家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~   作:R0

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リヴォルッツィオーネ

ダークネスが実の両親を殺してから、一晩が経った。

 

「…………………………」

 

ダークネスはあれから一睡もせずに両親の死体が転がっている寝室に座り込んでいた。

 

グ~~ッ……………

 

「…………………………」

 

すると、ダークネスの腹の虫が鳴り、とりあえず立ち上がって、食料を求めて、寝室から出た。

 

 

 

 

「ムシャッ…………ムシャッ……………」

 

ダークネスは椅子に座って、返り血を落とさずにパンを食べていた。しかし、その時のダークネスはパンの味を感じなかった。味覚を失ったわけではない。だが、それにもかかわらず、パンの味がしなかった。

 

「………………………」

 

パンを食べ終えて、ダークネスは動く気にならず、じっと椅子に座ったままだった。そんな時間がしばらく続いた。

 

「………………………」

 

すると、ダークネスは今気づいたと言わんばかりに、机の中心に置かれた物を見た。そこには、昨日、自分が盗ってきた武器やリング、匣があった。

 

「………………………」

 

ダークネスはなんとなく、リングを手に取り、自分の右手の中指にはめた。

 

ボウッ!!!

 

「!!?」

 

すると、リングから黒い炎が灯りだした。まさか、自分の炎が灯るとは思っていなかったため、それにダークネスは驚いた。

 

「……………もしかして」

 

ダークネスはそう呟くと、一緒に机に置いてあった漆黒の匣を手に取った。

 

「………………………」

 

そして、ダークネスはリングに灯っている炎を匣の穴に注入した。

 

パカンッ!!!

 

すると、匣が開匣した。どうやら、この匣はダークネスの炎で開匣するようだった。中から出てきたのは…………………

 

「グルッ?」

 

漆黒の体に血のように真っ赤な目をした鍬形の角を持った、体長50㎝のドラゴンだった。そのドラゴンはまるで寝起きのような反応した。

 

「ドラゴン……………?」

 

それに対して、ダークネスは少し目を見開いて驚いていた。当時の匣アニマルはベネスタンテ星の技術でも、現代種や古代種は数多くあっても、ドラゴンなどの伝説の動物という幻獣種は数が少なくて、超レア物だったからだ。

 

「グルッ?………ガウッ!!」

 

「わっ!!?」

 

すると、ドラゴンはダークネスを見て、飛びついた。さすがのダークネスもこれには驚き、後ろに倒れた。

 

「痛てて…………。いったい、なんなんだ?」

 

そう言って、ダークネスは自分の体の上にいるドラゴンを見た。

 

「グルル♪グルル♪」

 

ドラゴンはダークネスの体に嬉しそうに寄り添っていた。それは、まるでダークネスになついているようだった。

 

「お前……………」

 

ダークネスはそう言うとなんとなく、ドラゴンの頭をなでた。

 

「グルル♪」

 

それに対して、ドラゴンは気持ちよさそうにしていた。

 

「………………ふっ」

 

それを見て、ダークネスは薄く笑った。

 

「お前、ぼくと一緒に来る?」

 

ダークネスがドラゴンにそう問いかけると………………

 

「ガウッ!!!」

 

ドラゴンは嬉しそうにうなずいた。

 

「………………そうか。それなら、これから、よろしくね……………『()()()()』」

 

「グルッ?」

 

『ドレイク』と急に呼ばれて、ドラゴンは首をかしげた。それに気づいたダークネスがドラゴンに声をかけた。

 

「お前の名前だよ。名前が無かったら不便だからね。………………それとも、嫌だった?」

 

「グルルッ!!!ガウッ♪」

 

ダークネスの言葉にドラゴン、ドレイクは首を横に振り、嬉しそうに尻尾を振った。どうやら、気に入ったようだ。

 

「それじゃあ、改めて、よろしくね。ドレイク」

 

「ガウッ!!!」

 

今、このとき、1人と1匹の友情が結ばれた。………………………………しかし、このときのダークネスの目は少しマシになったが相変わらず光がこもっていなかった。ドレイクは《闇》の炎で動く《漆黒ドラゴン(ドラゴーネ・ネーロ・コルヴィーノ)》のためにダークネスの相棒になることはできても、光にはならなかったみたいだ。

