家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~ 作:R0
ツナが死んで2日経った。ツナの遺体は並盛中央病院ではなくひとまずリング争奪戦に使われた廃病院の病室の1つに置かれている。
母親である奈々にはまだ伝えていなかった。『自分の息子が死んだ』、本来なら真っ先に話さなければならなかったことだろう。しかし、ツナが死んだ理由を話すにはずっと隠していたボンゴレについて話さなければならなかった。
ツナの死について、ずっと隠すつもりは無い。ただ、今は時期が悪かった。《ロヴィーノ教団》の《ロヴィーノ》復活の地球滅亡計画の件があったからだ。まずはこれを何とかしなければツナも報われない、落ち着いて葬儀に出せなかった。
現在、ツナの死を知っているのは、その場にいたものを除けば、マフィア関係者だと、ボンゴレファミリー、骸を除く黒曜、XANXUSとスクアーロを除くヴァリアー、白蘭とユニとγを除くミルフィオーレファミリー、炎真を除くシモンファミリー、バミューダを除く
家光はツナが死んだという報告を聞いて、報告した部下に詰め寄って一騒動があった。その時の家光は憤怒と悲哀が混ざった顔だったらしい。
一般人だと京子とハルの2人が知っている。2人共、ツナの訃報を聞いて、その場で絶望した顔で泣き崩れた。今2人はツナの遺体の側にいる。ツナと話がしたいらしい。リボーンたちは2人をそっとしておいた。
一番の問題は戦闘員のメンバーだった。その中でも、獄寺、山本、了平、クローム、炎真、バジルとあの場にいてツナと特に仲のよかったメンバーが意気消沈していた。話しかけても、ずっと黙ったままだったり、引きこもってしまったりと………。
他のメンバーも何かに苛立ったりと落ち着きが無かったりと、まともな状態ではなかった。ユニは自分はミルフィオーレのボスだからと気丈に振る舞っているが、誰が見ても無理しているのがバレバレだった。ダークネスの言う通り、ツナの存在は大きかったみたいだ。
しかし、そうは言ってられない。ダークネスの言葉では今日には《ロヴィーノ》復活の鍵となる剣に
並盛中央病院 多目的ホール
そこには、前回の会議と比べて参加者が多かった。それはそうだ。今回は前回の会議に参加しなかったメンバーも全員参加しているのだ。雲雀でさえ、離れたところで1人ポツンといた。
「それでは、《ロヴィーノ教団》の対策についての話し合いをしようか」
チェッカーフェイスがそう言ったが参加者の人数に反比例して、皆の反応が薄かった。まるで、お通夜みたいな空気だった。
「君たち、確かに沢田綱吉君に関しては残念だが、今は《ロヴィーノ教団》を何とかしなければならない」
チェッカーフェイスの言うことは最もだったが、頭ではわかっていても、体が言うことが聞かなかった。
「シシッ、お前ら馬鹿じゃないの?」
とベルが言った。
「何だと………?」
それを獄寺が怒りを込めた声で聞き返した。
「俺たちはマフィアだぜ?人1人死んだくらいでいちいち、そんなの気にしてたらキリがないっつーの!」
「ウムっ。ベルの言う通りだ」
レヴィが便乗した。
「聞けば、相手はダークネスという《人類至上サイキョウの人間》の男らしいではないか。敗北する可能性はあった。
とレヴィが言うと
「………そんなこと?」
山本がポツリと言った。
「……ツナが死んだのが………そんなことだというのか!!!!」
山本が怒鳴った。
「そうだ!!!貴様らには沢田を失った喪失感というものが極限にわからんのか!!!!」
了平も叫んだ。他のツナとの仲のいいメンバーがベルとレヴィを睨んでいた。
「事実を言ったまでだ」
「シシッ、やるの?」
レヴィとベルも喧嘩腰だった。
「上等だ!!」
