家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~ 作:R0
「………………………う………………うん…………………」
ダークネスがうめきながら、目を覚ました。
「……………………ここは?」
ダークネスは辺りを見渡すと、ロヴィーノ教団の本部の自分が寝ている部屋ではなく、知らないどこかの家らしかった。自分はベッドの上で寝ていたみたいだった。
(まさか、これが『あの世』っていうところか………………?)
ダークネスは自分が死んだことで、あの世に来たのかと思った。ちなみにダークネスは天国や地獄などのあの世の存在というものは、あろうがなかろうがどっちでもいいと思っていた。ロヴィーノなら知っていそうだが、いずれ自分が死んだことでわかることだと思い、聞かなかったのだ。さて、それは置いといて、ダークネスのあの世に来たという予想は周りを注意深く観察したことで、違うとわかった。自分は今、上半身裸の状態で傷口のある腹部と背中を覆うように包帯が巻かれていた。そして、自分が寝ていたベッドの側にある小さな机の上に自分の服が折り畳まれた状態で置いてあり、さらにその上にドレイクやガンブレードが入っている匣にリングが置いてあった。これらのことから、自分は
(誰かが俺を見つけて、治療でもしたのか…………?……………いや、それはない。俺はあの時に……………)
ダークネスは一瞬そう考えたが、すぐに否定した。自分の体は自分が1番よくわかっていた。あの時のダークネスは大量出血のうえに体内を《嵐》の炎で分解されて、助からないほどの重傷だった。それによって、ダークネスは間違いなく死んだはずだった。それなのに、なぜダークネスは生きているのか、ダークネスは考えていた。
ギィッ…………
「!?」
すると、部屋の扉が開いた。ダークネスは驚いて、扉のほうに顔を向けると………………
「あら?起きていたのね」
160㎝ぐらいのストレートの長い茶髪の20代のスタイルのいい、清楚で美人な女性が入ってきた。
「………………あんたは?」
ダークネスは女性に何者か聞いたが…………
「ふふ。ごめんなさい。少し待っていてくれるかしら?今、主人を呼んで来るから」
そう言って、女性は部屋から出て行った。
「…………………………………」
ダークネスは扉をじっと見て、それをやめると再び考え始めた。
(ここはあの女とあの女の旦那の家か………………。それなら、あの2人が俺を?…………だが、どうやってだ?)
ダークネスは必死に考えたが何も思いつかなかった。
ギィッ……………
すると、再び扉が開き、ダークネスが扉のほうに顔を向けると………………
「お!良かった!本当に目が覚めたんだな!」
「ね。だから、言ったでしょ?」
さっきの女性と170㎝後半の女性と同じ茶色の髪の20代の男性が入ってきた。
「体の調子はどうだい?」
男性はベッドの上にいるダークネスに近づいてきて、そう聞いた。
「…………………別に何ともない。……逆におかしいぐらいにな。…………それよりもあんたらは?」
「あぁ!そういえば、自己紹介がまだだったね」
ダークネスが素っ気なく言ったことを気にせずに男性はそう言った。
「僕は
「私は
男性、聖輝と女性、明夜がそう自己紹介した。
「……………その名前、あんたらは
『東洋の一族』、それはベネスタンテ星の住人の先祖がまだ地球にいた頃、東洋に住んでいた連中のことをそう呼ばれている。漢字で表記できる名前を持っている者はたいてい、その一族である。豪もその一族の1人であった。
「まぁ、そうだね。でも、君もそうじゃないのかい?」
「そうね。あなたの髪のその色、東洋の一族並に黒いわよ?」
聖輝と明夜はダークネスの髪を見て、そう言った。その質問にダークネスは目を閉じて答えた。
「………………確かに俺のお袋のほうの先祖はその一族出身だったって、話を聞いたことがある。だから、その遺伝だろ」
ダークネスは自分の母親の髪の色が自分と同じくらい黒かったのを思い出していた。
「そうなのか。それで君の名前は?」
ダークネスの答えを聞いた聖輝は今度はダークネスの名前を聞いた。
「……………………ダークネス」
「「…………………………」」
嫌そうに自己紹介したダークネスに聖輝と明夜は怪訝な表情した。
「えっと……………。……………どうして、そんなに嫌そうに言うのかな?」
それが気になって、明夜がダークネスに聞いた。
「………………俺の嫌いな奴らがつけた名前だからだ」
「「…………………………」」
ダークネスの答えに聖輝と明夜はなんとも言えないという顔をした。
「俺の名前なんかよりも、こっちは聞きたいことが山ほどあるんだが………」
この微妙な空気を何とかするためか、そもそも気にしていないのかわからないが(おそらく、後者だと思われる)、ダークネスは話を変えた。
「…………そうだね。確かに君には僕たちに聞きたいことが山ほどあるだろうね………」
