテが…………?」
ダークネスはエレオノーラの言葉にアジェンテの情報収集がそこまであったことに驚いた。
「まぁ、そんなことはどうでもいいわ。つまり、あんたがここにいるおかげであそこは今、手薄だから他の部隊に向かわせているわ」
「!!?」
ダークネスはそれを聞いて慌てた。
「さて、話すこともこれぐらいかしら?それじゃあ、あんたたち、あとは頼んだよ。私はアルミダ帝国に戻るから」
『はっ!!!』
「いい返事ね。それじゃあ、頑張りなさい。………あ~、早くこんな汚いところから去りたいわ」
「待ちやがれ!!」
エレオノーラが去ろうとするのを見て、ダークネスは叫んで追いかけようとしたが、グレム帝国とアルミダ帝国の両軍の兵士に阻まれた。それにより、エレオノーラはどこかに行ってしまった。
「エレオノーラ様のもとには行かせないぞ!!下等な平民め!!」
「ここから先は俺たちが相手だぜ!」
「チッ!!」
ダークネスは周りの兵士たちを見て、匣からガンブレードを取り出した。
「あん?まさか、俺たちと戦う気か?」
「俺たち1人1人とお前の実力の差がわからないのか?」
「おまけにこの人数も見えないのか?」
「お前に勝ち目なんてないんだよ!!」
戦おうとするダークネスを見て、兵士たちは馬鹿にした様子で言った。
「黙れ!!!勝てる、勝てないじゃないんだ!!!俺は早くあそこに向かわなきゃいけないんだ!!!」
ダークネスはそう言って、飛び出した。
「速い!!」
ザシュッ!!
「グアッ!!」
兵士の1人がダークネスに斬られた。
「この!!」
それを見た、他の兵士がダークネスに後ろから斬りかかった。
バンッ!!
「ガハッ!!」
しかし、ダークネスはガンブレードの先を後ろに向けて、炎の弾丸を放った。そして、その弾丸はその兵士に直撃した。
「くそ!!なんだ、こいつは!!」
兵士はダークネスの動きを見て、悪態をついた。
「……ちんたら、お前らに時間かけてる暇はないんだ!!ドレイク!!」
ダークネスはそう叫ぶと、匣から戦闘形態のドレイクを呼び出した。
「グオォォォォォーーーー!!!!」
呼び出されるとドレイクは咆哮をあげた。
「時間がないんだ!!!ドレイク!!!一気に片付けるぞ!!!」
「グルル!!!」
ダークネスの言葉にドレイクは了承すると、ドレイクは兵士たちに向かった。
「くそ!!攻撃しろ!!!」
兵士のリーダーと思われる人物が他の兵士たちに命令した。それに伴い、兵士たちも攻撃を始めた。
「グオォォォォォーーーー!!!!」
しかし、ドレイクはそれをかわして、鋭い牙で噛みついたり、爪で斬り裂いたりした。
『グアァァァァァーーーー!!!!』
兵士たちはそれに悲鳴をあげた。
ザシュッ!!!ザシュッ!!!バンッ!!!ザシュッ!!!バンッ!!!バンッ!!!
『グアッ!!!』
また、ダークネスもガンブレードで斬ったり撃ったりして、兵士たちを倒していた。そして、1人と1頭の力で兵士たちは全滅した。
「………どういう………ことだ………。………我々が………こんな………平民………1人と………その匣………ごときに…………」
最後の1人がそう言って、絶命した。実はダークネス自身も気づいていないがロヴィーノ教団に入ってから、今までで1番いい動きをしていたのだ。だからこそ、実力の高い兵士たちを大勢相手に倒すことができたのだ。
「おい、ドレイク!!急いであの人たちのところに戻るぞ!!!」
しかし、今のダークネスはそんなことを気にしている余裕はなく、ドレイクの背中に乗り、光城宅に向かった。
ドレイクの背中に乗ったダークネスが光城宅に近づくと驚いた。
「なっ!!?」
光城宅はなんと、ボロボロになっており、そこには先程のと同じグレム帝国とアルミダ帝国の両軍の兵士たちがいた。
「ドレイク!!!突っ込め!!!」
「グオォォォォォーーーー!!!!」
ダークネスの指示に従い、ドレイクは上空から兵士たちに突っ込んだ。
「なんだ?」
それに気づいた兵士の1人が上を向いたがお構い無しに突っ込んだ。
ザシュッ!!!バンッ!!!ザシュッ!!!バンッ!!!バンッ!!!ザシュッ!!!ザシュッ!!!ザシュッ!!!バンッ!!!
