家庭教師ヒットマンREBORN! ~光と闇の奇跡~   作:R0

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怠惰の炎と嫉妬の炎

《ロヴィーノ教団》8人が会話するよりも前のこと。とある一室では。

 

「起きろ!ダメツナ!!」

 

「ぐふっ……!!!」

 

リボーンがツナを起こしていた。何かデジャブを感じるが今はそれは置いておこう。

 

「イテテ………」

 

「ようやく、起きたか。沢田」

 

「全くだぜ!」

 

「リボーン、もう少し起こし方というものがありませんか?」

 

「フン。ダメツナにはこれぐらいがちょうどいいぞ」

 

「ふ~。やれやれ……」

 

「大丈夫ですか?沢田さん」

 

「おはよう♪綱吉君」

 

ツナが起き上がるとラル、スカル、風、リボーン、ヴェルデ、ユニ、白蘭が言ってきた。

 

「あれ?ここは?」

 

「《ロヴィーノ教団》のアジトの地下牢だよ、沢田綱吉君」

 

声をしたほうを見たら、(トゥリニセッテ)の器に《夜》の炎を灯していたバミューダがいた。

 

「バミューダ!それに皆も!皆もあいつらに?」

 

「ええ。あなたとリボーン以外にもここにいる皆さんと(トゥリニセッテ)の全てが彼らの本拠地であるここに連れられて来ました」

 

(トゥリニセッテ)の全てって………、VG(ボンゴレギア)以外にもマーレリングにおしゃぶりの代わりも!?」

 

「まぁね、僕はそれらを灯し続けるために連れて来られたからね」

 

「マーレリングもVG(ボンゴレギア)もこことは別の部屋にあるよ」

 

バミューダと白蘭がそう言った。

 

「ここから出る方法は?」

 

「残念ながら………」

 

「この地下牢の壁や天井、床には武器どころか死ぬ気の炎に対する耐性があり、ひび1つ入らないのさ」

 

「それから、ここには強力な結界を張っているらしく、僕の《夜》の炎での脱出はできないよ」

 

とユニ、ヴェルデ、バミューダが言った。

 

「あれ?あれってマーモン!?」

 

「…………」

 

ツナが見たほうにはマーモンが包帯だらけで眠っていた。

 

「何があったの!?」

 

「俺たちもよくわからん。ただ、この中でバイパーが一番の重傷だった」

 

ツナの疑問にラルが答えた。

 

「ツナ、そっちでは何があったんだ?」

 

リボーンがツナにそう聞いた。

 

「えっ?」

 

「オメーのところにも《ロヴィーノ教団》という連中が来たんだろ?その時のことを話せ」

 

「う、うん。わかった……」

 

そして、ツナはリボーンたちに自分たちとルシフェルの戦いについて教えた。案の定、皆は驚いた。

 

「綱吉君たちを相手にほとんど無傷とはね~」

 

「しかし、それでもその男はナンバー2……」

 

「オイッ!リボーン!何、眠らされているんだ!!」

 

ギロッ

 

スカルの言葉にリボーンが睨んだ。

 

「ヒィ~~~~ッ!!」

 

「スカル………。リボーンは眠らされた人たちを人質にとられたのですよ……」

 

風は呆れたようにスカルに言った。

 

「………そうだ。リボーン!!そっちでは何があったんだよ!!母さんたちも巻き込まれたみたいだし………」

 

ツナがリボーンにそう言った。

 

「………そうだな。話しておくか。俺が捕まったのはスロウスの仕業だ」

 

「スロウスって、その正直に言ってあの覇気がなかった?」

 

「ああ、そして、その覇気の無さがあいつの武器だ」

 

「え?どういうこと?」

 

ツナはよくわからずリボーンに聞いた。

 

「あいつは覇気が無さすぎて、下手すれば一般人よりも低いものだった。言い換えれば、空気みたいな存在だ」

 

「空気みたいな存在……」

 

「ああ。俺たちは空気に一々、警戒なんてしない。人から出てくる殺気を感じ取って警戒するもんだ。どんな人間にも多少の殺気はあるからな。だが、あいつはそれが全く無かった」

 

「殺気が全く無かった……」

 

「そのうえ、あいつの《怠惰の炎》も原因の1つだぞ」

 

「《怠惰の炎》?」

 

ツナは聞いたことのない炎に疑問を感じた。

 

「俺も詳しくは知らねえし、聞いたこともねぇ。ただ、あいつの言うには、あいつの《雨》の炎と《大空》の炎が()()()()()で組み合わさってできたらしい。そして、《雨》の鎮静と《大空》の調和で体を怠くさせて気絶させたり、周りの意識を鈍らせてよりあいつの気配を消したんだ」

 

「あ、だから………」

 

ツナは並中での出来事を思い出していた。そして、リボーンは言った。

 

「あいつは誰よりも暗殺者に向いているぞ」

 

 

 