「ボスを侮辱した……。許さない………」
獄寺たちも臨戦態勢に入った。
「オイッ、お前ら!?」
「ちょっと、炎真!?皆もやめなさい!!」
「お前ら、気持ちはわかるが、仲間で争ってる場合じゃねぇだろ!?」
「ベルとレヴィもやめなさいよ~~!?」
γ、アーデル、ディーノ、ルッスーリアが落ち着かせて止めようとしたがお互いに止まらなかった。お互いにぶつかると思われたときだった。
「オメーら、やめろ!!!!!」
『!!!?』
リボーンが珍しく大声を上げて止めた。獄寺たちは驚いて止めた。
「リボーンさん………?」
「オメーら、こんなときに争ってる場合じゃねぇだろ……」
「だ、だけどよ、小僧……」
「今、敵意をぶつける相手はこいつらか?違うだろ、相手は《ロヴィーノ教団》だ。そして、地球滅亡を防ぐことだろうが!!」
『…………』
リボーンに言われて、獄寺たちは黙った。
「それに、それがツナの願いでもあるからな………」
『えっ………?』
リボーンの言葉に皆が驚いた。
「どういうことだ、コラ?」
コロネロが尋ねると
「俺がツナの最期の言葉を聞いているんだぞ」
とリボーンは当時のことを話した出した。
ダークネスが本気でツナの心臓を握り潰そうとして、獄寺たちがそれを止めようと走り出した。リボーンも最初はそうするつもりだった。でも、できなかった。なぜなら…………
「………リ………ボー………ン…………ウッ……」
顔を青くしながら心臓を握られ苦しんでいるツナが呼び止めたからだ。リボーンがどうしたのか聞く前にツナが言った。
「………お……ね…………が…………い……………。………
ツナがそう言った後に
グシャッ
「ガハッ!!!??………………………………………………………」
ツナの心臓をダークネスに握り潰されて、そこで息を引き取った。リボーンはボルサリーノを目深にかぶって、
「……………馬鹿ツナが……………」
と呟いた。
……………………………
多目的ホールは静かだった。その中で最初に声を出したのは、獄寺だった。
「…………10代目が………」
他のメンバーも信じられないという顔をしていた。
「わかるか?ツナは最期の最期で自分の死を覚悟して、俺たちに地球の運命を託したんだぞ!」
『……………』
リボーンの言葉に黙っていた。ツナがリボーンに残した最期の言葉、最期の想いが獄寺たちの中に響いていた。
「今、俺たちがやるべきことはここで味方同士で争うことか?違うだろーが!!!俺たちがやるべきことはこの場にいる味方全員で《神々至上サイキョウの邪神》である《ロヴィーノ》の復活を阻止することだろーが!!!地球の滅亡を企てている《ロヴィーノ教団》を止めることだろーが!!!」
リボーンが大声で叫びながら、そう言った。その顔には怒りが混じっていた。リボーンもツナが殺されたことを許せないのだ。だが、ここで怒りをぶつけたり、後悔しても仕方がない。それらは、全て《ロヴィーノ教団》にぶつけるつもりだ。
「…………そうだな。ここで争っても仕方ねえな」
「…………そうなのな。ツナはこんなこと望んでいないのな」
「…………ウムッ。極限に沢田の想いは無駄にせんぞーーーー!!!!」
「…………ボスのお願い。無駄にしない」
「…………僕たちのやることは地球の滅亡を防ぐこと」
「…………それが沢田殿の望み」
獄寺たちは次々に覚悟を決めた顔をした。他のメンバーも多少の違いはあれど、ツナが残した想いが彼らに落ち着きを取り戻させたようだ。
「………フンッ」
リボーンは口元を薄く笑わせた。けど、すぐに引っ込めて言った。
「何としてでも、地球の滅亡を阻止するぞ!!!!」
『オオーッ/はいっ/うんっ!!!』
この世界から《大空》が消えた。しかし、《大空》の想いは彼らの中に残り続けていた。