 

 

 

 

「……………………さて、これからどうしようかな」

 

ダークネスはあの後、返り血を洗い流して、家の中にあった食料やお金などの荷物をリュックにまとめて、家を出た。その荷物の中にはダークネスがリングと匣以外に盗ってきた2丁のガンブレードも入っていた。もちろん、リングと匣も持って行くつもりだ。ちなみにドレイクは炎切れのために匣に戻った。

 

「……………………とりあえず、適当に移動するか」

 

ダークネスはフードをかぶりながら、そう呟いて、今まで自分が住んでいた家から離れた。

 

 

 

 

ダークネスは町に着くと、片隅で休憩することにした。そこで、ダークネスはこれからどうするのかを考えていた。貧乏だったために食料もお金もそこまで多くない。すぐに底をついてしまうだろう。おまけにダークネスは寝床を探さなくてはならない。今はまだいいが、これからだんだん寒くなってくる。とても、野宿で耐えきれるような環境ではなくなっているのだ。ダークネスは元の家に帰るつもりはなかった。だから、なおさら、何とかしなければいけなかったのだ。

 

「…………………()()()に入ろうかな」

 

ダークネスはポツリと呟いた。『革命軍』、それは平民、貧民たちが王族、貴族たちの横暴に抗うために設立された軍隊だった。それはダークネスのような子供が所属することは別におかしなことではなかった。子供を育てる余裕がない家庭などは革命軍に売ったりするのだ。革命軍も人数不足を補うために受け入れるのだ。売られた子供はそのまま革命軍で育てられて兵士になり、貴族たちと戦うことになるのだ。しかし、革命軍に入れば少なくとも衣食住は確保することができる。今のダークネスの状況にはピッタリだった。

 

「………………でも、どこに入ろうかな」

 

革命軍は複数ある。ダークネスはそれのどこに入るのか迷っていた。

 

「おい。最近の革命軍の動きはどう思うんだ?」

 

すると、ちょうど男2人が革命軍について話していた。ダークネスはその話に耳を寄せた。

 

「どうって言われてもなぁ。革命軍たちと貴族たちの戦いって、長い間起きているけど、ずっと革命軍が負けているよな………。ほら、この間も革命軍の1つがたいした戦果を上げることも無くて負けて、そこに所属していた連中は全員処刑されただろ?」

 

「まぁ、そうだな…………。はぁ……。俺たちはいつまで、貴族たちに怯えて暮らさなくちゃいけないんだ?」

 

「悔しいが貴族たちの技術はピカイチだからな……………」

 

男2人は落ち込みながら、そう話していた。それを聞いてダークネスも悩んだ。

 

「あ。でも最近、どっかの革命軍が力をつけているって噂が無かったか?」

 

「あぁ。そういえば、そんな噂があるな。確か『リヴォルッツィオーネ』って名前だっけ?でも、それはいい噂だよな?悪い噂だと、そこのボスは臆病者だから、貴族たちに攻め込むことができないっていうのがあるじゃん」

 

「ま。どっちの噂が正しいかなんて俺らにはわからないさ」

 

「それもそうだな」

 

2人はそう言って、移動していった。

 

「……………………『リヴォルッツィオーネ』か」

 

そう呟くとダークネスも移動していった。

 

 

 

 

「………ここが、リヴォルッツィオーネか」

 

あの後、ダークネスは人に聞き込みをして、リヴォルッツィオーネの本部に着いた。思ったよりも近くにあったのが幸いだった。聞かれた人々は怪訝な表情を一瞬したが、何か事情があると察したのか深くは聞いてこなかったのも幸いだった。

 

「あ?なんだ、お前は?」

 

見張りの男がダークネスに気づいて、声をかけた。

 

「ここに入りたいんだ」

 

男の問いにダークネスが簡潔に答えた。

 

()()か……………」

 

「また?」

 

「あぁ。さっきもな、お前と同じくらいのガキがここに入りたいって来やがったんだ」

 

「そうなんだ。それよりも入れてくれるの?」

 

男の自分と同年代の子供が来たという言葉よりも自分が入れるのか気になったダークネスが男に聞いた。

 