その後、マーモンが目を覚めて、それぞれの身に起こったことを話した。

 

バミューダは《人類至上サイキョウの人間》について。

 

マーモンはジャバウォックと《憤怒の炎》について。

 

ラルはベルゼブブと《暴食の炎》とコロネロのアルコバレーノの件について。

 

ユニと白蘭は豪と《強欲の炎》について。

 

それぞれが驚きの連続だった。元アルコバレーノの皆は特にコロネロとラルのおしゃぶりで1つだという事実に驚いた。ついでに白蘭も「え?じゃあ、仮に僕が(トゥリニセッテ)をコンプリートしてもラル君のおしゃぶりが無かったら僕は超時空の覇者になれなかったの?」と驚いていたが皆、そこは無視した。ちなみにその時のラルは不機嫌だった。

 

「あとは、私とスカルとヴェルデですね」

 

と風は言った。

 

「俺のところは、《エンヴィー》っていうやつが来たぞ!」

 

とスカルが言った。

 

「おや?君のところにもかね?私のところにもだよ」

 

とヴェルデが言った。

 

「実を言うと私のところにもです」

 

と風が言った。

 

「えっ?3人のところに同じ人が来たの?」

 

「《ロヴィーノ教団》には《夜》の炎が使えるやつがいるからな。そこはどうでもいいぞ。それより、エンヴィーってのはあの白衣の男のことだな?」

 

「白衣の男?」

 

ツナは疑問に思って聞いた。

 

「沢田さんは寝ていましたから知りませんね。実は先程、手当てされたマーモンをこの部屋に連れて来たのです」

 

「僕を?」

 

「彼はどうやら、医者みたいだからね。重傷だった君を手当てする必要があったのだろ」

 

「《ロヴィーノ教団》はどうやら、私たちが不要な怪我を負うことを恐れていたみたいです」

 

とユニとヴェルデと風が説明した。

 

「そういえば、その時、風君とスカル君とヴェルデ君は警戒していたね」

 

と白蘭は言った。

 

「風、お前が襲われたその時の様子を教えて暮れないか?」

 

とリボーンは風に言った。

 

「オイッ!リボーン!なぜ、俺様には聞かないんだ!?」

 

「私にも聞かないっていうのは納得できないね。私ならより論理的に説明できるよ」

 

とスカルとヴェルデがリボーンに文句を言った。

 

「オメーらよりも風のほうがより多く情報を持っていそうだからだ。エンヴィーってやつもおそらく戦闘力が高いはずだ。それなら、オメーら3人の中では風が一番戦闘力があるんだから、風に聞いたほうがいいに決まってんだろ」

 

とリボーンは言った。他の皆もそれで納得してスカルとヴェルデは渋々と引き下がった。

 

「わかりました。では、話します」

 

そう言って風は話し始めた。

 

 

 

 

 

その日、風はいつも通りに修業をしていた。その時だった、急に強い殺気を感じたのは。風が振り向くとそこにいたのは白衣を着た男だった。

 

「あなたは?」

 

風は男に聞いた。すると、男は名乗った。

 

「私は『ロヴィーノ教団』、『大罪の7人(ペッカート・セッテ)』の『晴の大罪』、《エンヴィー》と言います」

 

「教団ですか……。そのような者が私に何か用ですか?」

 

風がエンヴィーに聞いた。

 

「あなたの身柄の確保です」

 

それをあっさりとエンヴィーは教えた。

 

「私の身柄の確保ですか……。なぜそのようなことをするかわかりませんが何か良からぬことを考えていますね」

 

と風は戦闘体勢に入った。

 

「まぁ、そうですね」

 

とエンヴィーも構えた。

 

そして、2人はぶつかった。まずは風がエンヴィーに正拳を入れた。それをエンヴィーは腕をクロスにして防いだ。次にエンヴィーがその状態から回し蹴りをした。それを風はかわした。風は純粋に驚いた。

 

「あなた、意外にも格闘術の心得があるのですね。私はてっきり、その姿から学者か何かでそのようなことは不得意だと思っていました」

 

そう、エンヴィーの回し蹴りは素人ではできないキレがあった。そこに風は格闘術の心得があると思ったのだ。

 

「………まぁ、確かに、私は医者です。しかし、それとこれとは関係ありません。自分なりに強くなろうと日々精進しているのです。それに人を見た目で判断するのは愚の骨頂ではないのですか?」

 

「確かにそうですね。これは失礼しました」

 

その後、2人は殴る、蹴る、防ぐ、かわすの連続だった。しかし、均衡はすぐに崩れ始めた。どうやら、格闘術は風のほうが上のようでだんだん押し始めていた。2人が1度距離を取ったときにエンヴィーが言った。

 

「…………羨ましいですね」

 

「はい?」

 

急にエンヴィーが言ったことに風は戸惑った。しかし、そんなの関係ないとエンヴィーは続けた。

 