『グアッ!!!』
そして、ドレイクは爪でダークネスはガンブレードで攻撃した。一切の攻撃をする隙も与えずにその場にいた兵士たちを全滅させたのだ。
「ハァッ………ハァッ………ハァッ………クソ!!!」
兵士たちの返り血を浴びたダークネスは倒した兵士たちに目もくれず、自分の返り血も気にせずに光城宅に慌てて入った。ドレイクはサイズ的に家に入ることができないので外で待ってもらうことにした。
「オギャーッ!!!オギャーッ!!!」
「!!明聖!!!」
家の中に入ると明聖の泣き声が聞こえて、ダークネスは急いで、明聖の泣き声が聞こえる部屋に入った。
バンッ!!!
扉を開けるとダークネスは顔を青ざめた。そこには、血まみれで床に倒れていた聖輝と明夜、泣いている明聖、その明聖に刃物を突きつけていたグレム帝国の兵士が1人いた。
「なんだ、貴様は!!?さっき、仲間の悲鳴が聞こえたが貴様の仕業か!!?」
兵士は驚いてダークネスに聞いた。
「………………」
しかし、ダークネスは黙ったままだった。
「おい!!聞いているのか!!?」
それに対して、兵士はダークネスに怒鳴った。
「……………ねぇ」
「は?なんだって?」
すると、ダークネスが何か呟き、それが聞こえなかった兵士がダークネスに聞いた。
「………そいつに近寄るんじゃねぇーーーー!!!!」
ダンッ!!!
ダークネスはいきなり、そう叫ぶと勢いよく床を踏み込み、飛び出してガンブレードを兵士に突き立てた。
グサッ!!!
「ガハッ!!?」
兵士はあまりの速さに驚く暇もあらず、ガンブレードが突き刺さり、壁に吹き飛ばされた。そして、そのまま絶命した。
カランッ………
明聖に向けていた刃物は床に音をたてながら落ちた。
「ハァッ………ハァッ………ハァッ………」
ダークネスは荒く息をついていた。ダークネスは明聖のほうを見た。明聖には特に傷はなかった。ダークネスはそれに安堵して、明聖を泣き止ました。
「………輝……夜………」
「!!?」
すると、誰かが自分を呼び掛ける声が聞こえた。ダークネスは声が聞こえたほうに顔を向けるとかすかに息があった聖輝と明夜がいた。
「聖輝!!!明夜!!!」
ダークネスは明聖を抱えて、2人の近くに寄った。そして、明聖を側に降ろして、2人に声をかけた。
「聖輝!!!明夜!!!大丈夫か!!!?」
ダークネスは2人の心配をした。どうか無事でいてほしいと願いながら………。
「…………輝夜………ごめん………なさい………」
「………どうやら………僕たち………もう長くは………生きて………いけなさそうだ………」
しかし、2人の言葉によりダークネスの願いは無情にも壊された。
「ど、どういうことだ!!」
ダークネスはどうしても信じられずについ叫んでしまった。
「………輝夜………君にも………身に覚えがあるはずだよ………」
「!!?」
聖輝の言葉にダークネスは理解した。昔、自分も致命傷を負って、もう死ぬんだと直感したときがあった。
「………私たち………2人とも…………致命傷を……負ったの……」
「………本当なら………既に………死んでいたんだけど………《光》の炎の力で………延命していたんだ………。……でも………そろそろ………炎がつきそうだ…………」
「もう、しゃべるな!!!それなら、俺が!!!俺もあんたらからもらった《光》の炎があるんだ!!!それであんたらを助ける!!!」
ダークネスはそう言って、棚に入っていたはずの予備の《光》のリングを取りに行こうとしたが………。
「ダメ…だ………!」
しかし、聖輝がダークネスの足を掴んで止めた。
「なんで止めるんだ!!?このままじゃ、あんたらは!!!」
「ダメよ………。………そんなことしたら………明聖が………ひとりぼっちに…なるよ………」
「!!?どういうことだ………?」
明夜の言葉にダークネスは戸惑った。
「………まず………僕たちの傷は………深すぎて………回復じゃ………とても追いつくことは………できない……。………だから………僕たちが……生き延びる方法は………死んでからの蘇生………だけ……なんだ………」
「………でも……私たちのように………生まれつき《光》の炎を……持っているなら………ともかく………、あなたのように………蘇生による体質変化で………後付けで…手に入れた場合………蘇生の成功の確率は………元よりもかなり下がるの…………」
「………おまけに………そのときの…使用者は………負荷に耐えきれず………
「なっ!!?」
初めて聞く情報にダークネスは驚愕した。ダークネスが《光》の炎を使って、蘇生を試みようとしても、失敗する可能性が高く、ダークネスは必ず死んでしまうということだ。それはつまり、赤ん坊の明聖を1人にしてしまうかもしれない、ということだ。
「………だ、だが、明聖にはあんたらが必要だ!!俺の命で助けることができるなら………!!」
