家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~ 作:R0
これも読者の皆さんのおかげです。ありがとうございます!
今後も頑張っていきます!
あの日からダークネスは時々、休暇のときに光城家へ足を運ぶことが増えた。なんとなく、そこで過ごす時間を悪くないと感じていた。ルシフェルたちには以前の戦いで怪我の手当てなどをしてくれて世話になった家へ言っている。ちゃんと《光》の炎や光の一族に関することは伏せておいた。しかし、なぜか露骨に驚かれたことにダークネスはイラッとした。ルシフェルたち曰く他人など興味ないという雰囲気を出しているダークネスが誰かと一緒にいようとしていることに驚いたらしい。まぁ、それは置いといて、ロヴィーノ教団の団員が全員、天涯孤独というわけではない。中には家族の元に里帰りする者もいるために、そこまで不振に思われることはなかった。
ダークネスはそこで何か特別なことをするわけではなく、ただ雑談したり、一緒に食事をしたりする程度だった。また、2人にドレイクのことも紹介した。聖輝と明夜の2人が笑っているのに対して、ダークネスは無愛想で過ごすことが多かったが悪くない時間を過ごしていると感じていた。
ロヴィーノ教団でも順調に貴族たちに攻め込んでいくことができている。ダークネスも同じミスをしないようにどんなときでも油断をしないように心がけた。また、致命傷となった腹と背中の傷も《光》の炎の力で完治した。おかげで、ダークネスは問題なく戦いに参加できて、大きな怪我をすることがなかった。
そんなある日の昼過ぎことだった。聖輝は例の森で薬草を採集に行って、部屋の中にはダークネスと明夜の2人だけのときだった。
「あなた革命軍なのよね」
明夜が皿洗いの手伝いをしていたダークネスが声をかけた。
「あぁ。そうだけど、今更なに言ってんだ?」
それに対して、ダークネスは答えた。そして、前からわかっていたことだろうって思って聞いてみた。
「貴族と戦っているのね」
しかし、ダークネスの問いに無視してさらに質問してきた。
「そうだが、それがどうしたんだ?」
ダークネスが眉をしかめて聞いた。
「いえね。どうして今、戦いが起きていると思う?」
すると、明夜はまた質問を返した。
「……………貴族たちの傲慢が俺たち平民の憎しみを生み出して、それが戦いを生み出す」
それに対してダークネスは答えた。
「そうね、確かに今の貴族たちがやっていることは許されることじゃない。誰かが止めなくちゃいけないわ。……………でも、それだけじゃないと思うのよ」
「は?」
ダークネスはどういうことだと思った。
「もともと、こんな戦いが起きている理由は豊かな土地が少ないからだと思うの………。ご先祖様たちがその土地を求めて争いが始まった。この星がもっと豊かだったら、こんなことにならなかったと思うの…………」
「………………確かにな。でも、そんなの今更だろ。たらればを言ったところで何かが変わるわけでもないし」
明夜の言葉にダークネスは素っ気なく答えた。
「ふふ。そうね。たらればを言ってもしょうがないわね。………………実はね、私たち、この世界の廃退した土地を豊かな土地に復興したいと思っているの」
「は?」
明夜の言葉にダークネスはわけがわからなかった。
「………どういうことだ?」
「そのままの意味よ。私と聖輝さんは荒れた土地が豊かな土地になったら争う理由が減るって考えているの。だから、そのために《光》の炎を研究しているの」
「《光》の炎を?」
「えぇ。《光》の奇跡の力で何とかならないかなって思っているの」
「……………そう、簡単な話じゃないだろ」
明夜の話を聞いて、ダークネスがポツリと呟いた。
「この荒れた世界の広さもそうだし。憎しみで動いている奴に理屈なんか、関係無いし。確かに争いが起きないなら、それがいいに決まっているさ。だけど、そんなのただの綺麗事だろ」