「あなたの格闘術は本当に凄いですよ。平凡な私ではとても追いつけそうにありません。あなたも相当の努力をしているならなおさらですね………」

 

「いえ、そんなことありませんよ。あなたも努力を怠らなければ、いつか、私を越えることができますよ」

 

と何故か敵を励ましている風。だが、エンヴィーは風の言葉は聞いておらず、

 

「私はあなたに勝たなければならない。あなたに勝つためにはあなたより強くなければならない。でも、今の私は弱い。この世の強弱は年齢も性別も身分も種族も関係ない。強いやつが強い。弱いやつが弱い。この考えに間違いはない。今だとあなたが強く、私が弱い。しかし、力を上手く使いこなせたほうが強い。この考えも間違いはない。だから、私は強くなる」

 

そう言って、エンヴィーは懐から注射器を出してリングから黄色とオレンジが混ざった色の炎を灯した。すると、注射器の中にも同じ炎が満たされていった。そして、エンヴィーはその注射器を自分の腕にさして、炎を注入した。注射器の中の炎が全て注入し終わると、

 

シュンッ

 

「!?グッ!!?」

 

ドカーン

 

エンヴィーは一瞬で風の目の前に移動して蹴りあげた。風の体は岩へとぶつかった。

 

「グッ……!身体能力が上がった?先程射った注射の影響ですか?」

 

「その通りです。私の《晴》の炎と《大空》の炎が組み合わさってできた炎。それが私の《嫉妬の炎》です。《晴》の炎の活性により私の身体能力をあげたのです」

 

「……つまりはドーピングですか………?」

 

「確かにそうですが、《大空》の調和で体への負担はありません」

 

とエンヴィーは言った。

 

「そういうことではありません!なぜ、努力をして上を目指そうとは思わないのですか!?」

 

と風は言った。

 

「私は私の《嫉妬の炎》を上手く使っているだけです」

 

「だからといって………」

 

「申し訳ないのですが、あなたの小言に付き合っている暇はありません」

 

と風の言葉を遮って、

 

シュンッ

 

風の近くに移動して

 

ブスッ

 

先程とは別の青とオレンジが混ざった色の炎が入っている注射器を風にさした。

 

「うっ………!?」

 

ガクッ

 

風はさされてすぐに気を失ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「これが、私の身に起きたことです」

 

と風はツナたちに説明をした。

 

「《嫉妬の炎》……。ドーピングみたいなことができるうえに体への負担はないか……。厄介な炎だな……」

 

「全く………。どうして、自分で努力をしようと思わないのでしょうか?」

 

(風………。今もそうだけどなんで敵相手に励ましていたり、説教しているの?)

 

ツナは心の中で突っ込んだ。

 

「ところでスカルやヴェルデのほうはどうなんだ?」

 

「風先輩のとほとんど同じです」

 

「フン。私のところもだ………」

 

ラルの質問にスカルとヴェルデは答えた。

 

「あ、でも、俺様のところは俺様の不死身の肉体(アンデッド・ボディ)を羨ましいって言っていました」

 

「私のところは私の頭脳が羨ましいと言っていたな」

 

「ものすごく、嫉妬まみれだーー!!」

 

「《嫉妬の炎》の持ち主にぴったりだな」

 

スカルとヴェルデの言ったことにツナが突っ込み、リボーンは呆れて言った。

 

すると、

 

ギーッ

 

『!?』

 

誰かが地下牢に入ってきた。それは……

 

「よー。お前ら、調子はどうだ?あ、沢田綱吉に関しては2日ぶりだな」

 

「お前はルシフェル!?」

 

ルシフェルだった。

 

「こいつが…………」

 

「沢田さんたちを相手にたった1人で戦った人………」

 

「しかも、ほとんど無傷でね……」

 

他の皆は《ロヴィーノ教団》ナンバー2の実力を持つ男に警戒していた。

 

「いったい、何の用だ!」

 

ツナはルシフェルに言った。

 

「まぁ、落ち着けよ。俺は挨拶に来ただけだからよ」

 

「挨拶だと?」

 

とリボーンが言った。

 

「そう、挨拶。沢田綱吉以外にも会ってないやついるしな。まぁ、強いて言うならあとは……」

 

「まだ何かあるわけ?」

 

とバミューダが言った。

 

「たいしたことじゃねえよ。ただ、今日はもうゆっくり休んだらどうだ?って言おうと思っただけだ」

 

「どういうことですか?」

 

「それは……」

 

とユニの疑問をルシフェルが答えようとすると

 

ギーッ

 

また誰か入ってきた。それは………

 

「なっ!?」

 

バミューダは驚いた。なぜなら、

 

「ん?何だ?お前も来たのか?《ダークネス》」

 

ルシフェルが《ダークネス》と呼んだ相手はチェッカーフェイスやバミューダたち復讐者(ヴィンディチェ)を圧倒した黒づくめの男だった。


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