ダークネスはそう言いながらも頭の中では悩んでいた。別に死ぬことに恐れているわけではない。元々、死ぬ運命にあったのが奇跡的に生き延びただけだったのだ。ダークネスが悩んでいる理由は2つ。1つは蘇生が成功するかどうか。失敗すれば、明聖がひとりぼっちになってしまうからだ。しかし、これは必ず成功してみせると意気込んでいるので、まだ大丈夫だ。問題はもう1つだった。話から考えるとダークネスの命を使って生き返らせることができる人物は1人だけだった。つまり、聖輝か明夜のどちらかだった。ダークネスにはどちらかを選ぶなんてできなかった。
「…………そのことだけど………輝夜………。………あなた………私たちの………代わりに………親を………やってくれないかしら………?」
「は?」
「……本当は……君には………兄として………一緒に…いてほしかったけど………僕たちが…この様……だからね………。……父親の座…を……奪われる……のは……ちょっと悔しいけどね………」
すると、明夜が急に提案して、聖輝は冗談混じりにそう言った。
「な、何を……」
『何を言ってるんだ!!』そう言おうとしたダークネスだったが、2人の目を見て、何も言えなくなった。2人のこの目はなにがなんでも譲らないという目だった。しかも、自分たちがもうすぐ死ぬという状況のためにより力強く感じた。
「…………本当、自分勝手で意味わからない人たちだよ。こんな奴に自分たちの娘を任せるとか………」
ダークネスは静かにそう呟いた。しかし、否定する気はなかった。2人の自分勝手はなんだかんだ言って、プラスになることが多かったからだ。現にダークネスも彼らと一緒にいる時間はとてもいい気分だったから。
「…………わかったよ。明聖の父親、俺が引き受けるよ」
だから、ダークネスはこれに了承するのだった。
「そうか………」
「ありがとう…………」
2人はそれを聞いて、優しく微笑んだ。
「……………礼を言われる資格なんてねぇよ」
「「……え……?」」
すると、ダークネスがそう言って、2人はどういうことだと思った。
「俺の……せいで……俺が騙されたせいで…………あんたらは………こんな目に……あったんだ………。………全部………俺のせいなんだ…………」
ダークネスはそう言うと、手を床につき、目から涙をこぼし始めた。
「あんたらは俺にとって光なんだ!あんたらは俺にとって恩人なんだ!………それなのに………それなのに……俺は…………」
ダークネスの顔には怒り、悲しみ、憎しみ、悔しさ、負の感情が全て混ざったような顔をしていた。ダークネスは後悔していたのだ。自分のせいで2人が死ぬ運命になったことに、最近産まれたばかりの赤ん坊がいるにも関わらず。もし、エレオノーラの悪意に気づいていたら、2人は無事だったかもしれない。そんな後悔がダークネスにつきまとっていた。
「………輝夜………」
すると、聖輝がダークネスに声をかけた。
「………君に………何が……起きたのか………僕たちには………わからない………。………でも………君が……ここに…来てくれなかったら………明聖は………殺されていた………」
「……だけど……あなたが………来てくれた………おかげで………明聖は………助かったわ………。………それに………誰にだって……ミスの1つや2つ……するわ………。………あなたの……気にすること……じゃないわ…………」
聖輝と明夜がダークネスに優しくそう言った。それに対して、涙を流し続けるダークネスは信じられなさそうに2人を見た。
「………だから………僕たちは…………君を…………恨まないよ……………」
「…………だから…………自分を…………憎まないで…………輝夜……」
「………
2人の言葉を聞いて、ダークネスは無意識に呟いた。
「…………やっと…………言って…………くれ……た………ね………」
「…………嬉しい………わ………。…………ありが………と……う……」
ダークネスの言葉に2人は一瞬驚いたがすぐに嬉しそうな顔をして礼を言い、…………息を引き取った。
「……あ……あ………あぁ………」
ダークネスはそれを見て、絶望した顔をした。
ドンッ!!!
「………くそっ!!!………くそっ!!!………くそっ!!!」
すると、ダークネスは頭を床に打ち付けて、涙を止めどなく流して、そう言い続けた。その側では、嗚咽をもらすダークネスをそっとしておくかのように明聖は静かに眠っていた。その家の窓から見えるベネスタンテ星の月は血のように真っ赤だった。
そして、そのダークネスの体には《闇》の炎とは違う
『これはさすがの私も予想外だよ。《闇》がさらなる進化して《闇夜》になるとはね………。あの女、なかなか良い働きするね。でも、残念ながら今回は私は不干渉だからご褒美はあげれないんだよね………。むしろ、このあとの彼女の運命はね…………』
何もない空間でしゃべる声の主の言葉はそれ以上続かなかった。