次回からほのぼの日常ガヴドロ編!!
────ネブラとの合併は既に決定したことなんだよ
────向こうの要望はあの首だ、首をどこへやった!?
「私には分かりかねます。失礼します!!」
矢霧製薬を飛び出し、三十分後。とあるビル。
プルルルルル
『主任!たった今黒バイクが首を取り戻しに研究所に────』
そこまで聞こえれば十分だ。電話を切る。
「危なかったわ」
(デュラハンの手に首が渡れば、誠二はその身体ごと運命の相手だと言い出しかねない······)
誠二の目を私に向けさせるには、首の主導権は私が握っていなければならない────
そして考えた、首の安全な隠し場所────
「直接会うのは初めてだよね、人体実験用の不法入国者リストは役に立ったかな?矢霧波江さん?」
その部屋の住人、折原臨也は将棋盤でオセロをしながらそう答えた。
(何やってるのかしらコイツ······)
「しかしアンタも馬鹿なことしたねぇ······弟の歪んだ恋心のために全てをフイにして······いや、弟への歪んだ恋心かな?」
そう言いつつ臨也はオセロの駒の間に歩兵を挟み「はい、ナリっと」裏返す。
どんなルールだ。
「でもやばいんじゃないの?ネブラなんてアメリカの大企業敵に回して。マフィアとか来ちゃうんじゃないの?もしくは凄腕のスナイパーがアンタの眉間を
パーンッ!!
ってね。」
矢霧波江は冷たい目で折原臨也を見る。
「············例のものは?」
この空気に耐えられなかった臨也は本題に入る。
波江は何も言わず、持ってきたケースを開けて臨也の眼前につき出す。
「······きっと君の伯父さんも俺と同じだったと思うんだ。あの世を誰よりも信じてなくて、誰よりも死を恐れ、誰よりも天国を渇望する。······だけどね、確信したよ」
そう言ってケースの中身を取り出し宙に掲げる。
ケースの中身は────デュラハンの首。
「あの世はある。そういうことにしておこう」
そのまま臨也は語る。
「波江さん、デュラハンは基本的に女性しかいないと言われているんだ。何でだかわかる?」
「いいえ」
波江は即答する。今まで弟のことばかり考えて生きていて、勉学の方も理数系得意の彼女はそんなファンタジックな話題にはあまり興味無いのである。
無論、研究に必要だったので最低限の知識はあるのだが。
「北欧神話にこんな話がある。ヴァルキリーという鎧を纏った女の天使が、勇敢に戦った戦士達の魂をヴァルハラと呼ばれるオーディンの宮殿······天国のような場所へと導くんだ。一説によるとヴァルキリーが地上を彷徨う姿がデュラハンと言われている。この首が生きているのに目を覚まさないのは今この日本が戦場じゃないからさ」
臨也は口調を強くし、続ける。
「そう、この首は待っているんだよ!目覚めの時を!戦の時を!!」
狂ったような笑顔で臨也は叫ぶ。
「だけどこの首を中東に持っていっても俺は活躍できそうもない。だったら俺はどうすればいい?」
「戦を起こすしかないんだよなぁ、俺にしか出来ない、俺にしか活躍できない戦を!!この東京なら────池袋なら────ここで政治も軍もかかわらない戦争を起こしたとすれば────」
「俺は生き残る自信はある!!!」
こうして、臨也の戦いが幕を開けた。
ダラーズの初集会翌日。来良学園にて────
「······んー······もう昼休みか······ガヴとヴィーネはどうする?」
「あ、実はヴィーネさんと一緒に購買へ行こうという話になりまして」
「珍しいね、ヴィーネが昼ごはん作ってないなんて。」
弁当常に持ってきてたのに。
と言っても本格的に授業が始まってまだ3日なのだが。
「······昨日の集会のせいで寝るの遅くなって······起きたのがギリギリだったのよ······」
「······だから行かなくても良かったのに······」
ホントに律儀だなぁ······悪魔っぽくない。