ダークネスは今まで何度も貴族たちと戦ってきた。それらをずっと見てきたことで聖輝と明夜が考えていることは無理だと思っていた。
「…確かに綺麗事だね」
すると、いつの間にか薬草採集から帰ってきた聖輝が呟いた。
「……………いつからいたんだ?」
「ついさっきだよ。君に復興についての話をするつもりだったから、わかったんだ。それよりも、確かに君の言うとおり、僕たちのやろうとしていることは綺麗事かもしれない…………。でも、僕たちはその綺麗事を貫き通そうと思っているんだ!」
「は?」
「綺麗事を貫き通すことができたなら、綺麗事って言うぐらいなんだ。いいことが起きるに決まっているさ!」
「だから、それができる状態じゃないから――――っ!?」
言いかけて、ダークネスは気づいた。聖輝と明夜の目が本気だということに。
「そうね。確かに難しいわ。何も成し遂げずに口先だけの結果になっちゃうかもしれない………。でも、だからって諦めるわけにはいかないわ」
「そうだね。このまま、革命軍が貴族たちに勝っても、しばらくしたら、また新しい戦いが起きてしまう。それを防ぐためにも僕たちがやらなくちゃいけないんだ!」
「………………あんたらはこの世界の闇を知っていて、そんな綺麗事を吐くのか?」
「ああ」
「ええ」
「………………そんな覚悟があるなら、俺からとやかく言えねぇよ」
2人の言葉にダークネスが呟いた。
「……………俺には、そんな真似できねぇな」
「別にしなくていいよ」
「……………は?」
ダークネスの呟きに思いもよらぬ答えにダークネスは驚いた。
「………いや、てっきり『そんなことはない』って返すと思ったんだが」
「ふふ、そう。でも、これはあくまで私たちの考えだからね。私たちは私たち。あなたはあなた。そこは自由なの」
「君がどこで何をしようと基本、僕らは何も言わないさ。ただ、自分の信念に従えばいいだけさ」
「………俺の信念」
聖輝にそう言われて、ダークネスは考えたが何も思い浮かばなかった。それを見た聖輝は苦笑しながら言った。
「まぁ、そうすぐに思いつくものじゃないから、ゆっくり考えればいいよ」
「…………そうさせてもらうよ」
その後、皿洗いが終わり、雑談することになった。
「そういえば、君の誕生日っていつなんだ?」
すると、聖輝が聞いてきた。
「俺の誕生日?急になんだ?」
「いや。ただ、僕たちが君のことを知りたいだけだよ。ほら!君はあんまり自分のことを話さないでしょ?」
「そうね!私も知りたいわ!」
2人に言われて、ダークネスは渋々と答えた。
「俺の誕生日ねぇ………………あぁ。
「「え?」」
「だから、今日だって言っているだろ」
「「………えええぇぇぇーーーー!!!?」」
ダークネスの答えに2人は驚いた。
「ちょ、今日!!?」
「何で今まで言わなかったの!!?」
「聞かれなかったから」
「だ、だからって………」
「言ってくれたら、こっちもいろいろと準備したのに………」
「別にいいよ。そんなの」
「そういうわけにもいかないよ!自分が生まれてきた日ぐらい大切にしなきゃ!」
「はぁ………(それ、1度死んだ奴に言ってもしょうがない気がするんだが………。………ってか、誕生日って俺が産まれた日でいいよな?死んでから蘇った日じゃなくていいよな?)」
聖輝と明夜が相談しているのを余所にダークネスはそんなことを考えていた。すると、相談が終わったのか2人がダークネスに向いた。
「えっと………とりあえず、悪いんだけど、今から準備しようとすると間に合わないからパーティーは無理なんだ…………」
「だから、いいって、言っているだろ………」
「それで、とりあえず今、考えたプレゼントをあげようと思うの!」
ダークネスの言葉を無視して、明夜はそう言った。
「プレゼント?」
「ああ、そうさ。といっても、物じゃないけどね」