とりあえず、聖輝はこの話を置いておくことにした。隣にいる明夜もうなずいた。
「まず、なぜ俺はここにいる?俺は確か森の中にいたはずだが?」
ダークネスが最初の質問をした。ある意味、当然の質問だった。
「あぁ。それは、たまたま僕が君を見つけたからさ」
「たまたま見つけた?」
ダークネスはそう呟いて、そういえば死ぬ前に誰かの声が聞こえたのを思い出した。ダークネスはてっきり自分の幻聴だと思っていたがどうやら違うかったみたいだった。
「……だが、なぜあんなところにいたんだ?確か、あの森は貴族の土地じゃないから貴族はもちろん、平民も立ち寄らない森だと聞いていたんだが………」
「そうね。でも、あそこは珍しい薬草が生えていたりするから、私たちは結構あの森に入っているのよ」
ダークネスの質問に今度は明夜が答えた。
「…………………なら、俺が今、ここで生きているのはその珍しい薬草っていうもののおかげなのか?俺は間違いなく死んだはずなんだ。それなのに、今こうして生きているのはおかしい。………………どうなんだ」
ダークネスはここで1番気になっていたことを聞いた。それに対して、2人は顔を見合わせて、それから答えた。
「確かに、僕が見つけたときには、君はすでに息を引き取っていた」
「………………………」
聖輝の言葉にダークネスはやっぱりと思った。
「でも、あなたが今こうして生きているのは薬草の力ではないわ。確かにあなたが生き返ってからは傷口に薬草を塗ったりしたけどね」
「は?」
てっきり薬草の力だと思っていたダークネスは間抜けな声が出た。
「それなら、なんで俺は生きているんだ?」
訳がわからないとダークネスは2人に聞いた。
「それは僕たちの
それに聖輝が答えた。
「あんたらの…………炎………?」
ダークネスがそう呟くと2人は自分の右手の中指に金色の石がはまったリングをはめた。そして……………………
ボウッ!!!
ボウッ!!!
「!!!?」
2人のリングから見たことのない金色の炎が灯りだした。それを見て、ダークネスは驚いた。
「それは…………?」
「これはね《光》の炎って言うのよ」
「《光》の炎……………?」
見たことも聞いたことのない死ぬ気の炎にダークネスはオウム返しした。
「この炎はね、僕たちも全部はわからないけど…………、炎の《強化》と《融合》ができるのさ」
「!!?(俺の《闇》の炎と同じ力を!!?)」
ダークネスは自分が持っている炎と同じ性質を持っていることに驚いた。しかし、次の明夜の言葉でダークネスはさらに驚くことになるのだった。
「そして、もう1つ。これが《光》の炎の最大の特徴と言ってもいいわ。それはどんなに邪悪な物でも浄化したり、不治の病や怪我を癒したり治したり、さらには運が良ければ死からの蘇生をも可能にする力、《奇跡》よ」
「なっ!!!?」
「僕たちはこの《光》の炎の奇跡の力で君を蘇らせたのさ」
聖輝と明夜の話にダークネスは驚いた。そんな炎が存在することに、そして、その炎の力で自分は生き返ったことに。
「手を貸して」
すると、明夜がダークネスの右手を取って、自分のリングをダークネスの右手の中指にはめた。
「何を…………」
「いいから炎を灯して」
明夜に言われて、ダークネスは渋々と炎を灯そうとすると………
ボウッ!!!
「!!!?」
ダークネスの指にはめているリングから《光》の炎が灯ったのだ。
「何で………!!?」
「蘇生すると対象者は体質変化が起きて《光》の波動が流れるようになるのさ。そこまでしないと、ただでさえ可能性が低い蘇生が成功しないのさ」
驚くダークネスに聖輝が説明した。
「でも、この炎はできるだけ使わないことをおすすめするよ。見た感じ、あなたも私たちの知らない炎を元から持っているみたいしね。その上にこの炎が悪用でもされたら大変だわ」
机の上に置かれている漆黒の匣とリングを見て、明夜はダークネスに忠告した。
「…………………なら、なぜ俺に言った?」
「「え?」」
ポツリとダークネスの口から出た言葉に思わず聞き返した。
「なんで、俺に言ったんだ?そこは、薬草の力だとかごまかせただろ。俺が他の連中にしゃべるかもしれないだろ。あんたらも同じ炎を持っているんだ。そしたら、あんたらの身に危険が及ぶじゃねぇか。いや、そもそも、なんで俺を助けたんだ?あのまま、ほっといたら、あんたらは余計な心配しなくてすんだんだ。なんで俺を助けたんだ!?」
ダークネスは何が何だか訳がわからず口からそう叫んだ。
「なんでって、あの時に君が言ったからさ。『まだ、生きたかったな』って」
「!?」
聖輝の言葉にダークネスは確かに自分がそんなことを言ったことを思い出した。
「だけど…………それが俺を助ける理由にはならないだろ。さっきも言ったが俺があんたらのことをしゃべってしまうかもしれないんだぞ」
「う~ん。でも、何だかあなたのことほっとけなかったのよね………」
「は?」
「なんだかあなた寂しそうな雰囲気出しているからね………」