「んじゃ、昼飯買って屋上行こうぜ」
「おっけー、買いに行きましょう。」
購買へ行く途中、ふと外の中庭を見てみる。
矢霧誠二と張間美香が腕を組んで座っていた。
「俺はお前を愛していない、だがお前がいる限り俺は“ 彼女”への愛を忘れることはない。
だから俺は、お前の愛を受け入れる」
いつか────俺が彼女を取り戻すまでは────
「私は貴方を愛してる、私は貴方のためなら他の全てを犠牲にしてもかまわない。
だから私は、自分があの『首』になる」
首を見つけ出し、彼の目の前で粉々に砕きすり潰し、私の口内へと注ぎ込み私の血肉と一体化させよう。
全ては彼のために彼のために彼のために────
そして二人は見つめ合い、微笑んだ。
「······凄いわね。あの二人。」
「············あれで良かったのでしょうか?」
「ガヴ······お前からしたら納得いかないかもしれないけど······本人達は喜んで、満足して笑っているんだ。口を出すのは野暮ってもんだ。」
「······そう······です······ね。」
天使として、彼女はこの結末に納得いっていないのだろう。
天使として、人間を導くのが彼女の仕事。
だけど────その導きは当人にとって正しいとは限らないのだ。
「このご時世······天使でも人間一人一人のニーズに答えて導いていかないとダメなのかもしれねえな。」
「······なんというか、めんど······大変な世の中になったものですね······」
────あれ、今こいつめんどくさいって言おうとしなかった?
今思えば────ここでガヴのことをもっと気にかけておけば、ゴールデンウィークにあんなことになっていなかったんじゃないか、と俺は後悔することになるのだが────それはまた次回の話。
────田中太郎さんが入室されました────
田中太郎:こんばんわ
あるく:バ━ヾ(*´∀`*)ノ━ンチャ☆
田中太郎:あるくさんの顔文字がどんどん進化していく······!!
セットン:ばんわー。
田中太郎:甘楽さんは······まだみたいですね。
セットン:あ、すいません
なんか急用が入ってしまったみたいです
田中太郎:あれ、そうでしたか
セットン:すいません、お先に失礼します
あるく:((ヾ(・д・。)マタネー♪
田中太郎:どうやったらそんなに顔文字を早く打てるんですか!?
「悪いね、お楽しみのところ」
同居人の岸谷新羅が話しかけてくる。
「今日の仕事は結構ヤバめらしいから気をつけて」
ヤバめなのか、と思いつつ。セルティはたった一言
『まかせて』
と打ち込み外に出た────
パトカー5台。テレビ局の車が2台。
私を追って来ている。
「ご覧下さい!!皆様!今!生ける都市伝説をカメラにおさめています!」
(······映すなら映せ晒すのならば晒せ)
そう思い、私はヘルメット脱ぐ。
この化け物の姿を脳裏に焼き付けろ
これが私の人生だ
私が長い間歩んできた道だ
恥じることなど何も無い
嗚呼······あの夜以来────
己の全てを晒して以来、私を取り巻く何もかもが恋しいと思える
いつも通りの日常、好奇に満ちた人々の目、理解してくれる友人、心を掻き乱す悪人、なくしてしまった自分の首
────大切な······人。
そして何よりその全てを抱擁み込むこの池袋を────
愛してる────
「で、今日はこんな事があったんだよ、銀夜。」
「ふふっ······お兄様が楽しそうで銀夜は嬉しいです」
「······さて、そろそろ飯にしようか。何がいい?」
「そうですね────久しぶりに」
────歩兄様のハンバーグが食べたいです。
「······えーとヴァルハラオンライン······これですね、遊馬崎さんが勧めてくれたオンラインゲームは······」
次回:ゴールデンウィークの後悔
·····の前に登場人物紹介かな?簡単なやつだけど。