聖輝は苦笑いしながら、そう言うとプレゼントの内容を言った。
「………………《
「は?」
ダークネスは何を言われたのかわからなかった。それを察して聖輝は説明した。
「君はダークネスって名前が嫌いなんだろ?だから、新しい名前をあげることにしたんだ」
「私たちの名前から1文字ずつ取ったのよ。あなたも東洋の一族の血が流れているし、別におかしいことじゃないわ」
「それに僕もいい加減、君じゃなくて名前で呼びたいからね」
「そうね。私もあなたのことを名前で呼びたいわ」
「……………………」
2人に言われて、ダークネスは思い出していた。そういえば、この2人に自分のことをダークネスって呼ばれたことがなかったことを。
「…………だが、名前を変えるなんて、そんな簡単な話じゃないぞ。特にロヴィーノ教団には―――――」
「それなら、僕たちがいるときだけでいいから」
「そうそう♪それ以外なら別にどっちを使ってもいいから♪」
ダークネスの言葉を遮って、聖輝と明夜はそう言った。ダークネスには心なしか2人の目が輝いているように見えた。
「………ハァ………。………初めて、会ったときから思っていたが………、あんたらって結構、自分勝手だな」
「まぁな♪」
「この世の正義も悪も自分勝手みたいなところあるしね♪」
「開き直るなよ………」
2人の言葉に呆れるダークネスだった。
「ハァ…………。もう好きにしろよ………」
「そうさせてもらうよ、輝夜♪」
「改めてよろしくね、輝夜♪」
「……………………」
2人に輝夜と言われて照れたのか、ダークネスはそっぽを向いた。なんだかんだ言って、気に入ったみたいだ。その後、明夜が今ある物で作ったご馳走を食べたりして、その日は泊まり、翌日の朝にロヴィーノ教団、本部に帰った。
その日から、1ヶ月以上過ぎたある日。ダークネスはまた、光城宅に向かった。
「…………邪魔する」
ダークネスはそう言って、扉を開けて、光城宅に入った。
「「………………………」」
すると、いつもは「いらっしゃい」って笑顔で言って歓迎してくれる2人が、今回はどこかそわそわしていた。
「どうしたんだ?」
2人の様子が気になったダークネスが尋ねた。それを聞いた2人は顔を見合わせて、改めてダークネスの方に顔を向けて、明夜が口を開いた。
「輝夜………。驚かないで聞いて……………」
「……………あぁ」
「実は………………私、妊娠したの!」
「!!?」
明夜の言葉にダークネスは驚いた。
「…………そうか、おめでとう」
それを聞いて、ダークネスはお祝いの言葉をあげた。
「「それだけ!?」」
しかし、なぜか2人は不満そうに叫んだ。
「いきなり、何だよ…………。ってか明夜、あんたは妊婦なんだから無茶するな。聖輝も一緒に叫ぶな」
それに対して、ダークネスは顔をしかめて、そう言った。注意というおまけ付きで。
「いやさ。もう少し、『ええぇぇぇーーー』って感じでオーバーに驚いてほしかったなぁって思っただけだよ」
「そうそう」
「俺はそんなキャラじゃないだろ……………。くだらない…………」
2人曰く、以前の誕生日のときの仕返しという子供みたいな理由でダークネスを驚かそうとしたらしい。それを聞いてダークネスは呆れていた。ちなみに妊娠したのは本当みたいだ。
「………で何ヶ月なんだ?」
「4ヶ月よ」
「…………そうか」
「そう。つまり、あとだいたい半年ぐらいで輝夜の弟か妹が産まれるってことだ!」
「…………そうか。……………って、ちょっと待て!」
ダークネスは聖輝の言葉に一瞬流そうとしたが、内容が内容のために踏みとどまった。
「どうしたんだ?」
「『どうしたんだ?』じゃねぇよ!俺の弟か妹って、何の話だ!?」
「何の話って、あなたは私たちの子だから、そうなるんじゃないの?」
「いつから、俺はあんたらの子供になったんだ!?年の差から考えてもおかしいだろ!?」