「それに、もし君が言ったところで僕たちは自分がやったことに後悔はしないし、そう言って僕たちを心配してくれるってことは少なくとも君は言わないってことだからね」
明夜は心配そうに聖輝は笑ってそう言った。
「なっ!!?誰があんたらの………!!?」
それを聞いてダークネスは動揺した。
「「ぷっ。あはははは!!!」」
それを見て、聖輝と明夜は吹き出した。
「……………チッ!!」
それに対してダークネスは舌打ちをした。しばらく、2人は笑っていた。ダークネスはなんだかはぐらかされた気分だったがこれ以上聞くのも億劫な気がして、やめたのだった。
2人が笑い終わってから、ダークネスはリングを明夜に返して、聖輝に傷を診られて、大丈夫だと判断された。診察が終わって、ダークネスは洗われたのか血が落ちていて、破れたところが縫われた服を着て、匣とリングを直した。
「…………………もう1つだけ、聞きたいことがあるんだが」
ダークネスは2人にそう言った。
「何かしら?」
「何でも聞いてくれ」
2人はそれに対して、嫌な顔1つせずにそう言った。
「あんたらは自分の炎を理解していた。いったい、どうやって知ったんだ?」
ダークネスは蘇生の理由ほどではなかったが気になった。自分の《闇》の炎は性質はロヴィーノ教団の研究員が名前はロヴィーノが教えてくれた。だから、見たことのない炎をどうやって知ったのかダークネスには気になることだったのだ。
「あぁ。それは僕たちが
「光の一族?」
「えぇ。私たちは東洋の一族でもあるけど、同時に光の一族でもあるのよ」
ダークネスの質問に2人は答えた。
「その光の一族ってのは何だ?」
ダークネスは今度は聞いたことのない一族の名前について聞いてみた。
「光の一族っていうのはね。大昔、ご先祖様が地球でロヴィーノを復活させようとした罪で追放する際に彼らの監視をするために、一緒に地球を出た一族のことよ。その一族が《光》の炎を使うから光の一族って呼ばれるの」
「と言っても、地球にいた頃から《光》の炎の存在は隠していたし、その一族の血縁者が皆、《光》の炎を使えるっていう訳じゃないから。一族のメンバーもそう呼んでいるのも、今じゃ僕と明夜の2人だけだけどね」
それに対して、明夜が説明して、聖輝が苦笑しながら補足説明した。
「そんな一族がいたとはな………………。だが、関係無い子孫をこんな地獄のような場所に巻き込むって、いったいどんな神経しているんだ?」
「ん~。それは僕らも気になっていたんだよね」
「私たちのご先祖様は何より家族を大切にする人たちだったって聞いたけど、矛盾しているのよね………」
ダークネスが呟いた疑問も2人にはわからなかったみたいだった。その真実は彼らの先祖たちは豊かな星に行くつもりだったが、ロヴィーノによって着く前に壊滅状態に追い込まれたからなのだが、当然ダークネスたちは知らない。
「…………まぁ、いいや。それよりも聞いた俺が言うのも何だが……………それ言って良かったのか?」
「あぁ。大丈夫さ!!」
「あなたならその心配なさそうだからね♪」
「……………その謎の信頼は何だよ」
2人の言葉にダークネスは呆れていた。だが、なぜか嫌な気分にならなかった。
「それじゃあ、俺は帰る。世話になった。ありがとうな」
ダークネスはロヴィーノ教団本部に帰ることにした。
「あら、もう少しここにいてもいいのよ?」
「いや、そういうわけにもいかない」
明夜の誘いをダークネスは断った。実を言うとダークネスが死んだ日からもう2日経っていたのだ。だから、急いで帰る必要があったのだ。
「そうか…………、それなら、いつでも遊びに来ていいよ!」
「………………まぁ、気が向いたらな」
「ふふ♪楽しみにしているわ♪」
その後、ダークネスは今の場所を聞いて、少し食料を分けてもらい、光城宅を出た。
ダークネスの姿が見えなくなるまで見送った聖輝と明夜は真剣な顔つきになった。
「……………ねぇ、あなた」
「なんだ?」
「私たちであの子を支えましょう」
「……………………」
「たぶん、あの子、私たちとは真逆の存在だと思うの。私たちを光とするならあの子は闇。だからきっと、実の両親にもひどい扱いをされて、あんな風になっちゃったのよ…………」
「……………………」
「だからこそ、私たちがあの子の光になってあげるべきだと思うの」
「………うん、そうだね。僕も同じことを考えたよ。今のあの子は脆い。誰かが支えなくちゃいけないんだ」
静かに聞いていた聖輝も明夜の言うことに同意した。それを聞いた明夜は顔を輝かせた。
「あなた!!」
「ふふ。僕たちでがんばろうか」
「ええ!!」
1組の《光》の夫婦が《闇》を支えることを決意した。
一方、ここは何もない空間
『……………あいつは光の一族と接触したか。………………まぁ、いいや。私にとって得にはならないが損にもならないからね。とりあえず、何も知らないふりして、様子見でもするか』
白い炎の中で呟く声は誰にも聞かれることはなかった。