「あぁ。うちは別にガキだからっていう理由で断ったりしないから、ここに入ることは問題はないがお前もいつかは戦場に出てもらうから、明日から厳しい訓練を行うことになるぞ。それでもいいのか?」

 

男の問いにダークネスは……………

 

「うん。いいよ」

 

了承した。

 

「そっか。それじゃあ、ついてこい」

 

男がそう言うと、移動し始めて、ダークネスもそれについていった。

 

 

 

 

男に連れてこられたダークネスが着いたのはどこかの待ち合わせ室だった。椅子が2つあり、ダークネスはその内の1つに座らされた。

 

「それじゃあ、ここで待ってろ。今、担当の人を呼んでくるからな」

 

男はそう言うと、部屋から出ていった。

 

 

 

 

しばらく待っていると…………

 

「待たせたわね」

 

1人の女性が入ってきた。女性はダークネスの前の椅子にダークネスと向き合うように座って話しかけてきた。

 

「あなたがうちに入りたいって子?」

 

「はい」

 

「そう。それじゃあ、まずはあなたの名前は?」

 

「……………ダークネス」

 

女性に名前を聞かれて、ダークネスは少し間を開けて答えた。それが気になったのか、女性は尋ねた。

 

「今、なぜ間を開けたのかしら?」

 

「………この名前が好きじゃないから」

 

「好きじゃない?それはなんでかしら?」

 

「…………………嫌いな人たちがつけたから」

 

「そう…………」

 

ダークネスの言葉に女性は少し考えた。

 

「先程ね、とある民家でね、夫婦の遺体が発見されたの」

 

「!!」

 

女性の言葉にダークネスは身に覚えがあった。

 

「そして、そこの1人息子が行方不明なの。………………それって、もしかして…………」

 

「はい…………。ぼくです……………」

 

ダークネスは素直に答えた。

 

「そう…………。事情を話してくれないかしら?」

 

「……………わかりました」

 

女性にそう言われて、ダークネスは昨日の出来事を話した。

 

「そう………………。そういう事情ね。まぁ、それなら、仕方ないわね」

 

ダークネスの説明を聞いて、女性があっけからんにそう言った。ダークネスはそれに驚いて、女性に尋ねた。

 

「ぼくを警察に突き出さないのですか?」

 

「あぁ、大丈夫だよ。確かにどんな理由があっても君のやったことは許されるものじゃないし、本来はそうするべきだろうけど、君には情状酌量の余地があるからね。それに私としては、あなたが貴族たちの回し者かどうかわかればよかったからね」

 

「ぼくをあんな連中と一緒にするな!!」

 

女性の最後の言葉にムッと顔をしかめたダークネスが叫んだ。

 

「ごめん、ごめん。でも、あなたにそんな心配はなさそうだからね。いいわ。うちに入ることを認めるわ」

 

女性の言葉によりダークネスがリヴォルッツィオーネへの所属が決まった。

 

「それじゃあ、あなたの使える死ぬ気の炎の属性を教えてもらえるかしら?」

 

女性にそう言われて、ダークネスは戸惑ったが自分の指に嵌めているリングを見せた。

 

「えっと………名前はわからないのですが、こんな炎だけです」

 

ボウッ!!

 

そして、ダークネスがそう言うと、リングに黒い炎を灯した。

 

「!?」

 

見たことのない炎に、これには女性も驚いたようだった。

 

「この炎は!?(そういえば、大空の七属性でも大地の七属性でもない未発見の炎があったって噂で聞いたことはあるけど、まさか実在するなんてね)」

 

女性は驚きながら、内心、そんなことを考えていた。

 

「えっと、ぼくが産まれた際にすぐにこの炎が噴き出して、両親がすぐに調べたのです」

 

「そ、そう、それで結果は?」

 

「それが《嵐》と《晴》の炎みたいな特性で、そんな大したことは……………」

 

ダークネスはそう言うと、顔をうつむいた。両親にさんざん気味が悪いって言われたことを思い出したみたいだ。

 

「そう。……………まぁ、いいわ。それじゃあ、その炎をこのバッテリー匣に注いで。うちの構成員は必ずそれをする決まりだから」

 

そう言って、女性は蓋が開いた匣をダークネスの目の前に置いた。

 

「…………わかりました」

 

ダークネスはその匣に自分の炎を注ぎ込んだ。

 