「あなたの誕生日に『光城輝夜』って名前をつけたときからよ。それで私たちは名付け
「それに確かに10歳わずかぐらいの差しかないが、そんなの関係無い!」
「……………やっぱり、あんたら、自分勝手だろ……………」
堂々と言う2人にダークネスは頭が痛み出して、そう呟いた。
「ハハ!確かにそうだね!でも…………」
「?」
聖輝が言葉を区切ったのに、ダークネスは内心、首をかしげた。
「輝夜、僕たちは君のことを大切に思っているよ」
「そうよ。あなたと私たちはもう家族だからね」
「!」
2人の言葉にダークネスは心を撃たれたような感じになった。
「……………くっ!!それよりも今後について話すぞ!!」
「ハハ!」
「ふふ」
照れ隠しのつもりか、ダークネスはそう言って、そっぽを向いた。それを見て、聖輝と明夜は笑った。
その後は、これからどうするかについて、話し合った。なるべく、明夜の負担にならないようにしなければいけない。それで基本は夫の聖輝が家のことをやるという話になった。ダークネスも休暇などの日は手伝うことにした。明夜には体調が悪くなったら、すぐに聖輝かダークネスに言うことを約束した。そして、その後は、明夜のために体にいい料理をダークネスと聖輝が作って、その日もまた談笑して過ごした。
その日から、半年、ダークネスは休暇の日は必ず、光城宅に向かって、2人の手伝いをした。明夜の体調を気遣ったりもした。出産の時期が近づいてくると、明夜は入院することになった。そんなときは聖輝が付き添っていた。ダークネスも見舞いに行った。
そして、そんなある日、ダークネスは光城家にの目の前にいた。本当はとっくに出産していたのだ。しかし、あいにくその日はロヴィーノ教団での長期任務と重なって、行くことができなかった。そして、その任務が終わり、ダークネスはこうして来たのだ。来る前に連絡を入れたとき、聖輝が出てきて、快く了承したが、ダークネスは負い目を感じていた。出産に立ち会うことができなかったことはもちろんだが、何より自分みたいな人殺しが会ってもいいのかと………。そう悩みながら、やってきたのだ。
「…………ハァ~~~、フゥ~~~………」
ダークネスは深呼吸を1つすると、覚悟を決めて、扉を開けて家の中に入った。
「おかえり、輝夜!」
「おかえりなさい!」
ダークネスが入ると、聖輝と明夜が出迎えてきた。ちなみに半年くらい前からダークネスが家に入ると「おかえり」と言われるようになった。そして、それよりもダークネスは明夜が腕に抱えている赤ん坊に目が向いた。その赤ん坊はどこか聖輝と明夜の面影を感じた。
「その子が…………」
「ああ、そうだよ。この子が産まれてきた僕たちの子供、《
ダークネスがその赤ん坊を見ていると、聖輝がそう言った。
「明聖?」
「そう、僕と明夜の名前のまだ使っていないほうを取ったのさ」
ダークネスの疑問に聖輝が答えた。
「ほら。明聖ちゃん、お兄ちゃんだよ」
すると、明夜が明聖をダークネスに近づけた。
「………………………」
「あれ?どうしたんだい?」
無反応だったダークネスが気になって、聖輝は尋ねた。
「…………………いや。汚れた人殺しの俺が触ってもいいのかと思って…………」
「もう!そんなこと、気にしなくていいの!ほら、この子も待っているよ」
「バブ?」
「………………………」
明夜にそう言われて、ダークネスはおそるおそる明聖に手を伸ばした。
ギュッ!
「!?」
「キャハハ!」
すると、明聖がダークネスの指を掴んで、笑った。それにダークネスは驚いた。
「あ!笑った笑った!」
「どうやら、もう懐いたみたいだね。ちょっと、嫉妬するな~」
明夜と聖輝がからかい気味でそう言った。しかし、ダークネスはそんな2人を無視して笑っている明聖を見た。
「キャハハ!」
「………………ふっ」
それを見たダークネスは光がこもった目をして、珍しく優しく微笑んだ。