「…………うん。それでいいわ。それじゃあ、次は――――」

 

そのあと、ダークネスが持っているリングや武器を確認したり、書類にサインしたり、この組織の説明を聞いたりした。リングとドレイクが入っている匣、ガンブレードはそのまま持っていいということで、ダークネスが持つことになった。まぁ、リングと匣に関してはダークネスにしか使えないからという理由もあるが………。そして、それらが終わると、これから自分が泊まる寄宿舎に連れていかれた。

 

「それじゃあ、ここがあなたが泊まる部屋よ。あなた以外にも1人、あなたと同い年の子がいるから、仲良くするのよ。その子にはあなたのことは話しておいたから」

 

「わかりました」

 

「うん。それじゃあ、これが部屋の鍵ね。無くさないでね」

 

女性はダークネスに鍵を渡した。

 

「ありがとうございます。それでは」

 

ダークネスは鍵を受け取ると女性に礼を言って、部屋に入った。

 

「……………ふぅ。今日はすごい日ね」

 

ダークネスが部屋に入るのを見届けると女性はため息をついた。

 

「今日、うちに入ってきた子…………。1人は得体の知れない炎を持っていて、もう1人は()()()()()()()()()()()()()()んだから」

 

女性はそう言って、今日起きたことを思い返していた。

 

「それにしても…………」

 

すると、女性はダークネスの炎が入っている匣を取り出して見つめた。

 

(あの炎はいったい何なのかしら?本人は大したことないって、言っていたけど。1つの炎に2つの特性があるなんて、普通ありえないわ。研究チームにも話したほうがいいわね………。この炎にはまだ秘密があるかもしれないし………)

 

女性はそう考えて、部屋から離れた。

 

 

 

 

一方、ダークネスが部屋に入るとそこには、二段ベッドや机、椅子など必要最低限の物が置いてあった。そして………

 

「お!お前が今日から俺と一緒にこの部屋で泊まるっていうやつか!!」

 

そこには、オレンジの髪に白のメッシュが入ったダークネスと同い年くらいの少年がいた。

 

「うん。そうだけど………」

 

「そっか!俺は()()()()()!!お前は?」

 

「………ダークネス」

 

「ダークネスか。よろしくな!!」

 

そう言うと少年、ルシフェルは手を出した。それに対して、ダークネスも手を出して、2人は握手をした。

 

「なぁ、ダークネス。お前はなんでここに入ったんだ?」

 

握手が終わり、ダークネスが荷物を下ろすとルシフェルがそう聞いてきた。

 

「……………行くところが無かったから」

 

「………そうか」

 

ダークネスの言い方にこれ以上は聞いてはいけないと思ったのか何も言わなかった。

 

「………俺も他に行く宛が無かったんだ。……………あの貴族たちのせいでな!!」

 

すると、ルシフェルは聞かれていないにもかかわらず、話し出した。

 

「俺の父さんはな、他の革命軍の幹部だったんだ。でも、その革命軍はこの前の戦争で負けたんだ………」

 

ルシフェルの言葉にダークネスは先程の男2人の会話を思い出した。

 

『この間も革命軍の1つがたいした戦果を上げることも無くて負けて、そこに所属していた連中は全員処刑されただろ?』

 

その時の男の言葉が正しいとすると、ルシフェルの父親は………………。

 

「俺の父さんはそこで処刑された…………。母さんは俺が産まれてすぐに病気で死んだ………。1人になった俺は今、こうしてリヴォルッツィオーネに入ったんだ!!」

 

ルシフェルは顔をしかめて、言い続けた。

 

「俺は貴族たちを許せない!!母さんの病気も父さんの話だと貴族たちが平民たちに流通しないように薬を買い占めていたんだ!!あいつらがそんなことしなかったら母さんも生きていたんだ!!!」

 

「…………ぼくも許せない。あいつらが好き勝手する理由なんてどこにも無いのに…………」

 

ルシフェルの言葉にダークネスも相変わらず光のこもっていない目で同意した。

 

「そうか。ダークネス!!絶対にあいつらに勝とうな!!」

 

「うん!!」

 

このとき、ダークネスとルシフェルは貴族たちに勝つことを誓った。自分たちの幸せのために……………。


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